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「そうよねぇ、家に帰ったって何にもしないくせに。ご飯の下ごしらえから掃除洗濯、ぜーんぶやってるのに」
「そうよねぇ。私達が居なくっちゃ、どうせ何もできないくせにね」
「そうよねぇ」
両脇のおば様がうんうん、と頷く。
うーん、確かにそういう男性も多いんだろうけど。それは仕事で疲れているからってこともあるんじゃ。
「私達だって仕事してるわよね」
「そうよそうよ。旦那と同じくらい、店に出て働いているっていうのに」
あー、うん、そうだよね。みんな自分の家の店で働いているもんね。
「それなのに、旦那ったら家に帰ったら何にもしないんだもん。酒飲んで寝てるだけだし」
「邪魔ったらないわ」
「ねー!」と大合唱が続く。
もちろん、おば様方の言い分も分かる。女だから嫁だから、動かないといけないって暗黙のルールがあるんだと思う。特に昔ながらのお家には。
男は金を稼いで、女は家を守る。自営業の場合、そうなると女性の仕事が増えるのは目に見えている。だって自営業は“家の仕事”なのだから。
それでもきっと、旦那さんにしか出来ない仕事があるんじゃない? 例えば重い物を運んだり、卸業者との取引だったりとか。
「確かに旦那しか出来ない仕事もあるわよ」
「虫退治とか、態度の悪い客の相手とか」
いや、他にももっとあるでしょうよ。
「あるのはあるんだけどね。それはさ、お互い様じゃない?」
「お互い様、ですか?」
「そう、だってお互い仕事をして家を守っていて、片方しか出来ない仕事をそれぞれ二人ともがしているのよ。子育てだってどうにかやって来たわけじゃない?」
「そうね、子育てで店の事が出来ない時は旦那がやってくれていたし」
「そうやって支え合うのが夫婦じゃない」
「・・・ですよね」
なんだ、あんなにボロクソに言っていたのに、忘れていないんじゃん。結婚式で誓い合った事、ちゃんと夫婦で守ってるんじゃん。
なんて思ったのも束の間だった。
「でもね、イライラするのよ」
え?
「私達が当たり前にしていることを、向こうがやったらいちいちお礼を言わなきゃいけないのよ?」
「風呂掃除とか洗い物とか、いつも当たり前にやっていることを、ドヤ顔で言ってくるんだから!」
「あれがイライラするのよね!」
「分かるわぁ」
うーん、分かるような気もするけども。独り身としてはせっかく誓い合った者同士、良い時も悪い時も、健やかなる時も病める時も、互いを愛し助け敬い慰めていって欲しいと思わずにはいられないわけで。
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