Get over
第139話 ジェラシー(1)
「おはようございま~す!」
翌朝、夏希が元気に出勤すると、
「おはよ、て、なに? ・・・ニホンゴワカリマスカ~?」
志藤が夏希を見て笑いながら言った。
「はあ??」
「って感じやぞ。 めっちゃ灼けてんなァ~、」
「ま、夏ですからね。 コレ、母が持たせてくれたお土産です。 ほんっと重かった。 みなさんにも、」
夏希はテキパキと持ってきた土産をみんなの数だけ振り分けた。
その後、志藤は秘書課に行くと、
「おまえも嫌味なほど灼けてるな、」
高宮を見て開口一番そう言った。
「・・気にしてるんで、それ以上言わないでください。」
恥ずかしそうに顔を隠しながら言う。
「加瀬も東南アジア系みたいになってたぞ、」
「はあ、」
「まあ、楽しいバカンスが目に浮かぶし。 良かったなあ、」
ウンウンとうなずく。
「ニヤつくのやめてください。」
恥ずかしそうに背を向けた。
そこに
「あ、高宮さん。 お休みの間に、想宝の社長秘書の宮沢さんから電話があって。 例の契約の原案、まだですかって、」
秘書課の女子社員にそう言われ、メモを見せられたとたん、高宮の顔色が一変した。
「あ・・」
休みの1ヶ月前くらいにお盆明けにって言ったんだっけ。
すっかり忘れてた!!
いきなり慌て始める。
しかも
書類がない!!
デスクを漁り始めた。
もうパニックだった。
社長はまだ休暇中だし、
こんなん忘れておれは図々しく休みに入っていたのか!
自分が恥ずかしくてどうしようもない。
「ほんっと! 申し訳ありませんでした!!」
映画配給会社・想宝の社長秘書、宮沢アカリにすぐに電話をした。
「まだウチの社長も北都社長がお休みから出てこられるまではこの話を進められないことはわかっているので、」
彼女は困ったようにそう言った。
「しかも、書類の下書きを紛失して・・」
さらに申し訳なさそうに言う高宮に、
「え・・」
さすがに彼女も呆れてしまった。
「言い訳はしたくないんですが、ちょっと、煩雑なことばかり続いて。」
「大丈夫です。 私、メモ程度のものなら取ってありますから、それをもとに、」
彼女が明るく言ってくれたので、
「あ、ありがとうございます!!」
その声が天使のもののように聞こえた。
さっそく想宝まで出向いた。
「ほんとメモ程度ですが。」
アカリは高宮にそれを手渡した。
「いえ、十分です! ほんっと助かります。」
高宮は彼女に勢いよく頭を下げた。
「高宮さんが珍しいですね。」
彼女はニッコリ笑う。
「ちょっと、ほんっといろいろあって。」
夏希のことで悩んでいて仕事も手につかない状態だった時だった。
「契約書は全部で30ページほどあるかなりのものですが、」
「やるしかないです。 以前のものを参考にして。」
「リミットは3日後です。」
「はい、」
「私もできるだけお手伝いします。 5年前の契約書、本当はいけないんですけど、資料室から持ってきてコピーしておきます。」
彼女は高宮と同い年で、アメリカの名門大学に留学をしていた才女だった。
いや、才媛・・だった。
かなりの美人秘書で
業界では評判で。
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