第17話 ストリゲスの塔2
風の魔法を使いシロネ達はストリゲスの塔に着く。
「あれ? どうしたのみんな?」
シロネは後ろを見るとそのほとんどが地面に膝を付いている。
中には倒れている者もいる。
「あ……あまりの……は……速さ……についてこれなかった……ようです」
レンバーが粗い息を吐きながら言う。
その後ろのガリオスもきつそうだ。
「あちゃー。ごめんなさい。一気に行き過ぎたみたい」
シロネは謝る。
(もう少し気を使わないといけないなあ。チユキさんにも言われていた事だけど)
シロネはチユキの言葉を思い出す。
「周りをもっと気遣うべきだわ。この世界の人間は私達よりも弱いのだから」
それがチユキの言葉だ。
シロネ達はこの世界の人間よりもはるかに強い。
だから、シロネの魔法についてこれない者もいる。
気遣いが足りなかったと反省する。
(あれ?)
そこでシロネは気付く、約1名平気そうな者がいる事に。
名前を憶えなかった自由戦士の1人だ。その人物は顔を布で隠しているが平気そうであり、横にいるニムリを介抱している。
(へえ、やる奴もいるじゃん。後でもう一度名前を聞いてあげよう。だけど、今は先に進みたいわね。介抱は彼に任せて私は先進もう)
シロネはそう判断する。
「仕方がない。みんなここで休んでいて、私は先に行くから」
介抱をその1人にまかせてシロネは塔の門に近づく。
門は前来た時同じく閉まっている。
「あれ? もしかして結界……?」
シロネが以前に来た時とは違う、何かしらの魔力を感じる。
探知を阻害する結界が張られているようだった。
チユキならもっと詳しくわかるかもしれないが、シロネにははっきりとした事がわからない。
しかも結界を張った者はかなり強力な闇の力を持っているように感じる。
「まさか本当にここにいるの?」
だとしたらわかりやすすぎる。だが以前に会ったストリゲスにはこれほど強力な魔力を感じなかった。
「シロネ様どういたします?」
ふらふらになりながらレンバーがやってくる。
シロネだけを行かせるわけにはいかないと無理をして付いて来たようだ。
「もちろん行くわよ。前回は空から入ったけど、今日はあなた達がいるから正面から入りましょう」
実は前回シロネ達は塔の最上階にあるストリゲスの居住区にしか入っていない。
ナオの探知でもアンデッドの気配しかなく、生命反応がなかった事からストリゲスを全て倒したと思って、そのまま帰ったのだ。
そのため中にはまだアンデッドや侵入者撃退用の罠が残っているはずであった。
(だけど、探索に来た以上、まだ見ていない居住区から下の部分を探索すべきよね。またメンバーに空を飛べる者がいないので正面の門から入らないと)
何がいるのかもわからない。
だけど、入ってみればわかることだ。
「私は1人で大丈夫だから、危険だと思ったらすぐに逃げて下さい」
シロネはレンバー達を気遣う。
それに、正直死なれても困るので無理はしないで欲しい。
そして、シロネは塔に侵入した。
◆
(やばい! まずい状況だぞ!)
クロキがそんな事を考えるのは何回目だろう。
あの塔にはグロリアスがいる。
レンバーが慌ててガリオスの家に来たとき。
クロキはレイジ達に自分の事がばれたのではないかと思った。
しかし、どうも違うようであった。
レンバーの要請で行ってみるとシロネがいた。
シロネがいるとは思わなかったが、顔の紅い跡を隠すために顔を隠しておいてよかったとクロキはほっと胸を撫でおろす。
そして、シロネの態度からレーナがレイジ達に何も伝えていない事がわかった。
しかし、別の問題が発生した。
このままではシロネとグロリアスが鉢合わせてしまう。どうにかしなければグロリアスがシロネに倒されてしまう。
しかし、クロキは良い考えが浮かばないまま塔まで来てしまった。
「クロ殿……すみません……」
ニムリが自分に謝る。
この塔に来る時に脱落しそうになっていたニムリをクロキは引っ張ってきたのだ。
クロキは周りを見る。
全員が荒い息を吐いている。
(自分達に比べてこの世界の人間は弱い、大丈夫だろうか?)
クロキは心配する。
だけどシロネは動けない者達を置いてさっさと塔の方に向かった。
もう少し労ってやって欲しいと思うがシロネの性格では無理だなと思った。
シロネは気が回らない事が多い。
クロキは昔の事を思い出す。
小さいころからシロネは動き出すと周りが見えなくなる。
付き合わされるクロキはそれで良く酷い目に会った事がある。
(だけど今となっては良い思い出だな……)
おそらく、ストリゲスを退治する事で頭がいっぱいなのだ。
もしシロネがグロリアスに出会ったら喜んで退治するに違いない。
シロネを竜退治の英雄にさせるわけにはいかなかった。
クロキが見るとレンバーやガリオスもようやく動けるまでに回復したようで回復した者から順次シロネの後を追う。
当然クロキも付いて行く。
(さてどうしようか? 何とかしないと)
クロキは懐の首飾りをにぎり考えを巡らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます