{第九十二話} 二つのGOS

警察署の取調室のような部屋に机を挟んで男が二人座っている。

そこへ、女性のオペレーターが扉を勢い良く開けて入ってきた。

「出動中のエージェントから連絡です、GOSが奪われユーザー認証が完了した様です」

女性は上司と思われる男に入ってきた情報を報告した。

報告を聞いている男は眉間にしわを寄せる。

「誰だ!」

上司にとっては良くない展開らしく、オペレーターに声を上げた。

「エージェントによると「菊田昌」です」

「そうか...そういうことか」

名前を聞くとしばらく黙り込んだのち、顔をゆっくり上げると怒鳴る。

「貴方は何をしているのか分かっているのですか!」

上司は椅子から勢い良く立ち上がると、机を両手の手のひらで叩いた。

机を叩いた「ドンッ」という音が響くなか、男は不適な笑みを浮かべている。


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メチャクチャな部屋を無言で見回し、掃除機を手にとると床に残った砂等を片付け始めた。

そこへネラが帰って来た。

「マスター、遅くなって申し訳ございません。ただいま戻りました」

部屋の現状をみて驚いている。

「一体何が?!」

「カクカクシカジカで、というわけ」

一通りネラに説明し、一緒に部屋を片付けた。

ネラの話しによると、もらったこのGOSは使えないこともないが、実戦に適さないらしい。

実戦用にするにはアップグレードする必要があるらしいのだが、GOSはそこらへんの武具とは違う。

なにせ「ハンドメイド菊田京一」なのだから。

今日は夜遅いため、寝て明日レクトロの所に行ってみるか。


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朝起きると、朝食を食べて朝一でネラとレクトロに向かった。

「おお!ショウとネロ!朝早くにどうした?」

朝からテンションが高く、相変わらずネラの名前を間違えているレクトロに、GOSを渡した。

「GOSを実戦用にアップグレートしてほしくて今日は来たんだが、お願いてきる?」

「分かった。十分位待ってくれ」

GOSをレクトロに渡し、十分位ならと店内を見ていた。

ネラに頑丈そうな黒い鎧を着せてみたりと、以外に待っている感覚が無かった。


十分後...

店の奥から出てきたレクトロの元へ。

「アップグレード終わったぞ、ほれ」

レクトロが差し出したGOSを受け取ろうとすると、横から出てきた手にGOSを持ってかれた。

「ん?」

後ろを振り向くと、三人組が店から出て行くのが見えた。

GOSが奪われた事と、三人組と言う点から、昨日オレの部屋に乗り込んできた三人組かと思ったが、三人の背格好からまったくの別人だ。

急いで追いかけようとすると、レクトロに止められた。

「手ぶらで行ってなにが出来るんだ?代わりに俺が作ったGOSを持ってけ。性能はキョウイチの物に比べれば性能は劣るが、最低限の性能はある」

レクトロからGOSを受け取り、店を飛び出した。

急いで店を飛び出したが、以外にあの三人組は逃げ足が速く、辺りを見回したが姿は無かった。

「店から出た途端見失ったぞ?」

「大丈夫です、ネメシスの機能の一つである「トラッカー」を使ってみてください」

さっそくネメシスを起動し、ネラに教えてもらった「トラッカー」を使うと、地面に黒い足跡が大量に出現した。

足跡にはそれぞれ秒数が書かれており、足跡が付いてから何秒経ったのかが分かる。

秒数は六十秒までが限界らしく、六十秒経つと足跡がだんだん薄くなったのち消えてしまう。

「では、あの三人組の足跡を探してください。見つけたらその足跡を黄色にして強調し、みやすくすることが出来ます」

ほとんどの足跡が黒色だが、自分の足跡は白く、ネラの足跡は青い。

レクトロの店から出てくる三つの白い足跡を黄色にすると、通りへ伸びる足跡も黄色に染まった。

あとはその足跡を追っていくだけだ。


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足跡を追ってたどり着いたのは、バラクスのメインストリートから外れたスラム街のような場所だった。

足跡を追い、スラム街を進んでいくと、足跡は大きな鉄の扉で途切れていた。

外見からするに、使われなくなった大きな倉庫のようだ。

満を持して鉄の大きな扉を開け中に入ると、倉庫の奥に先ほどの三人組みとボスと思われる男がボロボロの椅子に座っていた。

「お~来たか。コイツを使ってみようと思ったが、使い方が分からないからいらねぇ。どこか質屋にでも売ぱらって来い。アイツをつぶしたあとでな!」

手に持っていたGOSを仲間に投げ渡し、大剣を構えた。

レクトロから借りたGOSで剣を出すが、すぐにおじさんのGOSとの差に気づいた。

武器を出すのに多少時間が掛かる。

おじさんのGOSは出そうと思った頃には手元に出ているが、レクトロのGOSは出そうと思ってからワンテンポ必要になる。

これは戦闘中、特に戦闘が激しくなればなるほど顕著に現れるだろう。

多少の不安が残りつつボス戦に挑んだ。

ボスとその手下三人組合わせて、四対一と言う形になると思ったが、ボスは大剣を構えたままその場から動かず、高みの見物中だ。

わざわざボスが動くまでも無いってことか、完全になめられてるな。

手下の三人組はあまり強くない、見方同士の連携がうまいため弱いとはいえ、一筋縄ではいかないが、時間の問題だろう。

昨日の三人組と言い、この三人組と言い、何故かアーマーをつけている。

切りつけアーマーにダメージを与えるたびに、ガラスにヒビが入るような音がする。

そこへさらにダメージを与えると、ガラスが割れる音がしてアーマーが壊れる。

アーマーを壊すと手下達は下がっていた。

よくよく考えると、オレはアーマーをつけていない。

まぁ、当たらなければどうということはない!

「おいおい、オレの手下を全員片付けたのか?なかなかやるじゃなかいか。これはオレも本気を出さないといけないな」

ボスは大剣を軽々と振り回し、こちらにつっこんで来た。

大剣を大きく振りかぶり、バカ力で思い切り振り下ろす攻撃はとてつもない威力がある。

これがケームだったら、一撃でHPを全部持ってかれる。

何とかシールドを出して防いだが、一撃でシールドが壊れてしまった。

感一発の所で防げたのはいいが、やはりシールドを出すのに時間が掛かった。

これはいつもよりも早めに意識しないといけない。

幸いにも、相手は大剣のため動きが重々しく遅い。

しかし、近づこうにも近づけない。

どうしたものか?

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