第3話 けんか
めずらしく、家の電話が鳴った。学校からだったのでお母さんに変わると、「誠司が!?」とか「けが!?」とおどろきながら早口でいくつか話したあと、ピリピリした空気を出しながら、急いでジャケットを着た。
「せいじ君大丈夫なの?私も行く!」
大きなけがなのかな、大丈夫かな。出かけようとするお母さんに聞くと、ゆっくりと言われた。
「誠司君ね、喧嘩しちゃったみたいなの。お母さんは迎えに行ってくるから、ちょっと留守番しててね。」
ちょっと遅くなるかもしれないから、フライパンに入っている夕飯の盛り付けをお願いね、と言って、お母さんは出ていった。
大怪我で、病院とかだったらどうしようとか、喧嘩相手にけがをさせてしまったのかなとか、何もしないでいると余計なことばかり考えてしまう。お母さんが出かけてすぐに始めた夕飯の盛り付けは、あっという間に終わってしまった。
けがが早く治るように、落ち込んでいたら元気になるように、せいじ君のお皿はお肉を多めにしてあげよう。
洗濯物を畳むのを手伝っていると、鍵のまわる音がした。お母さんの後に隠れるように、せいじ君はリビングに入ってきた。
「せいじ君、ほっぺどうしたの!?」
右ほっぺには、湿布みたいな大きいガーゼがついていた。ほっぺが腫れて、右の目を開けるのが辛そうだ。
「別に」
ランドセルを置きに、せいじ君は部屋に入っていった。
……追いかけに行くのも、違う気がする。どうしたのなんて聞きにいくのは、それにせいじ君、いつもよりも怒っている感じがあって、怖い。
お母さんも何となく怒っているような雰囲気があって、何があったのか聞きにくい。
もう少ししたら、どっちか、話したくなるかな。そのもう少しにはまだちょっと時間がかかりそうなので、せいじ君がリビングテーブルの端っこに置きっぱなしにしていた本を開いてみた。
呪文みたいなタイトルだから、魔法とかが出てくる海外の児童文学かと思ったのに、なんか違った。
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