第17話 君の笑顔が好きだから!

「すみません…こんなに泣いてしまって」


「ううん、気にしないで!それより、どうかな?この帽子」


ミライさんは受け取った帽子を大事そうに撫で、頭にかぶると幸せそうに笑った。


「はい!とっても良い帽子です!本当にありがとうございます…!」


「さ、食べ物も用意してるんです。みんなで食べませんか?」


「はい!」


今日はとても良い日です!

まさかこんなサプライズやプレゼントが待っていたなんて…!

私は本当に幸せです!


……しかし、あの事もいつかはみなさんに言わなくてはいけません。

が、それは今でなくても良いですよね?


折角こんな楽しいことをしているのですから、今は思う存分楽しんじゃいましょう!








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「今日は本当に楽しかったです!ありがとうございますみなさん!」


「こっちも楽しかったよ!ガイドさん!」


美しく煌めく星たちが散りばめられた藍色の空の下、そこに彼女達はいた。

皆笑い合い、面白かったことや今日の出来事や、色んな事をお喋りしている。

とても楽しい、いつまでもこうしていたい。しかし、時間は過ぎていき、翠と緋の羽根を付けた帽子をかぶったミライは次第に顔を俯かせていった。


「あははは、それでね!それでね……ガイドさん?どうしたの?」


「ぁ、え、あはは、なんでも…」


いつまでもこうして居たい。何も考えずに、ただみんなと楽しい時間を過ごしたい。しかし、それはもう終わりだ。

なかなか踏み切れないミライに、園長は背中を押すように言葉を発する。


「みんな、少し聞いて欲しいことがあるんだ。」


「?、なにか、ありましたの?」


フレンズ達が互いに顔を見合わせ、何がミライを見つめる。そして、口は開かれた。


「みなさん、大事な話があるんです。」


……………、静寂に包まれ、キリキリと虫の声がする。少しの風に草木と羽根は揺れ、月光に照らし出された影も同様に、揺れる。


「実は、……あと一ヶ月経てば、ここを離れなければいけなくなるんです。」


沈黙、フレンズ達は口を開ける。何を言っているのか理解できない、いや、耳が正確に聞き取ってくれなかった。それ故、サーバルは尋ねた。


「え、えぇっと、ごめん。ちょっと聞き取れなかったよ。」


「一ヶ月後、私はここを離れねばなりません。」


「ど、どうして!?もしかしてガイドさん辞めちゃうの!?」


「そんな!、ありえません!…すみません、少し言葉が足りなかったですね。離れるというのもこのパークから、では無くこのゴコクエリアからなんです。」


その言葉に安心したサーバルはホッとした顔をした。


「よかった〜、ずっとお別れじゃあないんだね!それで、いつ帰ってくるの?どこに行くの?」


「パークセントラルです。期間は…一体どれくらいになるのか分かりません。」


「パークセントラル!?ホントホント!?ガイドさん!私も連れてってよ!」


「ルルも!ルルも!!」


意外にも、フレンズ達は悲しむわけでもガッカリするわけでもなく、ただ笑顔でそこにいた。ミライはこの状況が理解できずにいた。

その時である。


「ねぇねぇガイドさん」


「なんですか?サーバルさん」


「そんな難しい顔しないでもっと笑おうよ!ね!」


「そうですよ、ガイドさん。ずっとお別れという訳では無いんですし、笑顔になりましょうよ。みんな、笑顔が大好きなんだから」


ミライは少しポカンとしていたがやがてその顔は徐々に笑顔となり、いつものミライさんが帰ってきていた。


「はい!」


黄色く光る月の光に包まれて、彼女達は笑い合った。理由なんていらない。ただ好きだから笑うのだ。

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