Geister【→】

蒼城ルオ

第1話

 其処彼処で部活動の終わりを告げる声が聞こえ始める頃を見計らって職員室を出る。やがて近づく足音が、必ず声をかけてくると知っている。

「先生! 書類運び、手伝いますよ」

 校則に反していないという言い訳が立つ中の最速は、息を整えながら来るには速過ぎたらしい。上気した頬に目を細める。

「ありがとう。……最近随分熱心に部活やってるけど、何かあるの?」

「本っ当、興味ないことは知る気ないですね。大会、勝ったって言ったじゃないですか」

「そうだったそうだった」

 同学年の小テストの答案の半数を躊躇いなく預けている意味が分からないはずもないだろうに、溜息と共に紡がれる言葉につい、からかいを滲ませてしまう。こうして、勝ち進んだ喜びを顧問と分かち合うという当たり前のことへの意趣返しをしているのだから、子供じみているのはどちらだという話でもあるけれども。だからこそ、続く激励だけは柔らかく。

「頑張れ」

 前だけを目指す瞳が、今隣にあるものを忘れてしまわないように。

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