第16話 獣王ガザフ

 ランフェルド達は城の裏側から侵入する。

 城の裏側は険しい山になっているが、情報では湿地帯に続く抜け道がある事はわかっている。

 湿地を案内してくれた蜥蜴人リザードマン達を先頭にランフェルド達は進む。


「ここが城の抜け道か……。巧妙に隠されているようだが、わかってしまえばどうという事はないな」


 ランフェルドは岩に偽装された魔法の扉を開けると呟く。


「少し狭いですな。誰を先に行かせましょうか? 閣下?」


 一緒にいる天魔将軍フェルトンが聞く。

 フェルトンはケールと呼ばれる種族の将軍だ。 

 ケールは角の生えた禿げた頭に蝙蝠の翼を持つ種族であり、黒い山羊人同様にレッサーデイモンと呼ばれる事もある。

 

 抜け道は熊人が通るように作られているが、それでも数名しか並んで入れない。

 一気に大軍を突入するのは無理だろう。


「ふむ、それならばリブルム将軍。貴公の配下にお願いできるかな?」


 ランフェルドは後ろにいる黒鱗の竜人ドラゴニュートの将軍リブルムに聞く。

 

「わかりました。閣下。配下の者に行かせましょう。隠密が得意であり、中の者に気付かれにくいはずです」


 リブルムはそう言うと配下の蜥蜴人リザードマンに命令する。

 蜥蜴人リザードマン竜人ドラゴニュートの下位種族である。

 そのためかリブルムの配下のほとんどが蜥蜴人リザードマンだ。

 命令を受けた蜥蜴人リザードマン達が次々と抜け穴に入る。

 蜥蜴人リザードマンの中でも隠密に長けている者達で、戦士に比べて小さいが素早さは上である。

 彼らが先行するとランフェルド達も続く。

 そして、しばらくしてからだった。

 少し低い音が聞こえる。


「閣下……。どうやら先行した者達が待ち伏せにあっているようです。いかがなさいますか?」


 少し前を行くリブルムが振り返って言う。

 待ち伏せと言う事は侵入に気付かれていたという事だ。

 もし、これが奇襲なら失敗である。


「いや、このまま進む。我々は囮のような者だ。気付かれているのならそれでも良い」


 ランフェルドは先に進むことを決断する。

 ランフェルドの役割は後からクロキ達が侵入しやすくするための囮である。

 気付かれても問題はない。

 ランフェルド達は先に進む。

 すると広い空間へと出る。

 既に先行した蜥蜴人リザードマン達は倒されてしまって床に倒れている。

 ランフェルドは広い空間にいる者達を見る。

 監獄から脱出した者達だ。

 その真ん中にいる者が前に出て来る。

 何も描かれていない仮面をつけた者である。

 無貌の悪魔フェイスレスであった。


「ベリド……。いや、フェイスレス」


 ランフェルドはその者を見て呟くと剣を抜く。


「よく来ましたね。ランフェルド君、どちらが魔王様の側にいるのがふさわしいか勝負をしようではありませんか?」


 そう言ってフェイスレスは両手を広げるのであった。



「さて、そろそろ良い頃だぞ。どうする、クロキ?」


 クーナは座って瞑想しているクロキに言う。

 クロキは出来る限り早く突入しようとしてしまいそうになる。

 だが、あまり早すぎるのでは意味がない。

 だから、突入のタイミングをクーナが判断する事にしたのである。


「そう……。わかった。もちろん、行くよ。みんな良いね」


 クロキは立ち上り、振り返って言う。

 するとほとんどの者が頷く。


「あの……、閣下。申し訳ないけど、殿下がまだ眠っているのさ……。どうしたら良いのさ?」


 プチナが恐る恐る聞く。

 リウキの側でポレンがあおむけになって寝ている。

 おやつを食べた後で昼寝をして、まだ起きていない。

 

「仕方のない奴だな。リウキ、叩き起こせ」


 クーナはリウキに言う。

 

「は、はい。母上。姫様、姫様。起きて下さい。行きますよ」


 リウキは優しくポレンに言う。

 さすがに叩くのは無理のようだ。


「うう~ん。リウ君、むにゃむにゃ。もっと食べさせ……。ううん、もう朝」


 ポレンは少し寝ぼけながら、起きる。


「殿下。そろそろ行くのさ。しっかりと立つのさ」


 プチナがポレンを支える。


「さて、ポレンも起きた事だし、出発するぞ」


 ポレンが起きた事を確認するとクロキ達は獣王城へと進む。

 正門の前まで来るが誰もいない。

 クロキは正門を見る。

 正門は大きく開かれている。

 まるで、入ってくれと言わんばかりだ。

 

「罠でしょうか? 閣下、どういたしますか?」


 将軍ゴナアが聞く。


「いや、このまま進もう。罠があるとしても、打ち破る」


 クロキは首を振って言う。

 罠があるからと言って侵入しないわけにはいかない。

 ゴナア配下の魔戦士達を先頭にクロキ達を進む。

 正門から城に入ると大きな広場がある。

 誰もいない。


「誰もいないですな……。奥にいるのでしょうか?」


 ゴナア達は先に進もうとする。


「待て! ゴナア将軍!!」


 クロキは叫ぶと剣を振るう。

 炎を纏った斬撃が広場を奔る。

 黒い炎が何かを燃やすのが見える。


「これは糸? この部屋中に糸が張り巡らされていたのですか?」


 シャーリが驚きの声を出す。


「そのようだな。おそらく鋭い鋼糸のようなものだろう。先行した者達を肉塊にしたのはこれだろうな」


 クーナが落ちた糸の残りを拾って言う。

 クーナの言う通り、この部屋には糸が張り巡らされていた。

 先行した者達はこの糸で斬り刻まれたのだろう。

 

「おそらく、アトラナクアの仕業だな。他にも罠があるかもしれない。気を付けて行くしかないだろう」


 クロキは静かにそう言った時だった。


「いや、もう罠はない。待っていたぞ」


 広場の奥、城の内部へと続くと思われる通路から何者かがそう言って出て来る。

 かなりの大男だ。

 人間のように見えるが、監獄から脱出した者に人間はいないはずなので、違うだろう。

 大男は不敵な笑みを浮かべてクロキ達を見ている。


「ガザフ、兄ちゃん……」


 プチナが大男を見て呟く。


「プチナか? あまり、大きくはなったな……。最後に見たのは何時だっただろうか?」


 ガザフは笑って言う。

 クロキはその笑みにどこか寂しそうな感じがした。

 そして、出て来たのはガザフだけではなかった。

 後ろから熊人等が出て来る。

 おそらくプチナから離反した熊人の戦士達だろう。


「ウララ姉ちゃん!! どうして、こんな事をしたのさ!! これは魔王様に対する謀反なのさ!!!」


 プチナが突如ガザフの隣にいる女性に向かって叫ぶ。

 彼女も人間に見える。

 だが、彼女もガザフ同様に人熊ワーベアだろう。

 そして、その名前にクロキは聞き覚えがあった。

 プチナはウララと呼んでいるが、監獄から脱出の手引きをした人熊の女性ウラジラだろう。


「ごめんなさいね……。プチナ。ガザフは別に魔王様に謀反を起こしたわけではない。なのに永久に監獄にいるままに納得がいかなかったの」


 ウラジラは首を振って言う。

 ウラジラとしては罪に対して罰が重すぎると考えているのだろう。

 刑法がしっかり整備されていない弊害だと言える。


「そうか……。だけど、脱獄を許すわけにはいかない。捕らえさせてもらうよ」

 

 クロキは剣を抜くと前に出る。


「お待ちください!! 閣下!! ここは我々に行かせてくだされ!!」


 クロキの前にゴナアが出て来る。


「その通りです。閣下や王子に戦わせるわけにはいきません」


 シャーリも同じように前に出る。


「閣下……。申し訳ないのさ、身内の不始末はうちがつけないといけないのさ」


 プチナも前に出る。


「あの母上……」

 

 リウキはクーナを見る。

 自身が戦うべきなのではと言いたげだ。 


「仕方がない。こいつらにやられるようなら、そもそも修行にならんだろうからな」


 クーナは仕方がないと諦めの表情になる。


「そうか、お前達は手を出すな。俺だけがいく」


 ゴナア達が前に出るとガザフだけが前に出る。


「ガザフ!? 貴方だけで戦うというの?」

「そうだ、ウラジラ。これまでの事は礼を言う。だが、これ以上はダメだ。罪を重ねる必要はない。俺が死んだらお前達は降伏して、慈悲を請え」


 ガザフは熊人の戦士達に言う。

 その表情には悲壮な覚悟があった。

 ガザフの言葉を聞き、熊人の戦士達が動揺する。


(どうやら、死ぬつもりのようだな……)


 クロキはガザフを見てそう思う。

 まるで死に場所を探しているかのようであった。

 長い間、牢獄に入れられていたガザフ。

 何か思う所があるようだ。


「ほう、諦めたか? ならば、その首を落としてやろう」


 ゴナアが斧を構えて言う。


「悪いがそのつもりはない!! このガザフの首!! 取れるものなら取ってみよ!!」


 ガザフが吠える。

 戦いが始まるのであった。 

 


★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★


更新です。

なかなか暑さがおさまりません。

ちょっとキツいです。


色々とAIでやりたい事もあるのですが、暑さで体が動かず

上手く行きません。

例えばnanobananaでマンガ作成がどれくらいになるとか?


あと人工子宮はいつできるのでしょうかね。


最後に誤字脱字があったら教えて下さると嬉しいです。

コメントはいつもありがとうございます。返信できずにごめんなさい。

ギフトを下さった方々、本当にありがとうございます。執筆の励みになります。





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