第5話
長い夏休み、俺は石垣さんに会うこともなく過ごした
新学期の始業式
彼女に久しぶりに会えるといつもより早く登校した
でも、彼女は来なかった
同じクラスの子に聞くと体調が悪いらしいとのこと
次の日も、その次の日も…
俺はたまらなくなって、
石垣さんの家の場所を聞いて行ってみた
数回しか話したことのない彼女に対してこんな風に強引に踏み出すなんて、正直、自分でもびっくりしてた
はぁ、来たのはいいけど、俺がいきなり来たらおかしいよなぁ
急に家まで押し掛けたら…
玄関の前で躊躇していると、中から彼女の姉らしき人が出てきた
うっわ、やべぇ
慌てて隠れようとすると同時に声をかけられた
「ひょっとして、美帆の学校の人ですか?」
「あっ、はい」
「ほんとにぃー!
いやぁ、制服がそうだなと思ったの。
美帆、高校入ってから友達が来たことなんてなかったから、嬉しいわぁ
ねっ、お名前は?」
「い、武田周平です」
「あっ、ごめんなさい。
武田くん…私ったら、何か一気にしゃべっちやって」
「あの…石垣さんの具合は?」
「心配して来てくれたの?
ありがとう。
もう熱も下がったから明日には学校行けると思うわ」
「そうですか、良かった」
「美帆、呼ぶわね」
「いやっ、いいです。
元気なら…」
「そう?」
「はい」
ペコリ
「ちょっと、待って。こちらから、言うのも失礼なんだけど…それ、美帆に渡しとく?」
駅前のコンビニのレジ袋を指差してお姉さんは優しく笑った
「お願いします。渡してください」
きっと、石垣さんもこんな風に笑うんだと思うとその笑顔から目が離せなかった
「何か?」
「あっ、いや」
「フフフ、武田くん?
あなた、思ってることすぐ顔に出る人なのね」
「へ?」
「どうして、美帆が笑わないのか?気になってるんでしょ?」
いきなり思ってたことを言い当てられて焦ったが、
すかさず、返事した
「はい!気になってます。めちゃくちゃ」
「そうねぇ、
武田くんとは今日初めて会った訳だし…
んー、また、今度お会い出来たらその時に…
美帆と友達になってくれる?」
「もちろんです」
「ありがとう。
これもありがとうね」
小さなレジ袋上げてお姉さんはまたニコリとした
「いえ、じゃ、また」
「お姉ちゃん、
誰か来てたの?」
「美帆のお友達がお見舞いに来てくれてたのよ」
「え?友達なんて私」
「武田くんって子。
ほら、これも持ってきてくれたよ
食べたら?」
中を覗くとバニラアイスが1つ入ってた
どこにでもあるこのアイスが私にはたまらなく嬉しくて、すぐに開けることが出来ず、しばらく見つめてた
「美帆、溶けちゃうよ~
いらないなら、もらうよっ」
「ダメ!」
「そんなおっきな声出さなくても~」
「な、何なの?」
「ねぇ、美帆、あの人、
すごく優しく笑う人だね
きっと、あったかい人なんだよ」
「そっかなぁ、お姉ちゃん、初めて会っただけでわかるの?」
「まぁーねぇー、お姉ちゃんこう見えて人を見る目に狂いはないのよ」
「フフフ、ほんとかなぁ」
美帆の笑顔は私達家族には何一つ変わらなかった
外の世界に出ると一瞬にして固まってしまう
あの頃から
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