Geister【←】
蒼城ルオ
第1話
殆どの部活動が終わり制服姿が三々五々と散っていく校舎。逆らうように廊下を歩き、見えた背中に声を張る。
「先生! 書類運び、手伝いますよ」
ゆったりと振り向いた細面の顔はそのままの速度で唇を笑みの形に変え、頷く。
「ありがとう。……最近随分熱心に部活やってるけど、何かあるの?」
文系クラスの小テストだと知れる紙の束を半分受け取りながらの台詞に、溜息ひとつ。三日前に職員室で顧問とあれだけ騒いでいたというのに、この人の中では日常に紛れる雑音でしかなかったらしい。その後の何気ない雑談も。
「本っ当、興味ないことは知る気ないですね。大会、勝ったって言ったじゃないですか」
「そうだったそうだった」
軽い声音は、確実に思い出していないそれだ。眉を寄せて、そのまま前を向く。夕方の空気に、柔らかい声が生まれる。
「頑張れ」
そんな一言でどうでもよくなってしまうのだから、この人はすごいしずるい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます