{第百二話} おじさんならやりかねない

壁の地図を見ているうちに、制御室からオイラー達はいなくなっていた。

ミイ達はそれを見計らってダクトから制御室の中に入っていき、昌達の聞き先をふさぐ制御室への扉を開いた。

昌達はミイに開けてもらった扉を潜って制御室の中へ入った。


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一方、オイラーはケティングとガウスをつれて何処かへ向かって歩いていた。

そんなオイラーに警備室は現状を通信魔法で伝えた。

「侵入者、制御室に入りました」

「分かった」

警備室からの連絡を聞くと、通信魔法を切り自分の後ろを付いて歩いているケティングの方を振り返って話しかけた。

「ケティングさん。今、この工場では問題が起こっています」

「問題?なんですかそれは?」

自分が何かしたのかと、色々と考えるがケティングには思い当たる節は無かった。

「産業スパイが入り込んでいるのです」

「えぇっ!」

真剣な表情で話すオイラーをケティングは完全に信じてしまっていた。

「こいつです」

オイラーは警備室のモニターに映ったミイ達の画像をケティングに見せた。

「この小さいメイドが?」

「送り込んだのはあのレクトロです」

「レクトロ!」

ケティングの反応からするに、何か因縁がある様だ。

「そうです、ヤツらはかつて貴方のケティング防具店から「アーマー」の権利を奪った様に、我が社の機密情報を奪おうとしているのです」

「そんな事は許せません」

「そうでしょう。貴方が一番盗まれることの悔しさを知っていますものね」

ケティングは自分の事と今回の件を重ね、頭に血が上ってしまい正常な判断が出来なくなっており、オイラーの話を鵜呑みにしている。


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一方、昌達はどうにか最深部に行く方法を探すことにしたが、どうしたものか。

さっき廊下で見た地図をもう一度見直すが、最深部へと続くと思われる階段は書かれていない。

「マスター、こちらへ」

ネラの後をついて行くと、扉の前についた。

しかにこの扉はあの地図には書いてなかったはずだが、たしかに扉はそこに存際していた。

多分この先に最深部へと続く階段があるのかもしれないが、この扉をどうやって開ければいいんだ。

近くにダクトが通って無いため、ミイに扉の向こう側から開けてもらう作戦は使えない。

扉の横に手のひらサイズのパネルが付いており、軽くタッチすると「0」から「9」までのボタンがパネルに表示された。

数字が書かれたキーの上に「・」が4つ書かれている事から、パスワードは4桁だと言う事が分かったが、どうしたものか。

パネルを見つめて首を傾げる昌をよそに、ネラが数字の書かれたキーを無視して、手のひらを当てた。

しばらくすると、扉はいとも簡単に開いた。

驚きながら扉とネラを交互に見ている昌に対して、ネラはいつもと変わらない表情で説明した。

「この工場は京一様が作った物なので、私達は一通りのセキュリティーを解除できます、パスワードが変更されてはいましたが、基本的なプログラムは一切変わっていなかったので簡単に開けられました」

それを早く言ってくれれば、ミイにわざわざダクトの中に入ってもらう必要は無かったんだけど、と思う昌であったが、ネラにはネラなりの考えがあるのだろうと納得した。

開けた扉はエレベーターの扉だったらしく、最深部と思われるボタンを押した。

最深部へと向かうエレベーターの中で「おじさんを絶対助ける」という意思を固めた。

ここで疑問が新たに1つ生まれた。

何故ここまで地下に潜れるのか、この工場は帝都内にあるわけで、つまりある程度地下に潜ると「地下ダンジョン」にぶち当たるはずなんだが。

そこらへんの説明をネラに求めると、帰って来た答えは「ダンジョンの一部を工場の一部として使っているから」だそうだ。

普通なら驚くところなのだろうが、異世界だしおじさんならやりかねないと結論が出てしまう。

流石おじさんだ。


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ガウスが扉を開けて入っていた部屋にはおじさんが椅子に座っていた。

扉の開閉音でガウスが入ってきた事におじさんは気づいた。

「お、ガウスじゃないか。久しぶりだな」

「お元気そうでなによりです。菊田さん」

「お前は俺とは逆にやつれているな」

「お気遣いありがとうございます。しかし、ご心配には及びません」

軽く笑っておじさんに近づいてきたガウスに切り込んだ。

「正直に言ったらどうだ?アルキメデスに付いていけなくなったと」

「馬鹿馬鹿しい、菊田さんいつからそんなおしゃべりに?」

おじさんの言葉に一種ん驚いた様子だったが、口角を緩めて皮肉めいた返答をした。

「誰とも相手におしゃべりになるわけではないぞ。だがお前となら話してもいいな、この世界の将来についてな」

そういうと、おじさんは椅子から立ち上がりガウスの方を向いた。

「私はアルキメデス先生の崇高な志に従っているのです」

「「志」だと?お前は正義という建前の裏に隠されたヤツの本性に気づいていないのか?それとも、気づいていながら従っているのか?」

おじさんの質問にガウスは沈黙で答えた。


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エレベーターを降りると、開けた場所に出た。

とても広い場所で天井がとても高く、上にアームで大きなコンテナがつる下げられていた。

何か叫べば響いてこだましそうなくらい部屋だが、壁や天井に設置された小さな赤いランプで照らされているだけで薄暗い。

スマホのライトで足元を照らしながら進んでいくと、突然背後から聞こえた音に驚き振り向くと、シャッターが閉まっていた。

これでは乗ってきたエレベーターに再度乗ることはできない。

他に出入り口は無いかと、辺りをライトで照らして見回していると、音を立てて部屋の前方から証明が点灯していく。

これでようやく部屋の全紡がはっきりしたが、やはり乗ってきたエレベーター以外にこの場から出る方法は無いようだ。

目の前には自分達の後ろにあるものと同じシャッターがあるが、しまってるためそこから出ることはできない。

すると、そのシャッターの向こう側から轟音と地響きが聞こえてきたためシャッターの方を見る。

確実に轟音元はこちらへと近づいて来ていた。

轟音が止まったかと思うと、シャッターに大きな凹凸が現れた。

どうやた向こう側からシャッターを殴っているのだろうが、凹凸の大きさ的に巨人に違いない。

しばらく巨人の殴りに耐えていたシャッターだったが限界が来て破られた。

舞い上がった砂煙の間から見えたのは大きなキャタピラとアームが付いたロボットだった。

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