{第百一話} おじさんの悪ノリが糸を引く
ミイ達は無力化させたアーティーの横を通り過ぎ、先に進み扉のスイッチを押した。
ミイに開けてもらった扉を進んで、スイッチの前で待っているミイ達を両手に乗せた。
「ありがとな、ゆっくり休んでくれ」
お礼を言うと、ミイ達は笑みを浮かべて消えて行った。
扉の先を進んでいくと、地下へと続く階段があった。
これは地下の最下層に続く階段に違いない。
こういった場合は最下層におじさんがとらわれている可能性が高い。
オレ達は階段をひたすら下り始めた。
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階段を下っていく様子を見ていた警備室はすぐさまオイラーへ報告。
「侵入者達は第一階段を使って最深部まで降りるようです」
「第一階段で最深部か、と言う事はあの男が使えるな。着いてきたまえ」
オイラーはニヤリと笑うと、ガウスをつれて応接室を後にした。
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通信魔法で警備室と連絡を取りながらオイラーは廊下を歩いている。
「おそらくさっきと同じ手を使うはずだ。ドールを向かわせて、制御室に通じるダクト内にヤツらのメイド達を足止めさせておけ。そうすればヤツらの足止めも出来るだろう」
「了解しました」
オイラーは通信を切ると、足早にガウスをつれて何処かへ向かった。
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昌達はまた同じ様な扉に行く先を阻まれた。
何度も申し訳ないと謝るが、ミイは気にしないでくださいと、笑顔で元気良くダクトの中に入っていた。
ダクトの中を少し進むと、人形達が待ち構えている。
数が多いが、少し手こずったドラキュラの格好をした人形ではなく簡単に倒せる方の人形だ。
時間と手間が掛かるが、特に問題は無く突破出来るだろう。
「またこいつらか」
ミイの視点を自分のスマホ画面に映して黙って見ていたが、つい声に出してしまった。
それにたいしてネラ達は
「ミイ達なら問題ないでしょう」「そうよ、彼女達を見た目で判断しちゃあだめよ?」
ミイ達はネラ達が言った通り、人形達を次々と倒していく。
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人形(ドール)を向かわせた警備室ではダクト内の様子をオイラーに逐一報告していた。
「状況は?」
「ダメです!通常のドールでは抑えられません」
「もう少しもたせろ」
「はっ!」
そんな会話の最中にもダクトに送り込まれたドール達はミイ達によって倒されている。
ミイ達は倒したドール達を踏み越えて先に進んでいく。
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ミイ達がダクトの出口となる金網の前にたどり着き、そこから外の様子を伺うと男が一人で作業しているのが見えた。
その男は同僚から「残業好きなおっさん」と言われているケティングだったが、今の昌達は知る由も無い。
幸いにも男がミイ達居るダクトを背にして作業をしているため、こちらに気づいていないがさすがに男が立っている中、ダクトから出て行くわけにも行かず、ミイ達はしばらく様子を伺うことにせざるおえなかった。
「人が立っているな、ここは生産ラインを管理する部屋の様だが、なんで異世界にこんな設備があるんだ?と言うか、この工場自体おかしいだろう。現世にあるなら何も疑問は持たないが、ここは異世界だ」
丁度良い機会なので、ここに来たときから抱えていた疑問をネラにぶつけてみた。
「元々ここは京一様が作った工場だからです。京一様が自分の軍等で使う武具を作る工場として作りましたが、必要が無くなり競売に出したところ、今の管理者「オイラー」に買い取られ、現在にいたるわけです。この件に関して京一様は後に「(この工場を)完全に跡形も無く潰して更地にしてから売ればよかった」と言って後悔していました」
毎度毎度、質問に一つ一つ丁寧に答えてくれるネラに昌は感謝していることをネラに伝えた。
ミイが生産ラインを流れていく物を見て、それが映されたスマホの画面を見るとネラとネイの表情が変わった。
「なんでこれが」
ネラ達の表情から察するに、このラインでは非常に宜しくない物が生産されているらしい。
この世界には似つかないメカメカしい鉄の塊ラインに流れている。
ここがおじさんの工場で、おじさんが作っているなら納得出来るが、ここはオイラーの工場だ。
「このラインで生産されているあの鉄の塊はなんなんだ?」
「あれは京一様がロボットが登場する異世界にあこがれていた時期にこの工場でごく限られた数生産した人工知能搭載の人型ロボットです。ちなみにミイ達がダクト内で戦っていた人形も、京一様が手のひらサイズのロボットも欲しいからと作った物で、このロボットに色々と手を加えて性能を飛躍的に上げたのがミイ達ミニメイドです」
やっぱりこの件にもおじさんの悪ノリが一枚咬んでるのか。
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「侵入者のメイド達は制御室壁面のダクト出口で待機中。どうやら制御室内の様子を伺っているようです」
通信魔法で警備室と話しながらオイラーは歩いている。
「丁度良い」
扉の前に立つと、通信魔法を切り部屋の中へ入っていた。
オイラー達が入っていたその部屋はミイ達がダクトから見ているケティングが残業している部屋だ。
「オイラーさん。また何か?」
部屋に入ってきたオイラーに気づいたケティングは作業の手を止めて椅子から立ち上がった。
「ケティングさん、お話しがあります。ちょっと来てきただきたいのですが」
「はい、分かりました」
ケティングには何のことか分からないが、上司に言われため特に何も言わず机の上を片付けた。
オイラーはダクトの方を見てミイ達が自分達を見ているのを確認して口を開いた。
「ああ、ガウスくん。菊田京一はこの工場の最深部に?」
「えっ、ええ」
ガウスは一瞬驚いた様子だったが、オイラーと警備室の会話を聞いており、オイラーの考えを察して返事をした。
その話しをミイ達を通して聞いていた昌が聞き逃すはずもなく、しっかりと聞き取った。
丁度良いことに、昌達が居る廊下の壁にこのフロアの地図が書かれていたが、地図を見るにこのフロアには制御室以外にこれと言った部屋はない。
ここまで降りてくるのに使った階段もこの階で終わっていた。
ここが最深部のはずだが、ここは最深部では無いらしい。
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