大切な魔法のリボン
聖真子天蒼
第1話:プロローグ
「はい、このお守りを持ってさえいれば、あなたは、もはや、辛い事、何てない…もう辛さを与えたくない…これを大事にね」とどこからか、囁くように聞こえた。
けれども、真っ暗闇でどこいにるのかわからない。
私が誰で私は、何のためにこの暗闇にいるのか、知る由もない。
何か前に洞窟が見える。大きな洞窟だ。
「ねぇー。私は、どこにいけば良いの?私の在り方って何?何の為にここに立たされているの?」と声だけが驚く程に響いて聞こえた。
私は、前に進めばいいの?只、前の洞窟に向えばいいの?というか、もう戸惑わずに一歩一歩と歩いてみた。
すると、暫く歩いた先に人影がうつった。
「もうお帰り。お前さんがこちらの世界に来るのは、ちと早い。だからお帰りなさい」と誰だか見えなかったが、耳に響いて聞こえた。
「じゃあ…私は…」とその人影に問うと
「逆に戻って歩けば、お前さんの大切な居場所に戻る。だからわしの声を聞いて、素直にお帰り」とそのおじいさんのような人が言っていた。
その声に、私は従いに従って…只、後方の暗闇を振り返って歩んだ。
すると微かに「…シ…ー…シェ…ー…」と聞こえた。
「誰なの?誰かいるの?」と聞いてみたが、一向に返答がなかった。
だから、只、歩むばかりだった。
更に「シェリー…シェリー」と声が確かに聞こえ、シェリーと呼んでいた。
その次には、暗闇からパッと明るい眩しい所へやってきた。
「シェリー!先生!シェリーが目を覚ましました」
「心拍数は、正常値に戻りました」と誰かわからないけども耳に高い声で聞えた。
「ん…ここは」と私は、確かめようと身体をムクっと起きようとしたが「イタタタ…」と心臓の方に手を当てて、私は思わず言った。
「どこ?あなたは…誰?」と寝惚けた様に記憶をスッカリ掻き消されていたようだった。
「何を言っているんだ?シェリー。お前は、寝惚けているのか?」と口をひん曲らせながら苦笑いをしていた。
その男の人は、どうやら、私と関係があるようだ。
私は、首を傾げて、その男の人が私の手を握っている事に気が付いて、解くように手を放した。
それにブルブルと震っていた。何故だろう。ちっとも安心できる私の居場所じゃない。
この人は誰?それにどこなの?お母さんやお父さんは?と只、怯えていた。
「残念ですが、心臓の臓器移植手術に、この子は、前の記憶から乖離して、記憶喪失の後遺症を齎してしまいました」と医者らしきおじさんが言っていました。
「どうしてだ。シェリーは、もう頑張ったのに…こんなのは、おかしい…なぁ先生!その記憶喪失ってやらを元に戻してやる事は、できないのですか?この子を救う事は…」と必至になって医者に訴えていた。
「残念ですが…私は、これ以上、手の付け所がありません」と医者は、目を瞑って、首を横にゆらしていた。
「どうしてですか?」と絶望した顔でいた。
「この子の生命が蘇っただけでも、大人としては、全うして見守ってあげる事が一番の先決だと思っておりますがね」と真面目な顔に豹変して言った。
「うぅ…どうすればいいんだよ…俺は、ローゼに見せる顔がない」と何故だか、悲しみにくれていた。
「あの…何で涙を見せるの?涙を見せる時って、今なの?その様な事になっているの?私は、どうしてあげらたらいいのかな?」と泣いている男の人に訊ねて分からないままにいた。
「あ…ごめん。シェリーは、何も悲しまなくてもいいし、何も無理に気をつかう事は…ないよ」と涙をみせながら口は微笑していた。
「退院をするか…シェリー」と男の人は言っていた。私の手を引いて「動けるか?俺は、シェリーの状態が今一、分らないんだ」と天井の細長い二本の蛍光灯を見て言い耽っていながらも、意中のままに言った。
「お前が産まれた頃は、本当に嬉しかった…けれども、いざなると、お前をどうしてやったらいいのか分らないよ。お父さんは…」と悔過しているように見えた。
しかし、それよりか、その男の人がお父さんと言っていた事に注意をしていた。
「あなたは…お父さんなの?私のお父さん?」と食い入るように穴底へ陥ったような感じに嘖もうとして、改めて考え込んでいた。
「そうだよ…どうしたんだ。そんな目を真ん丸くさせて…さては、自分を責めているな…いけない癖だぞ。お前は、もう無理して嘖もうとしなくていい。とにかくだ」と私を指して怒っていた。
余計に、私は落ち込みそうになる。これが私の癖なの?私は、もう既に産まれている。言葉も喋る事もできるし、考える事もできる。只、安心ができそうな心持ちになった。そう思ったのか、自然に笑みが浮んだ。
「よーし。良い子だ」とお父さんらしき人は、私を撫でた。本当にお父さんなんだと思うようになっていく。
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