【短編】さくらちゃん、がんばる
たはしかよきあし
なんだか眠れない夜に
夜更けすぎに、さくらはなんだかそわそわして目を覚ました。いてもたってもいられない、そんな不思議な気分だ。
さくらのとなりには、まだ京一郎が眠っている。会社から帰った格好そのままで、昨日はつかれて寝てしまったようだった。さくらはその横顔にやさしくキスをした。起こしてしまわないように、そっと。
さくらは目をこすって、少しだけ伸びをする。すっかり目も覚めてしまった。
どうしよう。これから何をしようかな。
さくらは五歳の女の子だ。小さなアパートで、京一郎と一緒に暮らしている。でも、最近京一郎は忙しくて、帰ってくるのも遅いし、帰ってきたら帰ってきたで、さくらにかまう間もなく眠ってしまう。すごくつまらない。休みの日も、京一郎は「おうちの仕事」があるようで、ぜんぜんさくらは遊んでもらえない。
さくらは、そうだ、とひらめいた。
さくらが京一郎のお仕事を手伝ってあげればいいんだ。そしたら、空いた時間でさくらと遊んでくれるもの。
決まりだ。今夜は京一郎の代わりに「かじ」をしてあげよう。寝ている間にお仕事が全部終わってたら、京一郎はきっと喜ぶに違いない。さくらはおどろく京一郎の顔を思い浮かべながら、ベッドの上から軽やかに、たっ、と降り立った。
京一郎のために、いつも何かしてあげたいと思っていたけど、小さいさくらにはなんにもできなかった。だけど、不思議と今日はなんだってできる気がする。なんだか力が沸いてくる。京一郎のためならなんでもできる。そう思った。
長いこと京一郎と一緒にいるけれど、実はさくらは一度も「かじ」をやったことがない。楽しそうに「かじ」をしている京一郎のそばに寄ると、京一郎はいつも「後で遊んであげるから」とさくらをよそにやってしまう。
だからさくらは京一郎がいつもやっていたことを、うーんと一生懸命思い出す。
まずはたしか……お掃除だ。
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