俺の厨二病的魔術知識は、異世界のガチ系魔術知識だった模様です。

@Chibakansai

第1話 序章


 少女の前には絶望が広がっていた。


 目の前に居るのは複数の異形。

 幼児程の体躯に、薄く汚れた緑色の肌。尖った鼻と、知性を感じさせない醜い顔。


“ゴブリン”


 現在、世界を席巻している七柱の魔王の一柱いっちゅう、繁殖王ドゥヴロブニクの最下位の眷族だ。


 臆病にして虚弱。本来ならばしたる驚異にも成らない筈のゴブリンだが、彼等は今、繁殖王の統制下にあり、その力は侮れる物では無い。


 繁殖王の統制下にあるゴブリンは、それ以外のゴブリンと比べて高い能力を宿しており、その膂力は一般的な成人男性に近い程だ。


 しかし、彼等の真の驚異は他にある。


 ――そう、“繁殖王”のあざなが示す力。異種間での交配能力が――


 少女は瞳を閉じて、唇を噛み締める。

 本来ならば、この程度の数のゴブリン等、魔術師ソーサラーである彼女にとって驚異とは成らない。

 しかし、ここに至る迄に彼女の魔力は枯渇しており、どうする事も出来なかった。


「……うっ……!」


 思わず嗚咽が出てしまう。こんな結果は決して望んでいなかった。父の言う通り、大人しく冒険者に依頼するべきだったのかも知れない。しかし、そうすれば妹の命が助かる見込みは極めて低く成っていた筈。

 

 結局、この結果は“成るべくして成った”に過ぎなかったのだ。

 

「グルバァァ…!」

 

 欲情にまみれ、醜い顔を更に歪ませるゴブリン達。

 その醜い欲望を少女にぶつけるべく、ゆっくりと近付き、――そして動きを止めた。


 絶望が訪れない事に疑問を抱いた少女は、ゆっくりと目を開ける。


 ゴブリン達の視線は、彼女を通り過ぎ、その後方へと向けられていた。


 そこにいたのは、全身鎧フルプレートに身を包んだ騎士らしき人影。

 そして騎士を従える、ローブを着た一人の少年だった――



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