偶像少女の鎮魂歌

桜木 彩

序章:幻想曲『懐古』

 私は、小さい頃から同じ夢を繰り返し見ていました。

 それは…焼け崩れた石垣に囲まれて、1人の少女が広葉樹を背に立っている夢でした。

 暖色系の色で染まっている石垣なのに、とても冷たくて悲しい気持ちになるあかでした。

 少女の着ているワンピースは、夕陽にを浴びて茜色に染まっていました。


 少女は、私の知らない言葉で歌っていました。

 聞きなれない言葉に、聞きなれないメロディーの歌でした。

 どう見ても戦地なのに、まるで少女の澄んだ声色に護られているかの様に、周囲の草花は紅く染まっていなかったんです。


 しばらくすると、1羽の橙色の尾長鳥が少女の肩にとまり、何か話している様でした。

 すると、少女の表情が一瞬で花の様に綻びました。

 その様子を嬉しそうに眺めていた鳥は、少女が頭を撫でてあげると、一声鳴いて飛び去って行きました。

 飛び去って行く鳥は藍色でした…。


 私は、その光景を眺めながら目を覚ますのです。

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