中はどうなってるのかな?①遠心クラッチ周り

 メーターに表示された距離数は八万六千キロ強、排気ガスからはオイルの焼ける匂いと煙。内部からジャラついた音が聞こえていたジャンクのスーパーカブのエンジン。もちろん整備歴は不明です。


「想像するだけでぞっとしますが、中の様子を見てみましょう」


 私がスーパーカブ趣味を始めた頃、キャブレター時代のスーパーカブは安価で中古部品を購入できました。その後、ホンダモンキーが生産終了した頃から古いスーパーカブに価値が出始めて、現在キャブ時代のスーパーカブのエンジンで、程度が良いものを買おうとすると相場は三万円以上でしょうか?


「幸いな事にこのエンジンは実動エンジンでした。細かな消耗や破損は有りますが、焼き付きなどの致命的なトラブルは起こっていないでしょう」


 ただし、私が修理する際に乗った時、パワーダウンが感じられました。


「パワーダウンの説明は『大島サイクル営業中』にて店主がしてくれていますのでそちらを参照してね♡ とか言って宣伝したりします」


 パワーダウンはさておき、『エンジンオイルを交換しても全くキレイにならない』のですからエンジン内部は相当汚れが溜まっていることでしょう。スーパーカブの遠心クラッチには遠心式フィルターが設置されています。ところがこれはクラッチ側のカバーを開けないと掃除できません。


「乗りっぱなしで十年以上となればスラッジが溜まり切っているでしょう。本当はヘッドを取り外すのが先ですが、今回はクラッチ周辺を見てみましょう」


 右側のクランクケースカバーを外すと遠心クラッチ周辺が露わになります。オイルポンプの吸い込み口付近に金網が有るのでチェックします。


「金網に金属片が有れば大ピンチです。内部に破損が有るかもしれません」


 細かな部品を外してビス四本を外してクラッチカバーを外すと遠心式オイルフィルターにアクセスできます。


「おおっと、これはいけません。クラッチ内にスラッジがてんこ盛りです」


 てんこ盛りと言っても盛り上がってるわけじゃないですよ。オイルフィルター部分にスラッジがガッチリ固まっています。ただ、スラッジが詰まっているのは使い込んだカブでは普通の事です。遠心クラッチアッセンブリーを取り外そうとナットを外した時、前回整備したメカニックのミスがわかりました。


「皿ワッシャーが逆に組まれています」


 これでクラッチに整備歴があるのがわかりました。おそらく今までに最低一度はクラッチの脱着をしているのでしょう。


「今回はこのクラッチは使わず強化クラッチを組みます」


 強化クラッチと言ってもスーパーカブ九〇用の純正遠心クラッチです。


「八八㏄ならカブ九〇用で大丈夫でしょう。もしも駄目ならクリッピングポイントのカブ九〇用強化クラッチキットを組みます。それでも駄目なら部品取りエンジンに付いていたタケガワの強化遠心クラッチを組みましょう。自分のバイクに使うエンジンだからダメだったら交換すればOKです」


 シリンダーストロークの違いはありますが、排気量自体はほぼ同じなので大丈夫でしょう。今回外した遠心クラッチは掃除して予備として保管しておきたいところですが、クラッチ板は摩耗限度に近く、いくら掃除してもスラッジによる黒い汚れが落ちません。暇を見てコツコツと掃除するつもりですが、使うかどうか迷っています。傷を付けずに外せたので汚れさえ何とかなれば再使用したいのですが……。


「さて、何となく内部の様子が見えてきました。次はシリンダーヘッドを外してチェックしてみましょうかね」


 次回はシリンダーヘッド・シリンダー・ピストンをチェックします。エンジンの『腰上』と呼ばれる部分です。今年中にどこまで作業できるかわかりませんが、ボチボチと作業しようと思います。


※キャブレター時代のスーパーカブには二種類のオイルフィルターが付いています。私は遠心クラッチ内の遠心式オイルフィルターを『オイルフィルター』と、エンジン下部にある金網状のフィルターを『オイルストレーナ』と呼んでいます。

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