神様との指きり

カゲトモ

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 良い時も悪い時も、健やかなる時も病める時も、これを愛し助け敬い慰めることをここに誓いますか。

 そんな誓いの言葉がある。言わずと知れた結婚式での誓いの言葉だ。シンプルにストレートに、二人の愛を誓い合う言葉。それをお互いに口にし、言葉にし、誓い合ったと言うのに。どうしてこうも、人は手に入れた瞬間にその誓いを軽んじてしまうのだろう。もちろん軽んじていない人もいるのだけれど、目の前の人たちは違うわけで。

「全くうちの旦那ったらねぇ」

「あ~分かる、分かるわぁ」

「ほんっとうやってられないわよねぇ」

「何様なのって感じ」

「こっちは風邪引いていたって働いているって言うのにね」

「ほんとほんと!」

 ねーほんとほんと。

「ちょっと足捻挫したくらいで動かないのは違うわよねぇ」

「しかも聞いてよ! この間ね、あの人ったらパチンコで勝ったっていうのに、私には何にも還元がないのよ! 飲み屋のオネェちゃんにはバッグをプレゼントしたっていうのに!」

「何それ信じられない」

「あり得ないわぁ」

 ねーほんとほんと。

「プレゼントなんて長い間貰ってないっていうのに」

 ねーほんとほんと。

「スカイさんはどう思う」

「え、俺ですか?」

 急に俺に振るの? 女性は女性同士で盛り上がってくれたっていいんだよ? 今は商店街の組合の定例会なんだし。っていうか、まだ定例会始まらないの?

「男の意見としてどうよ、うちの旦那、どう思う?」

 いや、どう思って言われましても。パチンコで勝ったお金はご主人のお小遣いになるんだし別にどう使ってもよくね?

「んーでも、少しくらい奥さんに還元しても罰は当たらないんじゃないですかねー」

 なーんて。おば様方に囲まれている時点で旦那さん側にはつけないよ。ごめんね。

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