あまずっぱい系の私は、あまずっぱい先輩の事情なんて知りたくないッ!
夏野扇
第一話 アカデミーの剣道科、系な!
私は、興味がない秘密だけは知っとらん探っとらん、|シットラン・グレート・デレクティブ。リモネス大陸で暮らしている。
アカデミーの剣道科の一年Ⅰ組の生徒の私は、柑橘系の女子だ。
真新しい教室の教壇に立つのは、グレープフルーツ先生だ。
私は頬杖を突いて、タブレットの画面を眺めていた。
グレープフルーツ・エキスパート先生は、剣道の教科である男の先生だ。
剣道とは、競技である。真剣の対決で勝つために木刀で練習していたものが後に競技になった。昔、廃刀令で刀を没収されたので、今は剣道の競技がその名残になっている。
刀の代わりに使われる
更に、胴着や小手・面は、竹刀の痛打を九分九厘は防げると思われる。
面は、顔を覆うようにガードするもので、なおかつ着用していても、周りを広く見渡せる。
小手は、左手右手の二の腕までをガードするもので、ミトンのように左右二つある。
胴着は、戦国時代の鎧のような形をしており、それを上半身に着用して、胴をガードする防具だ。
その下に垂れを付けて、腰回りをガードしている。
要するに、剣道とは、恐らくは怪我をしない安全な競技だと言うことが分かるだろう。
グレープフルーツ先生は電子黒板に書きながら解説している。
グレープフルーツ先生は質が良くて美声なのだが、先生の美声に眠気を誘われるのが欠点だ。
お茶目な授業でなければ、耐えれられないほどの安らぐ美声なのだが。
「打突部位には、面、胴、小手、突き、の四つの打突部位がある。面は、正面、右面、左面がある。胴は、右胴と左胴がある」
「ふぁあ」
私のあくびに気づかずに、グレープフルーツ先生は良い声で解説していく。
剣道の基礎的な基礎だ。
タブレットのページは、まだ一ページ目だ。
「また、小手は中段の相手には右小手のみだ。しかし、相手が上段に構えた場合は、左小手も打突部位となる」
「それは、知ってます~先生の声が良い声過ぎて眠くなるんですが~、系な~」
「……!」
「お茶目な授業でなければ、美声に眠気が耐えれられません、系な~」
「……よし!」
次の瞬間から、グレープフルーツ先生の授業ががらりと変わった。
生徒の要望に応えるグレープフルーツ先生はかなりのやり手だ。
そして、私はグレープフルーツ先生のお茶目な授業で腹筋を鍛えながら、一時限目をクリアした。
チャイムが鳴って、休み時間になった。
二時限目は、いよいよ念願の私が望む、剣道実技の授業だ。
男友達のヤマトタチバナ・クリーンが、私の前にやってきた。
「シットラン、次の授業は剣道の実技の授業だな~」
ヤマトタチバナは、笑いながら私に言った。
ついにこのときが来たと、私は頷く。
「ついに来ました、系な! 私は、スポーツ万能で格闘技も身につけています、系な! だから、このアカデミーに入学したら剣道の有段者になって極めてやろうと常々思っていました、系な! だから、私はアカデミーの剣道科に入学したわけだ、系な! 私が剣道すれば、右に出る物は居ない! 桃栗三年柿八年、私も柑橘系ですが、九年になりかからなかったのだ! 系なッ!!」
ヤマトタチバナを、私は自信満々に振り返った。
「系なッ!?」
だが、ヤマトタチバナはもう一人の男友達のナツカン・グリーンと一緒に教室から出て行くところだった。
「シットラン~! 体育館に行くぞ~! 早くしろ~!」
「お、おう! 系な~ッ!」
私は、ヤマトタチバナとナツカンに駆け寄って、教室を出て行った。
私の、憧れの剣道の授業が、今まさに始まろうとしていた。
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