第19話 孤独なセーバル

空からは日の光は消え、代わりに銀色の色が地に降り注ぐ。煒、碧、銀の砂が散りばめられた夜空は美しく、深い濡れ羽色の空間の中に道しるべのようにキラリと輝いた個性豊かな天文学的数字ある星達は、過去の姿をここに見せていた。

星は寂しくない。一人じゃないよと伝えるように空を埋め尽くすが、それはあまりに遠い故、返って孤独を催す。

偉大なる太陽は既にその姿を隠し、この地には寒さが訪れる。

セーバルは座り込み、その孤独感と寒さに打ち震えていた。


……一人で居るのは、久しぶり。


余計に寒さを感じたセーバルはそれから逃げるように立ち上がって足を進める。

早く、早く、今すぐ誰かに会いたい。

その想いが強くなればなるほど、セーバルの足は早くなり、次第に疾走となる。


「はぁ、はぁ…!」


目に涙は溜まり、雫がツーっと頬を伝っても、セーバルは走り続ける。

一人じゃない。みんなが居ると信じて、そのみんなの元へ帰りたいと願い縋り、走り続ける。

無理をして、息は舞い上がり、額にシワが強く浮かび出ても走り続けた。


そして遂にセーバルは自分の縄張りに辿り着いたのだった。安心感と共に脱力感に襲われて、セーバルはストンと座り込んだ。息は荒く、はぁはぁと何度も浅い呼吸をする。

体を汗でびっしょりと濡れて、首筋にも浮き出て流れ落ちる。

セーバルはそのまま寝転んで、ジッとする事にした。ゴロリと体を崩し、横になった。


少し物を考えれるようになってきて、再び強い孤独感に襲われた。


「寒い…」


心が強い力で握り締められたように、痛くなる。悲しみが溢れて涙がなだれ込む。

限界だった。


「ひっぐ…っ……サーバル…!」


無意識に口は大切な友の名を呼んでいた。

嗚咽をしながら、辛うじて呼んだその名前は、ただこの夜の暗闇に響くだけ。

セーバルは絶望し、寒さを凌ぐために体を丸める。

誰か来て欲しい。誰か温めて欲しい。誰か一緒に笑って欲しい。そんな願望を抱き、一人宇宙に放り出されたような感覚がして、声をあげて泣こうとしたその時だった。


「セーバル?さっき呼んだかな?なーに?」


そこにはあのサーバルがいた。

とても優しくて、セルリアンで、サーバルの特別を奪った自分を友達だと言ってくれて、塩を全部飲み込んでまで自分を救おうとしてくれたこの上ない最高の友が、そこに居た。


「サーバル!っ、さーばる!」


「な、なになに!?どうして泣いてるの!?」


直ぐにサーバルが駆け寄って来て自分の背中をさすってくれる。頭を撫でてくれる。

それがとっても温かくて、とても優しさを感じて、まるで太陽がそこにあるようだった。

気がつけば涙は既に止まっていて、孤独感も無くなっていた。代わりに表れたのはあの猫のように甘えたいという気持ちであった。


だからセーバルはサーバルに飛び込んだ。

驚いたサーバルはそのままセーバルに押し倒されてしまった。

セーバルはそのままサーバルに頭を置く。

柔らかい感触と共に聞こえて来たのは一秒ごとになる心臓の音。

彼女はもっと安心したい、もっとあったかくなりたいと考えて、サーバルを抱き締めた。


サーバルもなんとなく察していたのだろう。

セーバルが寂しくならないようにサーバルも彼女を抱き締めて、頭を撫でたり背中を撫でたりしていた。

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