第102話 愛するということ(2)

好きだって


気持ちを


昇華させようとすると


男と女は


こうやって


抱き合うんだ。



ベッドの上に倒れこんで


何度も何度もキスをして


狂おしいほどに。



彼の手が


胸に降りてきて


優しく動く。



「ん・・」



怖くない


だって


あの時と違って


彼の目が本当に優しいから。



好きな人に体を触られるって


本当に


気持ちがいいことなんだ。




夏希はだんだんとそう思い始めていた。



高宮は気を遣って、部屋の電気を落としてサイドランプだけにした。


そっと服を脱がされて



恥ずかしくなって、目をぎゅっとつぶった。



「・・ボタンを、」


と言われて、


「え・・」


目を開けた。


「外して、」


自分の着ているシャツを脱がせて欲しい、と言う意味だということがわかって、


「は・・はい、」


緊張しながらボタンを外した。




ドキドキして手が震える。


彼はシャツを脱ぎ捨て、また夏希を抱きしめた。



体に直接触られて、キスされて。



「あっ・・」


思わず声が出る。


この前は怖くて声も出なかった。



いつの間にか彼も裸になっていて、目のやり場に困る。


男の人の体が


こんな風になってるってこと自体


もう驚きで。



「ねえ・・」


「え・・」


「どこにあるの?」


「は??」


緊張がピークに達した頃、意外な言葉を発せられて夏希はきょとんとした。



「だから・・お母さんがくれたっていう・・アレ、」


「は・・あ・・ああ・・」


何とかその存在を思い出し、


「そ、そこの引き出しの、一番上に、」


ベッドサイドの引き出しを指差した。


もう目が回りそうだった。



ほ・・


ほんとにするんだ。



夏希は自分が言い出したくせに、やっぱり怖くなってしまった。



だけど


高宮は彼女の体を労わるように、優しく優しく愛撫した。



彼の手が下半身を這った時、一瞬体を強張らせる。


「・・痛い?」


と言われて、



「いっ・・いえ。」


事務的に答えてしまった。



死ぬほど


恥ずかしい。


こんなところ


自分でさえもどうなってるか、わかんないってゆーのに。



そして彼の手が内腿にかかった時、ビクっとして思わず彼の二の腕をぎゅっと掴んでしまった。



「あ・・あのさ、」


「へ??」


「・・首は絞めないでね、」


高宮は真剣な顔で言う。


「く、首??」



何を言い出すのか、この人はと思いつつわけがわからないまま頷いた。


その時。




いっ・・!!



夏希はまたもその痛みに


目をぎゅっとつぶって、歯を食いしばって堪えた。


「い、痛い?」


高宮はあまりの彼女のリアクションに心配そうに言った。



「い・・・」



痛いけど


痛いけど。



夏希はそれを必死に我慢して、



「・・だっ・・大丈夫ですから。 つ、続きを、」



続きをって、


こんな状況なのに高宮はおかしくなって吹き出しそうになった。



そして、体を彼女に深く預けた。



「んっ・・」


夏希はそれに耐えながら、彼の肩に置いた手にものすごい力をかけた。



「く、首は、絞めないでってば!」



高宮は半ば本気で言った。


「へ??」


夏希は目を開けて自分の状況を見てハッとする。



あまりに彼の肩を力を入れて掴んでいたため、もうちょっとで両手で彼の首を絞めそうな格好になっていた。



「すっ・・すみませ・・ん、」


慌てて手を離す。



そんな彼女が本当にかわいくて。


高宮はそっと彼女にキスをする。

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