思い出のストロベリーチョコ
小学校3年生の頃、クラスで女子の人気投票が流行った。
1位 くらた
2位 のぐち
3位 なかむら
こんな感じで、どうしようもない男子が集まって、黒板に向かって多数決を取りながら順位を発表し、盛り上がるのである。
当然、ランクインしない女子の中からは、「やめなさいよ~」という批判の声が上がってはいたが、そんなものにはビクリともせず、毎日のように投票は行われ、不思議と毎日のように順位が変わるのである。
当時、僕も含めて多くの男子は、クラスに複数の好きな女子を抱えており、消しゴムを貸してくれたとか、そういう些細な出来事で簡単に順位を変えてしまっていたのである。
中でも僕は、「くらた」が好きだった。
3年生なので、当然「さん」なんてつけない。
--- 「くらた~」なのである
ある日、秋の遠足で横浜の氷川丸にバスで行ったときのこと。
山下公園に到着して、バスを降りてみんなでお弁当を食べた。
そこで、ベンチに腰掛けて楽しそうにしているくらたの姿に胸がきゅんとなった。
やがて自由行動になり、みんなで氷川丸に乗って、デッキで海を眺めていると、女子の中でリーダー格の金子が僕のところに駆け寄ってきて言った。
「これ、くらっちからだよ」 ※くらっち:くらたのニックネーム
金子は、くらたがおやつに買ってきたというストロベリーチョコレートの粒を僕に手渡した。
見ると、デッキの向こうで友だちに囲まれて楽しそうにしているくらたが笑いながら小さく手を振っている。
--- その瞬間、僕はたぶん落ちてしまった・・・
僕はその後、そのチョコレートをすぐ食べてしまうのがなんとなくもったいなくて、子犬の形をした小銭入れ(背中にチャックがついている)にしまって家に持って帰り、家の隅で隠れるようにしながら胸をきゅんきゅんさせてそれをゆっくり味わった。
◇ ◇ ◇
翌日から、僕の人気投票は、クラタが不動のナンバーワンとなり、
1位:くらた
2位:くらた
3位:くらた
となった。
僕があまりにもくらたを推すので、クラスでの注目度は一気に上がり、他の友だちもみんなくらたが好きになってしまい、やがて、転校生の「くらき」でもいいというやつが出てきて、めちゃくちゃになってきた。
僕のくらたに対する思いは、その後、5年生になってちはるちゃん(「初めてのバレンタイン」参照)と知り合うまで続き、小学校中学年の2年間、充実した学校生活を過ごしたのであった。
ちなみに前話「恋のようなそうじゃないような」で、夜寝る前に好きな人の夢を見ようとして枕の下に写真を置いて眠ったら大切な写真がぐしゃぐしゃになっていたというエピソードは、くらたのことである。
--- くらた命。
あのときは、本気でそう思っていたのが笑える・・・
お.し.ま.い
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