第7話 ソードダンサー

「あいつどこに行こうってのかしら?」


 踊り子のシェンナは同じ劇団に所属するマルシャスの後を付けながら呟く。

 場所はアリアディア共和国のもっとも外側の城壁の近くである。

 溺れたマルシャスは聖女サホコの癒しの魔法ですぐに回復した。

 そして回復したマルシャスは夜になると劇団の宿舎から外に出たのである。

 夜に宿舎から出る事は別に悪い事ではない。

 ミダス団長は興業に支障が出ないなら自由にする事を認めている。

 明日の予定は特に何もない。

 劇団は勇者様をもてなす為に劇を延期している。

 そのためか劇団員の何人かは外の酒場へと出かけたようだ。

 先輩劇団員のアイノエまでもどこかへと出かけていた。

 噂によるとアイノエには恋人がいるらしいとシェンナは聞いていた。

 その噂もシェンナは気になるが、今はマルシャスの行動が気になるのでそれどころではない。

 シェンナはマルシャスの後を付ける。

 マルシャスが向かうのは城壁の外にある歓楽街である。

 シェンナはマルシャスが時々そこへと向かう事を知っていた。

 昨日は見つけられなかったが、どの店に行くのか確かめようと思う。


「だけど、このシェンナ様からは逃れられないわよマルシャス」


 シェンナは足音と気配を消すとマルシャスの後を付ける。

 音を立てないで歩く体術を習得しているシェンナにはたやすい事であった。

 しばらくするとマルシャスは外街でも一番大きい店へと歩いて行く。

 昨日、シェンナがあの店を探した時にはマルシャスはいなかったはずの場所であった。


「あれ? あの男は確か……」


 店の前でマルシャスがある男に話しかける。

 その男の顔にシェンナは見覚えがあった。

 兄のデキウスが月光の女神と呼んでいた女性と一緒にいた男だ。


「なぜここに? もしかしてマルシャスの仲間なの?」


 シェンナは耳をすませるが、この位置からでは話す内容までは聞こえない。

 マルシャスと男は連れだって店へと入ると、シェンナも2人の後を追うように中へと入る。

 店に入ると何人かがシェンナを見るがすぐに興味をなくしたように目を背ける。

 今のシェンナは踊り子の格好ではない。

 顔や体をフード付のローブで隠している。

 こういう店には身分を隠した者が入る事もある。

 そういう者は店に入る時に顔を隠すのでシェンナの格好はそこまで変ではないはずだ。

 この服の下には愛用の2本の曲刀といくつかの武器を持って来ている。

 カルキノスを操ったのはマルシャスだけの力ではないはずで、裏に手を引いている者がいると推測している。

 そして、そいつらは危険な奴に間違いなかった。

 用心のために武装して来たのである。

 店に入った2人は店の奥へと入って行くのがシェンナには見えた。


(昨日この店に入ったけど、確か関係者以外は立ち入り禁止のはずよね。なぜマルシャスは通してもらえるの?)


 シェンナは疑問に思うが、そんな事を考えている暇はない。

 このままだと2人が先へと行ってしまうだろう。

 シェンナは後を追いたいが、従業員達の目があるから中に入るのは難しい。

 ではどうするか?

 シェンナは手投剣を他の人に見えないように小さく構える。

 手投剣は掌に収まる程の小さな剣だ。

 その手投剣を手首だけを動かして投げる。

 手投剣は1人の客の足元の靴へとあたる。

 靴を床に縫い付けられた客はそのまま倒れ込む。

 傍目には客が酔って倒れただけに見えるだろう。

 倒れた酔客は卓にあたり上に会った酒や食べ物を床へとぶちまける。

 その時大きな音がして客や従業員の目がそちらへと向く。

 シェンナはその視線の死角をついて音を立てずに飛び壁を蹴りマルシャスの入って行った場所へと滑り込む。

 これは手品と同じ要領である。

 客を右手に集中させて左手でこっそりと動作をする。

 もっとも、音を立てずに素早く動く体術が無ければできないだろう。

 奥の入口の近くに立っていた従業員もシェンナに気付かず、奥への侵入を許してしまう。

 店の奥へとシェンナはマルシャスの後を追う。

 通路には複数の扉が有る。


(何処の部屋に入ったのかしら?)


 シェンナはフードを脱ぐと聞き耳を立てる。

 するとある部屋から人の気配を感じる。

 その部屋へとこっそり近づくと話し声がはっきりと聞こえた。


「くく、驚いたか? ここから地下に入るけど良いか? 中にはとびっきりの美女がいるぜ」

「良いですよ。なぜこんなに親切にしてくれるのかわかりませんが助かります」


 シェンナの耳に2人の声がする。

 すると何かが動く音が聞こえ、やがて中から人の気配が消える。

 人の気配がなくなったのを感じシェンナは中に入る。

 部屋の中は一見普通の倉庫であった。

 地下に降りる場所は見当たらない。


「おかしいわね。確かにこの部屋にいたはずなのに」


 シェンナは床と壁を注意深く見る。

 やがて、戸棚の1つを動かした跡が見つかる。


「これみたいね」


 シェンナは戸棚を調べて横に動かすと、地下へと降りる階段が現れる。


「さて何が待っているのかしらね……」


 シェンナは地下へと降りて、マルシャスの後を追う。

 通路を歩くと前方に広い空間が見える。

 その部屋の中央にはマルシャスと月光の女神と一緒にいた男がいる。

 シェンナは部屋の入口の影になっている場所へと身を潜め中の様子を窺う。

 部屋にはマルシャス達の以外に誰かがいるのが確認できた。

 そして、部屋の奥を見て息をのむ。


「嘘……。アイノエ姐さん」


 シェンナは思わず呟いてしまい、口を押える。

 部屋の奥にいたのはアイノエであった。

 だけどそれ以上に驚く事があった。

 アイノエの隣に黒い山羊頭の男が立っていたのである。


(あ、悪魔……。下位レッサーデイモン?)


 シェンナの目に映る山羊頭の男の姿は、物語に出てくる悪魔そのものであった。

 下位レッサーデイモンは何かをマルシャスの隣にいた月光の女神と共にいた男に何かを話しかける。

 すると突然に黒い炎が男の体を包み込む。

 そして黒い炎が消えたときに男が立っていた場所には黒い鎧を纏った騎士が1人立っていた。

 それを見てシェンナは再び声が出そうになる。

 黒いサテュロスが騎士を暗黒騎士と呼ぶのが聞こえる。


(もう何が起こっているのかわからない)


 シェンナは混乱する。

 その時だった。暗黒騎士から強烈な風が発せられる。


「えっ……」


 シェンナがその風を浴びた時だった。急に足がすくんで震えだす。

 シェンナは堪えきれず膝を床につける。

 その時、部屋の内部へと身を乗り出してしまう。

 複数の視線がシェンナを見るのがわかる。

 顔を上げるとマルシャスと目が合う。


「シェンナ……」


 マルシャスがシェンナの名を呼ぶ。


(まずい! 気付かれた! 逃げないと!)


 身の危険を感じシェンナは足を叩き、無理やり立ち上がる。

 足はまだ元に戻っていない。

 しかし、逃げなければ不味い。

 シェンナは急いで来た道を戻る。

 何かが追ってくる気配がする。


(急げ!!)


 シェンナは顔を隠すために着ていたローブを脱ぎ、動きやすい格好になる。

 階段を駆け上がり1階へと戻ると店の出口へと走る。

 シェンナを見た従業員の女性が驚くが気にしない。

 酔客を掻き分け店を出る。

 すると店の中から怒声が聞こえる。

 おそらく追って来た者とぶつかり喧嘩になったのだろう。


(今の内に距離を稼がないと!)


 シェンナは足には自信がある。簡単に追いつかれるものか。

 人ごみを掻き分けて走る。

 そして人気のない所まで来たときだった。

 目の前に突然白い仮面を被った者が立ちはだかる。


「嘘! いつの間に!!」


 仮面を被った者が剣を振るう。


(速い!)


 シェンナはとっさに後ろへ避けて剣を躱す。

 相手の動きが速いので背中を向けるのは危険だ。

 シェンナは咄嗟に判断すると相手の剣を掻い潜ると足払いをする。

 剣を振るっていた白い仮面の者はそのまま地面へと頭から倒れ込む。

 シェンナはその間に逃げる。

 逃げながら少しだけ後ろを見る。

 白い仮面の者は痛みを感じた様子もなくすぐに起き上がろうとする。

 そして見てしまう。地面に当たって割れた仮面から覗く素顔を。

 それは生きた人の顔ではなかった。

 シェンナは走る。

 複数の追跡者の気配を感じる。

 その速さは異常であった。人間の動きではない。


「仕方がないか……」


 シェンナは左右の腰にある曲刀を触ると、懐から薬の入った小さな水袋を取り出す。


 アサシュの霊薬。


 それがこの水袋に入っている薬だ。

 しかし、アサシュは危険な薬だ。

 強大な力を得る代わりに制御できなければ体を壊す事もある。

 シェンナは幼い頃からこの薬を使っても大丈夫なように訓練させられた。

 訓練させたのは実の母親である。

 このことは父であるナキウスも兄であるデキウスも知らない事である。

 シェンナの母イシュパシアはイシュティア神殿に所属するアサシンであった。

 アサシンの娘はアサシンとなるのが決まりであり、その事は父や兄弟には秘密である。

 そのためシェンナもまたアサシンとなった。

 アサシュの霊薬を使う所からアサシンと呼ばれるシェンナ達はイシュティア様の信徒を守る戦士である。

 女神イシュティアの信徒は法に反する事が多く。諸国の法に守ってもらえない事が多い。

 そのため信徒たちは自衛の為の力が必要となった。

 その結果生み出されたのがアサシンなのだ。

 しかし、戦士の教団ではないので戦闘には優れてはいない。

 そのためアサシュという危険な薬物を使う事にしたのである。

 そして、イシュティアの信徒が戦う相手は必ずしも魔物ではない。

 人間だって相手にする。

 アサシンは教団の信徒に乱暴狼藉を働く者を気付かれずに闇へと葬る。

 闇討ちするのはその国の兵士達に捕らえられないようにするためだ。

 さすがに正面から殺せば逮捕は免れない。

 だけど、イシュティア様の信徒に危害を加えたから殺されたのだという印は残して置く。

 こうすれば誰もイシュティア様の信徒に危害を加えようと思う者はいなくなるはずであった。

 そして、闇討ちをするところからアサシンは暗殺者の代名詞になった。

 シェンナはアサシュを飲み干す。


(禁止薬物を飲んでいると知ったら兄さんはどんな顔をするだろう? きっと絶対に止めようとするだろうな)


 シェンナはそんな事を考えるが、今はそんな事を考えている場合ではない。

 アサシュを飲んだ事により体の奥底から活力が湧き、力がみなぎってくる。

 そして、より研ぎ澄まされた感覚は取り囲まれている事を教えてくれる。

 白い仮面の者達は徐々に近づいてくる。

 シェンナは飛ぶ。

 脚力が増大したシェンナは壁を1度蹴っただけで2階建ての建物の屋根まで飛ぶ事ができる。

 しかし、相手もまた屋根の上へと上ってくる。


(すごい身体能力だわ。薬を飲んだ私に付いてくるなんて)


 屋根の上まで上がった事により、追って来た相手の姿がシェンナには見えた。

 全員が魔術師のローブを着て、顔には白い仮面を付けている。

 彼らの動きはシェンナと同等ぐらいはあるだろう。

 不安定な屋根の上でも臆する事なく歩いている。

 仮面の者達は各々武器を持ち構える。

 中には重そうなメイスまで持っている。素早さだけでなく力も強い事がわかる。

 シェンナは腰の2本の曲刀を抜く。


「来なさい! イシュティア様に仕える者の剣舞を見せてあげる!」


 シェンナが叫ぶと仮面の者達が迫って来る。

 一番近くにいた仮面の者の剣を躱すとシェンナは曲刀を横に振るい相手の首を切り裂く。

 曲刀は特注で刀身が薄く作られていて軽く、片手で使う事ができる。

 ただし、薄いぶん切断力に乏しく、鎧はもちろん、人体の柔らかい部位を狙わなければ斬る事ができない。

 今回も柔らかそうな首を狙ったのである。

 シェンナは近くにいた者の首を斬ると、後ろから来た仮面の者が横に振ってきたメイスを回転しながら身を屈めてやりすごしながら相手の足を斬り後ろへと逃れる。

 シェンナが2人の仮面の者から離れると、すぐに2本の小剣を左右の手に持った仮面の者が上から襲ってくる。

 シェンナは2本の小剣を横に移動して躱し回転して相手の左腕を斬る。

 しかし、相手は左腕を斬られたのにもかかわらず右腕だけで攻撃してくる。

 その動きは痛みを感じていないようであった。

 しかも、その攻撃はかなり速い。

 小剣使いを相手にしていると大剣と槍を持った2人の仮面の者達が近づいてくるのをシェンナは感じる。

 そこでシェンナは小剣を持った者を相手にしながら精神を集中させる。

 大剣と槍がシェンナに繰り出される。

 しかし、その攻撃はシェンナに当たらず小剣を持った仮面の者に当たる。

 小剣を持った仮面の者は槍と大剣に体を斬り裂かれ動けなくなる。

 幻術である。

 イシュティア様の信徒は加護により幻惑の魔法を使う。シェンナはアサシュの霊薬を使う事で幻術を少しは使う事ができる。

 その魔法でシェンナは自身の幻影を作り身代わりにしたのである。

 大剣と槍はシェンナの幻影をすり抜けて対面にいた小剣を持った者を切り裂いた。


(痛覚はないみたいだけど、視覚はあるみたいなので利用させてもらったわ)


 シェンナは槍と大剣を持った仮面の者が小剣の仮面の者の体に武器を取られている間に後ろから首を斬る。

 アサシュで力が強くなったとはいえ、曲刀では首を斬り落とす事まではできないが致命傷のはずであった。

 しかし、血が吹き出さない。

 大剣と槍を持った仮面の者は普通に動いている。


(嘘? これで死なないの? やっぱり人間じゃない!)


 さすがにシェンナは焦りを感じる。

 追手はさらに来ている。

 シェンナは逃れるように別の屋根へと移る。

 しかし、逃げた先からも違う仮面の者が近づいて来る。

 首を斬った剣使いの仮面の者と足を斬ったメイス使いの仮面の者がこちらを追って来る。

 仮面の者達の数は全部で13人。

 かなり厳しい状況であった。

 アサシュは強大な力を与えてくれるが長時間使い続けていると体がもたない。

 先程の攻防でも力を制御するのは大変だった。


(どうしよう? このままだともたない)


 シェンナは思考を張り巡らせるが、この窮地を脱する方法は思いつかなかった。


「すごいな……。見事な動きだ」


 突然頭上から声がかけられシェンナは顔を上げる。

 上を見ると月を背に漆黒の鎧を着た騎士が空に浮かんでいる。

 その姿はとても幻想的だが見惚れている場合ではない。


「貴方は……」


 シェンナの頭上にいたのは地下室にいた暗黒騎士であった。

 暗黒騎士は屋根の上へと降りてくる。


「ここからは自分が相手をするよ」


 暗黒騎士はそう言うと右手を振るう。すると仮面の者達が全員吹き飛ばされる。

 シェンナは何をしたのかわからなかった。


(何かの魔法を使ったのだろうか?)


 シェンナは暗黒騎士を見る。

 相手は1人になったが、状況は好転していない。

 この暗黒騎士はおそらく仮面の者達よりもはるかに強いように感じられた。


「助けようと思ったけど……。いらなかったかな。とても綺麗な動きだったから見惚れてしまったよ」


 暗黒騎士はシェンナに向かって言う。


(助けるって? どういう事なの? 意味がわからないわ)


 シェンナは疑問に思うが考えている暇はない。

 この暗黒騎士を倒さなければ逃げられないのは確実だった。

 シェンナは暗黒騎士に向かって走る。

 そして、幻術で複数の剣を作り出すと暗黒騎士に放つ。

 幻影の剣は真っ直ぐ暗黒騎士に向かう。

 暗黒騎士は右手を軽く動かす。

 その手には幻影の剣に隠して投げた2本の手投剣が握られている。


「化け物め!!」


 シェンナはそう叫ぶと暗黒騎士に迫り、2本の曲刀を別々に動かして相手の首と腕を狙う。


「えっ?」


 シェンナはそのまま倒れそうになる。

 暗黒騎士が突然目の前から消えたのだ。


「なかなかの動きだね。レイジの動きと似ている。でもレイジの方が鋭いかな」


 シェンナの後ろから暗黒騎士ののんびりとした口調が聞こえる。


「もしかして目暗まし?」


 シェンナは振り返って言う。


「ああ、別に幻術を使わなくても。動きだけでこれくらいの事はできるよ」


 暗黒騎士は平然と言う。

 その言葉にシェンナは背筋が凍るような感覚に捕らわれる。


(動きだけで私の目を騙したというの?)


 今のシェンナはアサシュを飲んだ事で感覚がするどくなっている。

 それにもかかわらず知覚出来なかったのだ。

 シェンナは後ろに下がる。

 どうやってもこの暗黒騎士に勝てる気がしなかった。


(ならば、やる事は1つしかない。相手は私をすぐに殺す気はないようだ。そこに賭ける)


 シェンナは右手の曲刀を咥えると懐から小壺を取り出す。

 暗黒騎士は興味深そうにこちらを見ている。


(思った通りだ。何時でも勝てると思って油断している)


 シェンナはその隙をつき、左の曲刀に文字を書く。

 そして意識を集中する。

 複数のシェンナが姿を現す。

 多重幻影の魔法である。


「へえ……」


 暗黒騎士は驚いたような声を出す。


「行くわよ!!」


 シェンナは作りだした幻影と交差しながら暗黒騎士へと走る。

 幻影を四方から暗黒騎士に向かわせる。


「悪いけど無駄だよ」


 暗黒騎士は飛ぶとシェンナの前に現れる。


「くっ!!」


 シェンナは暗黒騎士を睨む。


「幻影で攻撃する間に自分は逃げるか……。悪くない手段だけどね」


 シェンナは暗黒騎士の言葉にやはり通じなかったかと思う。

 しかし、もう1つの事には気付かなかったようだ。


(後は兄さんが気付いてくれれば良いのだけど)


 シェンナは悔しそうな顔をしつつ心の中で笑う。


「さっきの攻撃の時に伝言を書いた剣をどこかへ隠したみたいだけど……。見つかると良いね」

「えっ!?」


 暗黒騎士の言葉に心の中で笑っていたシェンナは絶望する。


(嘘……。見破られた。悔しいけど後は兄さんに渡した笛だけが手がかりになる。それに賭けるしかない)


 シェンナは悔しいと思うがどうしようもなかった。


「捕えさせてもらうよ」


 その言葉にシェンナの体が再び震える。

 捕らわれた女性がどんな目に会うかわからない訳ではない。

 嬲り者にされる事を想像してシェンナは絶望する。

 この暗黒騎士の素顔を見たが大人しそうな顔の奥底にいやらしい心を隠しているのを感じた。

 踊り子をしている時に何人もの男の視線を浴びて来たシェンナにはそれがわかる。

 きっと、言葉では表せないようないやらしい事をされるのだろう。

 暗黒騎士が右手を上げる。

 するとシェンナの体から力が抜けていく。


「兄さん……」


 シェンナはそう呟くと意識が闇の中に沈んでいくのを感じた。



★★★★★★★★★★★★後書き★★★★★★★★★★★★


 アサシンの語源は大麻ハシーシュからであり、アサシンキャラを作るのなら薬物は欠かせないですね。

 

 そして、変更点があります。

 アサシュの霊薬についてで、元は「ガーミの熊達が飲む魔法の果実水を魔術師ゲタフィクスが改良した物であり、勇者アステリクスが愛飲している」をなくしました。

 なぜかといえば「勇者のリキュール」というアイテムを別に作ろうと思うからです。


 まあゴブリンの設定と同じく、元ネタがあります。

 もしもの時は変更するつもりです。

 ちなみに元ネタは日本ではあんまり知られていないです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る