第4話 みんなはどこ!
「……バレないかな?」
「ダメですよ、みんなこっちを見てます…。」
サーバルはここでスムーズに動けるように、変装をしようとしていたのだが、出来そうなものが少女の持っていたキャップぐらいしかなく、それもサーバルの耳が邪魔して被るには常に耳を押さえる、つまりずっとキャップを頭の上から押さえる必要があった。当然目立つ。
しかしこれ以外に手段は無いので今サーバルは頭を常に手で押さえているのだった。
更にサーバルの服はフレンズの服のままなので帽子を被っただけでは変装は完璧にはならなかった。
「うーん、みんなのところまで無事に着けるかな?」
「サーバルさん!あれを見てください!」
そこには多くの人だかりができていた。どうなってるのか遠巻きに見てみるとどうやら今日はセールをやっていたらしく、やたらと客が多いのはこれが原因そうだった。
「あれを通り抜けるのは厳しいよね。迂回するよ!」
今通ってきた道を戻ろうとするサーバルは振り返ったところで予想外の人物に出会う。
「サーバル、やっぱりここにいた。」
「セーバル!?どうしてここに…。」
そこにはセーバルが居た。
「ちょっと逃げて来た。ところでどうして途中からどこかに行っちゃったの?」
「え、えぇっと…な、なんでだろー?ふしぎだなー。(猫じゃらしに釣られたなんて死んでも言えないよ!)」
「………、そういえばさっき猫じゃらしを見た。体が勝手に動いて遊んだけど、サーバルも?」
「!?、(せ、セーバルもやっちゃったんだ…)セーバルもあれに釣られちゃったんだね。」
「うん、そうだよ。」
「そういえば、逃げて来たって?」
「さっきまで厄介者から逃げてた。」
セーバルは口をへの字にしてムッとすると後ろの方をちらりと見る。
「セーバルの後ろを見たら分かる。」
「え?」
「は、は、はわわわわ、サーバルさん!すごい人が追いかけて来てます!」
「え?え?え、ええええええ!なんでー!?」
「途中でサーバルの気配を感じたからここに来た。だから振り切ってサーバルの元に行こうと思ったけど、振り切れてなかった。」
なんとセーバルの後ろには多くの人が雪崩れ込んできていた!
「そ、そんなぁ!せっかく振り切ったのにに!またなの!?」
今までの苦労が水の泡になってしまったサーバルは涙を流す。
「さ、サーバルさん!逃げましょう!」
「う、うん!とりあえず、あっ。」
そこでサーバルは思い出した。
自分たちが引き返そうとした道の先にも人がたくさんいることを。
「ぎにゃあああ!?つ、詰んでるーっ!」
絶望したサーバルはがっくりと膝をついてしまった。
少女はどこかに逃げ道がないか必死で周りを見渡す。
自分たちの後ろにはセーバルが連れて来た大勢の人がいる。その逆にも大勢の人。道の左側には店があり、右側にはガラスの柵が敷かれていた。今いる階は3階であり、飛び降りる事などもちろん出来ない。
つまり…
「に、逃げ道がありません…。あぁ、そんな。」
「あはは、ごめんね。キミを助けられなかったよ。」
「そんな!私はもうサーバルさんにいっぱい助けてもらえました!だから…、今度はわたしが助ける番です!」
このままだと間違いなくサーバルとセーバルはもふもふされてしまうだろう。そうなってはまた尻尾を踏まれたりするかもしれない。
ジャンプして逃げようかと考えたが、よくよく思い出してみるとあの時偶然人が少し離れていたのだ。だから出来たのであって、もし至近距離に人がいたら蹴ってしまうかもしれないからジャンプは出来ない。またあの偶然があるとは思えない。
なんとかしてここから今すぐ逃げなければサーバル達が危ない。
それに…サーバルには大きな恩がある。自分を勇気付けてくれて、ここまで連れて来てくれたのだ。
今ここでその恩を返さないといけない。
少女はどうすればここから逃げられるかを必死で考える。考えて考えて…でも思いつけない。
もう一度周りを見回す。
すると、サーバルが目に映った。自分を見つめて、目をまんまるに見開いている。大きな耳はピンっと上にまっすぐ伸びていて、その姿はまるで猫であった。
「…そうだ!サーバルさん!飛び降りましょう!」
「飛び降りる?…どこから飛び降りるの?」
「あのガラスの柵を飛び越えるんです!普通の人じゃきっと死んじゃいますけどサーバルさんは猫のフレンズさんです!」
「あ、そっか!そうだね、ありがとう!じゃあさっそく…。」
サーバルは少女を抱き上げて柵の方へ体を向けて、勢いよく走った。
「よーっし!いくよー!………それっ!」
そして、大きくジャンプした。
追いかけていた人や店の前で並んでいた客はその姿に思わず手を伸ばす。
「セーバルも、じゃーんぷ!」
サーバルに続いてセーバルも大きくジャンプして落ちていった。
誰もが危ないっ!と叫ぼうとした時にはすでにサーバル達は地面、一階のエントランスのど真ん中へ足をつけていた。
ビターンッ!と大きな音を立てて見るも無惨な姿に…と思いきや、なんと音はあまりしない上にそのまま何事もなかったかのようにエントランスから走り去っていったのだ。
そんな非現実的な光景に人々は口をあんぐり開けて、ポカーンとしていた。
そしてその光景は別の誰かの目にも映っていた。
「サーバル!それにセーバルもあんなところに…!」
「うわわわわ!さ、サーバル大丈夫なの!?」
カラカルがやっと見つけたと言いたげな顔をしてサーバルを見つめていると軽くパニックになったルルがカラカルの肩を揺らして問いかける。
「へ、へーきよ!全然!だから安心してとりあえずそれをやめて!」
「あ、ごめん。」
「ふぅ…、いい?私もだけど、あの娘はフレンズで更にネコ科なのよ?あの程度別になんてことないじゃない。音が出てないのはなんでか知らないけどサンドスターがなにか影響してるんでしょう。」
「あ、そっか。ははは、さっきまでいっぱいもふもふされて頭が混乱してたよ。それにしてもサンドスターって便利だなー。」
ルルが疲れた顔で力なく笑っているとギンギツネが彼女達に警告する。
「今はサーバルの見世物を後にして、早く逃げないと捕まるわよ。」
ギンギツネが疲れ果てた目で見つめる先には無邪気に走ってくる子供達がわんさかいた。
「げげ、マーゲイめ!覚えてなさい!ほら、いくわよルル!あんた私より早いしスタミナあるんだからもっと走りなさい!」
「ふぇぇ、ちょっと待ってー!」
「………私の歌で時間稼ぎは出来ないかしら?」
「それやっちゃうとテロと間違われるから素直に逃げるわよ!」
「ちょ、ちょっとお待ちください。くぅっ、流石に疲れましたわ。これも修行不足!帰ったら修行ですわ!」
がしゃんがしゃんと音を立てながらへとへとになりつつも走ってくるシロサイ。
そんな愉快な集団は一階を目指して階段へと走って行った。
(私って走る必要ある?)
トキは心の中でそう思いながら一緒になって走って行った。
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