クイズセンタクシ

T_K

さあ、貴方の選択肢は何ですか!

やり直したい。


今まで、何度そう思った事か。


けれど、今回は心の底から思った。


あの時の選択を間違っていなければ、今こんな風にはなっていなかった。


体力も、気力も最早疲れ果て、糸の切れたマリオネットの様に、


最終電車の座席に着く。


最寄り駅までは45分。少しくらい眠っても良いだろう。


そう思うまでもなく、いつの間にか眠ってしまっていた様だ。


ぼんやりとした意識で、今がどの駅辺りなのかを探り始める。



やけに静かだな。そう思うと共に、眩しい光が目に差し込んできた。



「おはようございまーす!漸くのお目覚めですね!」



派手な衣装に蝶ネクタイをつけた男性が、突然目の前に飛び込んできた。


それと共に、けたたましい音楽が鳴り響く。



「貴方のお名前は?」



マイクを向けられ、戸惑う俺。男性は続ける。



「いいんです!貴方のお名前は既に知っていますから!


マイクを向けられてー。それでも答えない!それも一つの選択肢!」



何故コイツはこんなにテンションが高いのだろうか。


それよりも、ここは一体どこなんだろうか。俺は確かに電車に乗っていたはずだ。



「まだまだ、混乱のご様子ですが、そんなツキカゲさんにご説明致します!


ここは、貴方の悩みを解決出来る唯一の場所。


それが、クイズセンタクシなんです!」



きっとバカな夢なのだろう。そんな気がしてきた。


もし夢なら早く起きないと最寄り駅を過ぎてしまうかもしれない。



「そう!そうです!当番組は多分貴方の夢の中の出来事。


そう思う事も素敵な選択肢!」



夢だからか、俺が思う事は勝手に向こうに伝わる様だ。


本当に早く起きないとマズイかもしれない。



「立ち去って頂いても構いませんが、当番組への出演権はお一人様一度限りです。


が、しかし!立ち去るのもそれはそれで素敵な選択肢!で・す・が、


貴方が後悔された事、その選択肢の答え。知りたくはありませんか?」



選択肢の答え?それはどういう意味なのだろうか。



「もし、貴方がクイズに挑戦なさるなら、


今までの選択肢の答えを知る事が出来ます。


さぁ、貴方の選択肢はーどれですか!」



よし。どうせ夢ならとことん付き合ってやろう。乗り過ごすのは覚悟の上だ。



「おーけー。それは素敵な選択肢です。


では、本日クイズに挑戦なさるツキカゲさん。


貴方の今までの選択肢をご覧いただきましょう!」



目の前に、突然スクリーンが現れた。夢だから本当になんでもありなんだろう。


今まで起きた事がどんどんスクリーンに映し出されていく。


こんなにも、俺は色んな選択をしてきたという事なのだろう。


勿論、今日選んだ選択肢の答えが一番知りたい。


と、ついさっきまでは思っていたが、


いざ振り返ってみると、他にも答えが知りたいものは山ほどある。



「残念ですが、ツキカゲさーん。


どの選択肢に挑戦するかは、番組側で決めさせていただいているのです。


こちらにも色々と都合がございまして」



夢なんだから、そういうルールなんてどうでもいいだろう。



「まぁまぁ、そこはあくまでクイズ番組の体で進行している以上、


従っていただかない事には。


別に私といたしましては、失格という事でもよろしいのですが」



わかったよ。豪に入れば豪に従えって事だな。

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