拝啓、普段手紙を書かない僕ですが。

うりごえ

1 普段手紙を書かない僕ですが

拝啓 初雪の匂いに空を見上げることが多くなり、君を思い出す機会はちっとも減る様子を見せませんがいかがお過ごしでしょうか。鈍重な雲を見るたびに、そしてまだ雪にならず降る糸雨に、雨は好きだと微笑んだ君を思い出します。冬は嫌いだとおっしゃいましたがこんな天気の日の君は、ご機嫌いかがでしょか。僕はまだ雨が嫌いです。今だってこめかみにずんと響くような痛みがやってきて、ああ、また雨が降る。そう予感させる痛みを煩わしいものだと、君の好きな雨さえも疎ましく思います。


 僕の話は良いのです。君ときたら薄情にも、一度も僕に手紙をくれませんね。別れるときに約束したじゃないですか。これからも仲の良い友達で居よう、と。僕たちは仲の良い友達なのですから、手紙のやり取りをしたって不思議じゃありませんでしょう? 僕はそんな風に思うのですが。そういえば、そろそろ君が書いていた小説の、一次選考の発表があるころでしょうか。良い結果になることを祈っています。それでは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る