29話 【お姫様救出大作戦《プリンセス・レスキュー》】



 俺はメル達を探し出すため上空一万メートルの夜空を航行してきた。


 そこへ援軍として、傭兵集団【crisisクライシス】から、【シアン・ムラヤマ】なる女性兵士が派遣されてきた。


 その彼女はどこか抜けた所があるものの優秀な人物でありこれから始まる作戦の概要を決めたのであった。


 そして【お姫様救出大作戦プリンセス・レスキュー】が始まった。


________________



「敵戦艦まで千メートル! 装甲に光化学迷彩と魔力を合わせたモノを使っているようでそちらのレーダーにほ反応が無いと思われますが、直ぐソコにあります! 私が先に放ちますので、直ぐ後ろを離れないよう着いてきてください!」


「分かった。いつでもいいぞ!」


 俺の言葉を聞いたシアンは機体イーグルを人型へと変形させ、大口径の銃を構えると大型マガジンを銃に装着した。


「スリーカウントします。左舷後方への着弾を確認したら突撃お願いします。スリー、ツー、ワン、ファイア!!」


 ボシュッ! ボシュッ!


 その大振りな銃から軽めの二発の銃弾が発射されると、一旦落下した後急加速を始め空へと突き進んだ。


 およそ三秒後に空中で爆発が起きたかと思うと、目の前にアーク・ジェネラルの何倍あるだろうか。七百メートル越えの超大型戦艦が目の前に現れた。


「思ってたよりデカいな……。良し! 行くぞ!」


 敵の姿を確認。操縦桿とペダルを前進する為思い切り動かす。


「なぁ、なんで敵はあんなミサイルのような弾を迎撃しなかったんだ? 普通なら対空装備してるだろ?」


 突撃しながらも、ふとした疑問をシアンに投げかけてみる。


「あー、それは電波妨害ジャミングしているからに決まっているじゃないですか。

 先ほど敵艦を捕捉したと言いましたよね? その時に妨害機雷を放っておきました。それの効果が発揮されているおかげです!」


 そう言いながらシアンは、先ほどの銃弾を再度撃ち込む。

 すると敵戦艦の横側から多数のARMEDが発進し始めたのが見えた。


「いきなり何を……。って、おいおい! なんて量のARMEDだ!」


「流石に目視されたら電波妨害ジャミングも意味がありませんから。先手先手を取るのがわたくしのやり方なので」


 ドーーーン!


 出撃してきた敵ARMEDが複数爆発していき、連鎖するように十数機のARMEDが夜空の星へとなっていった。


「では、手はず通り攻めていきましょう」


「はぁ、分かった」


 今日何度目かの溜息を吐きながらも、気合いを入れ直す。


「では、前衛はお任せしました。サポートはお任せあれ」


 そう言うと、イーグルは右手にスナイパーライフルを。左手には小型の盾を展開しバルムンクの後ろに回り込んできた。


「おいおい、俺も狙撃がメインなんだがっ!」


 ガキン!


 愚痴を言いながら、第一陣の先頭にいたカブトムシ型ARMED【ビートル】からのカブトムシの角の様な剣での一撃を大剣バルムンクで受ける。


「貴様ら、帝国に楯突く意味は分かっておるだろうな!」


 公開通信オープンチャンネルから老齢だが威圧感のある渋声がそう伝えてきた。


「さぁ? 分からないから教えてくれ!」


 鍔迫り合いの状態から左脚で相手の胴体を蹴り、一旦距離を開ける。そして、間髪入れずに武装をライフルに換え連射する。


「ふん! よかろう。このゴライアス・タレスが若造の根性を叩きのめしてやる!」


 俺の弾丸の嵐を背中に装備していたカブトムシの甲殻の様な大型の盾で防ぎ叫んできた。


「やれるもんならやってみな!」


 ビートルはその名の通りカブトムシかモチーフになっており、焦げ茶色をしたその装甲は硬い。メインの武器は角剣の他に大盾。そして。


 ボシュッ!


 左手に直接装備されている。グレネード弾だ。


 俺は迫ってくるグレネード弾に狙いを定め撃ち抜く。

 すると爆発したところから粘性のあるマグマの様な赤い物体が広がる。これに当たると装甲が溶けてしまう。

 俺は溶解液を右に避け、円を描きながらビートルへ射撃を続ける。


「ちょこまかと小賢しい!! 正々堂々と闘え!」


 ゴライアスが叫び声を上げる。短気な爺さんだ。


「闘いに正々堂々も何もないだろ。ゲームじゃないんだからよ!」


「男なら当然の思考だろうが!」


「爺さんの価値観だな、それは!」


 自分の得意な立ち位置で戦う事の何が悪い。世間はいつもそうだ。自分の価値観を押しつけて個性を潰してくる。格下はいつもそうしないと自己を保てないのか?


 過去の事を思い出し苛立ったが、そんな事ではメルを救えないな……。頭を振り、操縦桿を握る手に力を込めて、威嚇射撃を止める。


「そんなに言うならお前の価値観フィールドに行ってやるよ!」


 そう叫び俺は大剣バルムンクを抜刀。一気にビートルとの距離を詰めるためブースターを最高出力にする。


「そうでなくてはなぁ! 若造よ、来い!!」


 ゴライアスはそう叫び角剣を後ろに、盾を前に構え直し、突撃してきた。


 ガキーン!  


 大剣と角剣がぶつかり合い火花が飛び散る。


「中々やるではないか!」


「ただ鍔迫り合ってるだけだろ!」


「ふふん。実力が高まれば鍔迫り合いのみでも力量なんぞ計れるわい!」


 あぶな! 

 ゴライアスは左の盾を振り攻撃をしてきた。俺はペダルを踏み込みブーストを点火させパワーを上乗せすることでビートルを吹き飛ばし、鍔迫り合いと盾での攻撃を終了させる。


「面白いことをするのぉ! そしてその機体。いい仕事をしておる」


「カナデ様そろそろこちらも抑えているのが大変です。早く墜として艦内へ行きましょう」


 いきなりシアンからの通信が入ってきた。

 ふと視線を外すと、俺の周りではコガネムシの様な緑のカラーリングをした【コクーン】を次々と墜としている【イーグル】の姿が見えた。


「悪い、今倒す」


 ババババ ババババ


 バルムンクへ敵艦が対空砲を放ってきた。俺は、それを急上昇し避ける。


「爺だからといって無視は良くないのぉ!」


「分かってるよ! いちいちかまってちゃんだなぁ!!」


 シールドバッシュを仕掛けてきたビートルに大剣を大上段から叩き込む。


「んぐっ」


 大盾で防いだビートルだったが、こちらのパワーが圧倒的だったのだろう。そのまま一直線に地面へと吹き飛ばされていった。


「この高さからでもARMEDに乗っているから死にはしないだろう。」


 ARMEDは外からの衝撃からパイロットを守る為の機構が多数備わっている。それに最悪緊急脱出ベイルアウトもある。

 中々強かったが俺には届かなかった。それだけだ。


「終わったぞ、左舷の穴へ突撃する!」


「了解です。こちらも! 終わったので向かいます」


 最後の一機を落とし終えた様で、シアンから通信が返ってきた。

 その声を聞き俺は、ペダルを踏み込み加速。武器をライフルに持ち替え俺へ降り注ぐミサイルを撃ち落ちし銃弾を避ける。


「良い動きですね。段々勘が戻ってきたのではないでしょうか?」


「そうか。さっさと姫様達を奪還するぞ!」


 いつの間にか隣に併走していたイーグル《飛行形態》へそう告げさらに機体を加速させた。


はいつ使うのですか?」


 含みを待たせてシアンが尋ねてきた。


「何のことだ?」


 ガシャーン


 無事に敵戦艦内へと進入が出来た。


「なるほど。だからマゼンダ様が不機嫌だったのですね。では、先に行きましょう」


「何勝手に納得してるんだよ」


 詮索をされず都合はよかったが、どうも見透かされているようで嫌な感覚だ。


「ほら、警戒しないといけませんよ」


「ったく誰のせいだよ」


 目の前はARMEDの格納庫だったようだが、先ほど出撃した機体が大半だったのと、シアンの爆撃によって大破したであろう残骸などが転がっている。


「随分と派手にやったもんだな?」


「そうでしょうか? 想定より損害が少なかったのでデータを更新しておかないと行けません」


 俺たちは道を進みながら話をしていた。

 道幅はARMED四機ほどが通れるほど広めの通路。どうやらこの戦艦はARMEDで移動したり活動する前提で作られていたのだろう。全体的に施設のスケール感が大きい。


「真面目だな」


「そうでしょうか? 参謀たるも者としては普通です。まぁ、いつもマゼンダ様が出撃したら終わってしまうので、私の仕事はそんなに重要ではありあせんが」


 マゼンダか……あの子供はそこまで強いのか。


「敵機が来ますね。数は三。対応お願いします」


「チッ、分かった。援護は頼んだぞ!」


 レーダー赤丸を確認して大剣バルムンクを装備。一直線の通路の真ん中を移動しているようだ。

 俺たちは一端、壁際まで移動する。お互いが有効射程に入るであろうと思った瞬間だった。


 バシュッ、バシュッ、バシュッ


 ドーーーン


 突然の銃撃により三機が爆発する


「さぁ行きましょう」


 この女中々にクレイジーだな。


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