あとがき

 一章ずつの方はお久しぶり。全部まとめての方は初めまして。

 ゆめしなつじです。


 投稿開始時期は予定よりも大幅に遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした!!!


 当初は2018年8月頃から投稿を始める予定だったのが、その時点では確か第22話『少女の告白』までしか書けていなかったと記憶しております。プロットではもっと短く完結に纏まっているのに、何故か風船のように膨れ上がって気付いたら収拾の付かない事になっている。私の悪い癖ですね、反省します。


 さて、それでは第2章『投棄地区ゲットー騒乱編』の解説を。


 今回のテーマは、居場所とは何か。


 色々な作品で取り上げられているテーマですね。私自身も本当は日常物で扱たかったのですが、そちらでは何もアイデアが浮かばずにメソロジアの世界観に嵌め込んでみました。


 きっと、結論は一つではないと思います。

 今回は主人公である御代僚が辿り着いたゴールを描いてみましたが、各キャラクターごとにきっと想いは異なってくるのかなーと考えながら執筆を続けていました。


 特に大切だと思っている事は、第10話『赤い風』で御代僚に言わせた考え方です。

 

「撤回しろよ風紀委員、俺達の繋がりに価値がないとだけは絶対に言わせねぇ! 俺が、俺達が、必死になって守ろうとしているモンを否定させる訳にはいかねぇんだよ!!」


 投棄地区ゲットーはラクニルの底辺です。普通の学園生活に居場所を失った生徒の行き着く先――言ってしまえば、取り返しの付かない失敗をした敗北者が流れ着く場所。風紀委員会に所属できる中原美鈴からすれば、そこでの繋がりに固執する不良生徒ストリーデントは、自分と同じ人間とは違い、ランクが一つも二つも下だと感じてしまった事でしょう。


 ですが、人間同士の繋がりに貴賤はありません。


 スクールカーストをイメージしてください。

 一見すればトップに君臨するリア充の集団の方が社会的な地位が高いように感じるかもしれません。ですがそれは偏見に支配された偽りの認識です。

 どうしてスクールカースト底辺の生徒の集団が蔑まれなければならないのでしょうか? そこに所属する人が心の底から楽しいと思えて、失いたくないと感じていれば、それは立派な居場所になるはずです。何か文句を言われればこう反論してやればいい――自分達の方がリア充集団より何百倍も学校生活を楽しんでいると。


 客観性などクソ食らえ。

 自分の居場所くらい主観で判断して何が悪い。


 居場所の価値は客観的には決まらない。そこに所属する人間が、あるいは自分自身が決める。この考え方は完全に私自身の経験が元になっていて、そんな事を考えながら書いているから、本当の居場所の条件は『たましい』だという結論に至ったのかもしれません。


 曖昧な結論だと感じる方もいらっしゃるとは思いますが、こういうのは理屈ではないと思います。言葉を並べ立てた所で、理屈を捲し立てた所で、きっと本当に伝えたい事は完璧に届きません。この物語を読んだ人がどのように感じたのかこそ最も大切なのだと思います。共感してくれる方がいれば嬉しいです。


 中原美鈴は『客観的な見え方』を代弁してもらい、御代僚には『主観的な考え方』を代弁してもらう役割があったりします。

 物語の最後で御代僚は風紀委員になりました。きっとこれからはスクールカースト上位者として、スクールカースト底辺の生徒と向き合っていく事になるはずです。そんな時に彼がどのような事を考えて、悩んでくれるのか。今から楽しみです。


 裏話になりますが、御代僚は前作である『メソロジア~At the Begining of Mythology~』を書く前から私の脳内に存在していたキャラクターでした。霧沢直也が所属する特班の一人として考えていて、一人くらい銃を使うキャラが欲しいなーという願望を元に生み出されています。ですのでキャラクターが頭の中に浮かんでから、実に4、5年掛かって文章になったという訳です。


 私は基本的に自分の軸を持ったキャラが好きで、彼らは勝手に物語の主人公になっていくのですが、御代僚はその典型的なパターンでした。自分が何をしたいのか、どういう正義を持っているのか、ここまでブレないと物語を進める上で非常に動かしやすかったです。口癖キャラもいいですね、格好良いです。


 また隠れテーマとして、今作では歳森家の刻印術式……中でも職人アーティストに界力術の焦点を当ててみました。第1章ではかみやなぎたかすみが当たり前のように赤い手袋グローブ型の界力武装カイドアーツを、しらづめひょうが雪の結晶を模した髪飾りの界力武装カイドアーツを使っていましたね。

 今後も色々な界力武装カイドアーツが出てきます。その裏には、想いを持った職人アーティストがいると考えてもらえれば、よりメソロジアの世界が広がっていくのではないでしょうか。


 更に今回は主人公である御代僚が最後まで物語の核心に迫れないという流れにしてみました。本来なら『不良生徒ストリーデントを使い捨ての駒にする』という藤郷将潤が抱えていた問題に介入し、何らかの方法で解決して、あの頃の投棄地区ゲットーを取り戻すというのがお約束の流れだとは思います。


 このような展開にした理由は、藤郷将潤と御代僚のパワーバランスを均一にするためです。藤郷将潤もメソロジアという物語において充分に主人公になるべき存在であり、ここで御代僚に助けられてしまえば、対等な存在ではなくなると思った訳です。


 物語の展開を面白くするためにも、敢えて第22話までは御代僚の視点だけで進めてあります。こうする事で「一体何が起きてるんだ?」という彼の気持ちが良く伝わってきたのではないでしょうか?

 第23話以降で一気に視点を増やして物語の核心を説明していく流れは、個人的に面白くて、読み応えのある構成になったと思っています。


 また今回は、二つの時系列を織り交ぜるという構成にしてみました。過去にこういう出来事があったから、今こういう言葉が出てくる、というように順番通りに読み進めることで台詞や行動に説得力を持たせる意味合いがあります。

 本来ならばあまり褒められた手法ではないんでしょうが、これも自由なネット小説ならではの演出かなと思っています。色々と実験していきたいです。


 また、今回は敷本小春の存在に大変助けられました。作品の中で御代僚の隣に立っている彼女ですが、プロットの段階ではここまで仲良くなる予定はなく、まさか告白までするとは作者の自分もビックリです。最初は『意味もなく御代僚に突っ掛かるツンデレ』くらいの感じで書き始めたはずだったのに……次に登場させる時が今から楽しみです。


 藤郷将潤と雷峰芽衣子の絡みも、本当はもう少し多く出すつもりでした。結局、雷峰芽衣子が藤郷将潤を好きになった理由も出せてないですし……何らかの形でエピソードにはしてみたいです。



 さて、では今後の『メソロジア』シリーズの展開について発表してきます。


 第3章はすでに執筆を始めております。第1章、第2章ともに20万字を超える長編になってしまいましたが、第3章は10万字程度の物語になりそうです。また今回から少しだけ物語のテイストを実験的に変えています。詳しい告知は次話をご覧ください。


 投稿開始時期は未定です。そこまで時間が掛からないと思いますので、仕事で大きなトラブルがなければ4月頃には何とかなりそうな感じです。正式な発表はtwitterで行いますので、気になる方はフォローをお願いします。夢科緋辻(@YumesinaHituzi)で検索してください!


 メソロジア~ブラック・ストーム~は『メソロジア』シリーズにおける番外編です。現状では第5章まで執筆する予定です。何とか2019年中に第4章まで投稿したいものです。何があっても書き続けますので、応援宜しくお願いします!



 それでは、今回はこの辺りで。

 第3章の執筆を進めて参ります。


 角宮恭介をもう少し活躍させたかったなー



 2019年1月21日

 夢科 緋辻

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