ガイドさんの帽子へーん
第3話 ショッピングで迷子、そして大騒ぎ!
ゴコクエリアに着いた日から一週間たった昼下がりの事。
サーバル含めた七人のフレンズたちは大きなショッピングモールの前に集合していた。
「あら?園長はどうしたのかしら?」
ギンギツネの問いにサーバルは
「園長はミライさんをわっと驚かせるような舞台を用意するからサーバルたちは帽子を買いに行ってって言ってたよ。」
と、答えた。
それについてトキが私もその舞台で歌ってサプライズをするわと言ったがみんなそれを聞こえないふりしてショッピングモールの中へと入っていった。
「ん…、随分と人が多いわね?ま、気にする必要ないか。」
入ってすぐに目に映る多くの人々、カラカルはそう言葉をこぼすのだった。
そして30分後…
「…みんな、どこ行っちゃったの?」
サーバルは迷子になっていた。
歩いてる途中に偶然、ふりふりと動くネコじゃらしを見つけてしまったからだ。
「うぅ、こんなのに釣られちゃうなんて悔しいよー!」
もちろんカラカル以外はネコではないのでネコじゃらしに釣られることはなかった。カラカルはカラカルでちらりと見たものの本能を抑えるために頑なに無視したのだ。
故にサーバルのひょろひょろっとネコじゃらしに吸い込まれるように近づいていく姿に誰も気づくことができなかった。
「どうしよう、取り敢えず帽子が売ってある場所を片っ端から回ろうかな。」
と、サーバルが考えていると突然手を握られた。
「え?」
サーバルが握られた自分の手を見るとそこには小さな少女が目を輝かせてサーバルを見つめてこう言った。
「もしかして、映画に出てるキャプテンサーバルなの!?」
「…え?」
大きく響き渡ったその声は周囲にいた人たちの目を引き寄せた。
なにが起きているのか理解できていないサーバルは取り敢えずその場を離れようとするが手はしっかりと握られていて、更にはそれがまだ幼い少女だったので無理には動けなかった。
「え?え?ちょっ、ちょっと待って!?いきなりなんの話なの?」
すっかり慌てたサーバルは取り敢えず質問を少女に投げ掛けた。
しかし、それに少女が答える前に周囲の人混みに大きなざわめきが生まれていた。
「あれってこの前見た映画のキャプテンサーバルだよね!すっげー!スターに会っちゃったよ!」
「うわー!ほんとうにおっきなお耳だ!」
「ここで会えるなんて私たちすっごく運いいよ!」
「あの映画の話は大人の私でも感動したわ…!」
聞こえてくる声の種類は主に子供の声だった。
(え、映画?…あっ、もしかしてマーゲイの!)
「見て!見て!パパママ!あのサーバルってフレンズすっごくかわいいよ!」
「か、かわい!?…ふふ、えへへへ、なんだか悪い気がしないよ、こんなに見られてるのに。」
かわいいと言われたサーバルは嬉しくなって顔を赤くして笑っていたが、やがてその赤さはなくなる。
(ううん、見られるのは当然だよ!だってこの私サーバルは、ムービースターなんだから!)
「えっへん!サインが欲しいなら並んで並んでー!このムービースター、キャプテンサーバルがサインを書いてあげるよ!」
すっかり天狗になってしまったサーバルは周りの人達に手招きをする。すると一気に多くの人が流れ込んできた。
「え、あれ?ちょ、ちゃんと並んでほしいな!」
よく見てみるとそれは子供達でどんどんサーバルの周りに集まってきた。
「うーん、並んで欲しかったんだけど、でもこういうのもアリかな!」
と言ったところ、突然サーバルは尻尾を踏まれてしまった。
「ぎにゃっ!?だ、誰?私の尻尾踏んじゃったの!踏まないで!」
少しかがんだところをすかさず子供達が飛びついてくる。
「うにゃあ!?一体なにがどうなってるの!?」
飛びついた子供達はサーバルの頭の上にある耳を触る。
「すっごーい!もさもさだ!」
「ま、待ってみんな!耳は、耳はやめて!」
耳をパタパタさせて子供達の手を追い払おうとするがその行動は愛らしさがあったため逆効果となり、更に多くの子供達が耳を触りにきた。
「うわーん!助けてー!カラカルー!」
もみくちゃにされているサーバルを見て、親たちが止めに入る。
「こ、これいじょうはいやー!」
いい加減嫌になったサーバルはジャンプをして人混みから脱出しようとするが、まだあの少女がサーバルの手を掴んでいた。
サーバルがその少女の顔をよく見ると、どことなく、周りの子供達とは違うような雰囲気を出していた。まるで救いを求めているような、そんな暗い顔だった。
「っ!」
そこでサーバルは少女をお姫様抱っこするとシュッと大ジャンプをした。
大勢の人たちを一気に飛び越えて、人が少ない方へ着地するとすぐに走っていった。
一部の子供達は親の拘束を逃れて追いかけようとするが、人混みを抜けた頃には既にサーバルの姿はなかった。
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「ふぅ、疲れちゃった。ムービースターはもうこりごりだよ。」
あの後サーバルは人が来ない非常用階段へと逃げ込んだのだった。
静かで音一つしないこの空間でサーバルは静かに屈み、ニッコリと笑って目の前の少女に聞いた。
「なにかあったの?私に教えて!」
少女はサーバルの目を見て話し始めた。
「…実は、私迷子になっちゃったの。」
「迷子になっちゃったんだ!同じだね!」
「え?」
「実はあの時私も友達とはぐれちゃってね、探そうと思ってたんだ。」
「ぁ、ごめんなさい!いきなり叫んじゃったりして…。」
「いいよいいよ!気にしないで!」
そう言って返すサーバルは、まるで太陽のような笑顔で笑っていて、少女の暗いものはすぐにそれの眩しいばかりの光でかき消された。
「…!、ありがとうございます!」
「えへへ、そっか、迷子かぁ…うんっ、一緒に探すよ!」
「いいんですか!?」
「もっちろん!困った時はお互い助け合わないとね!」
「ありがとうございます!やっぱりキャプテンサーバルさんはかっこいいです!」
少女は偶然にも、サーバルがカラカル達とはぐれたその場所で、親とはぐれていたのだ。
途方に暮れた少女は、周りを見回して親を探していた。そんな時、サーバルが目に映ったのだ。映画を見ていた少女はカラカルの悪行を止めようとしていたサーバルを正義の味方と思い、キャプテンサーバルなら助けてくれると咄嗟に体が動いたのだった。
自分を助けてくれる本当のヒーロー。サーバルの存在は少女の中で大きなものとなっていた。
故に、この後自分も同じようにこのジャパリパークで誰かを助けたいと思い、フレンズとも仲良くでき、人を案内できるパークガイドを目指すことになるのだがそれはまた別の話。
一方その頃。
「ちょっ!なんで私たちがこんなに有名になってんのよ!?」
「多分映画のせいだよー!ていうかサーバルが居ないよ!どこ行っちゃったのー!?ラビラビ助けてー!」
カラカル達ももみくちゃにされていた。
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