第3話
カンナは野菜を市場で売ってきた帰り道に岩の上に座り少し休憩している最中だった。自分の畑で収穫した野菜を市場で売り生計を立てていた。この日は持って行ったものが全て売れたのでカンナはうきうき気分だった。
腕時計を見るとすでに時間は夕方の5時を過ぎていた。少し休憩しすぎたのかもしれない。カンナは家に向けてバイクを走らせた。
家が近づくにつれて次第に何か異変を感じた。家がある方角から黒い煙があがっている。煙は空高くまであがっている。それが大火事であることを彼女はすぐに悟った。あの方向にあるものは自分の家くらいしかない。彼女の胸がきゅっとなった。
水曜日の夕方5時過ぎ。おそらくお母さんはまだ帰っていない。もし帰っていたとしてもなんとか家から脱出し、無事であってほしい。カンナはそう祈り続けながらバイクを飛ばした。
煙はやはりカンナの家からあがっていた。決して大きくはないがたくさんの思い出と愛が詰まった家は炎につつまれていた。
家の周りには大勢の人がいて必死に水をかけてくれていた。消防隊が到着するにはまだ時間がかかるらしい。水をかけてくれていたうちの1人、近所に住むベルナールおじさんがカンナを見つけ声をかけた。
「カンナちゃん、今帰ったのかい?とにかく無事でよかった」
「お母さんは?お母さんは無事なの?」
自分のことなんてどうでもいい。とにかく母親の安否を知りたかった。
「カンナちゃんのお母さんはまだ家に帰ってきていないようだよ。おじさんが一番最初に火に気づいてまだ火が小さいときに家から飛んできたんだが、家の中には誰の人影もなかったし、助けを求める声もなかった。お母さんに連絡してみたかい?」
カンナはさっきから何度も母親のケータイにかけているが一向にかからずいらいらしていた。きっと仕事がまだ終わっていないのだろう。
「今日はおじさんのとこで寝ていきな。お母さんもそのうち帰ってくるから心配しないで」
ベルナールおじさんがカンナを車に乗せた。カンナは車の窓から外を見た。やっと消防隊が到着し、火消し作業をはじめた。おじさんは消防隊の一人と話しをしていた。すると、おじさんと消防隊員の後ろに1人の青年がいるのをカンナは見つけた。そして、その顔にどこか見覚えがあった。
金色の程よい短さの髪の毛、160くらいの背丈で華奢な身体をし整ったきれいな顔。彼女がロボットと結論付けた青年がそこに立っていた。カンナは車からでようとドアに手をかけた。
「ごめんごめん、話が長引いちゃって」
おじさんが運転席のドアを開けて戻ってきた。
「じゃあ行こうか」
カンナの返事も聞かずに車を発進させた。
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