第4話
朝になってもお母さんは帰ってこなかった。それどころかケータイに連絡すらはいっていなかった。
カンナは警察に行き母親の捜索願いを提出しようと思い、支度を始めた。すると、「カンナお姉ちゃん、これ読んで」とベルナールおじさんの孫娘のフィアがやってきた。「これから出かけないといけないんだ」とあしらおうとするとフィアは目に涙を浮かべたのでカンナは本を読んであげてから出かけることにした。それはこの国では誰もが知ってる昔話の本だった。
昔、1つの国がありました。
国には王様がいて、国民はこの王様を心から慕っていました。
王様はかなりの高齢で、国の医者からはもう何年も生きられないだろうといわれたため跡継ぎを決めることにしました。しかし、王様には子供が1人もいませんでした。
跡継ぎの候補者には王様の1番の部下だったヤフェが国民から選ばれました。ヤフェは誠実で勤勉で多くの人から支持されました。しかし、ヤフェは争いを好まず、対話にて物事を解決することを好んだため、それではいざ他国との争いがあったときに国を守れない。国を守るのは力だと主張する国民たちが現れました。
彼らはその中でもっとも優れていたパロイという男をリーダーにし、次期国王の候補者に名乗りを挙げさせました。
ヤフェとパロイ、2つの正反対の考えを持った人物から自分の跡継ぎを選ばなければならない。王様は苦悩しました。
そして、王様は三日三晩考えた末にパロイを次の国王に選ぶことにしました。よその国が台頭し、力を持ち始めて時代、力なき国は生き残れないと考えたからでした。
ヤフェを支持していた国民らはひどく落胆し、国を去ることにしました。彼らは争いのない世界を1からつくりたいと心のそこから願い、まだ1つも国がなく争いもない空に国をつくることしました。
彼らの中には多くの知識人がいたため、空に国をつくることは容易でした。こうして、空にヤフェを王とした国が誕生しました。
ヤフェの国は平和そのものでした。人々は争いをせずに、話し合いで大小全ての物事を解決しました。他に国はなかったため戦争も起こりませんでした。
そんな時代が数十年続き、ヤフェも年をとり、次の王様を決めることにしました。候補者にはヤフェの1番の部下だったモルゴンとヤフェの長男のペギが選ばれました。2人とも優秀で誠実そして勤勉でしたが、考えが違いました。モルゴンはヤフェのように徹底的な対話主義で力を非としました。
一方、ペギはもしもやむを得ない場合は力を行使することを是としました。
ヤフェは悩んだ末に、モルゴンを次の王にしました。
実の父親から次の王様に指名されなかったぺギはひどく悲しみ、怒り、ヤフェを殺しました。モルゴンはペギに対話を申し込み、ぺギはそれを受け入れました。
ぺギは自分を直ちにこの国の王様にすることをモルゴンに要求し、モルゴンは要求を取り下げるように説得し続けたものの首をたてに振らないため争いを望まないモルゴンはこれを受け入れました。
ぺギは自分が王様になると自分を支持しなかった国民を国から追い出しました。空の国を追われた人々は空の国から遠くはなれた同じく空の地にモルゴンを王とする新しい国をつくりました。
モルゴンは王座につくときにこういいました。
「力は悪でしかない。愛や優しさこそが人や国を救えるのだ」
読み終えるとカンナはフィアに本を返し、「もう行かなくちゃ、おじさんが帰ってきたら遅くならないうちに戻るって伝えて」と頼み、家を出た。
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