二人で究極魔法♡勇者&大魔王

ブーバン

第1話 空から女の子が降ってきた!


「すまないが袂(たもと)を分けさせてもらうよ。」


「…え…。」


オレたちは野営のたき火を囲んでいた。

騎士のクランプがそういうと、魔導士のエミリも神官のウォルトも立ち上がった。


エミリもウォルトも申し訳なさそうに


「ごめん…ね?」


「すまん。…しかし、崇高な目的のためには…勇者と共にではないと…。」


…そう…。

勇者はオレ。…だった。

だったんだ。


ちゃんと勇者の神託を受けた。

夢で神の啓示も聞いたんだよ。


キミは勇者だって…。


そうだと思って、体も鍛えた。

剣術の試験も合格した。

魔法の修行もちゃんとした。

勇者の光の魔法だって…ちゃんと使えるんだよ。


なんで…なんでこんなことに…。


三人が去って行った後、一人たき火に小枝を入れた。

だまって火を見つめていた。


オレたちがおかしくなったのも…。

思えば、騎士のクランプが入ってからだ。


クランプはそれは優秀なヤツだ。

それはオレも認めてた。


歳も8つも上だし。

剣術も、戦術も、魔法だって国で一番の英雄だよ。


そんな彼がオレたちの魔王討伐の仲間になった。

王様直々の命令だった。


王様はなかなか戦果を上げれないオレにイライラしてたのは知ってた。


そう最初は順調だった、勇者としてのオレの旅もピークを迎えたのかレベルの上がりも遅く、なかなか強くなれず、旅の進行も思うようにならなくなっていたんだ。


そんなときクランプが入った。急激に戦果は上がった。

落とした魔城は4つ。砦や小城は数えきれない。


クランプの戦功、名声は徐々に上がっていった。


そして、とうとうオレたちは念願だった我々の聖地と言える場所クリンダームを取り戻した。

その報を受けて、数日後、法王様とそのご一行が辿り着いて、こう言った。


「おお…勇者様…感謝いたしますぞ…。」


…とクランプの手を握りながら…。


「いえいえ、手前(てまえ)は勇者ではありません。あちらが勇者様。」


「おお。そうでしたか。」


といって、まじまじと見た。


ふぅん…といった感じだった。


我々の労をねぎらう宴がその晩、催されたが席はオレが上席なものの、みんなの視線はクランプだった。


それから…法王様より、本物の勇者はクランプであるとの神託がなされるのに時間はかからなかった。


じゃ、オレは何?

ただの…人…?


それから数日、一緒に旅をした。

クランプはあきらかに精神的優位に立っていた。

そして、オレを煙たく思っただろう。


戦闘も彼がみんなに命令した。

オレには指示はしなかった。


そして、今日だ。


三人でいつの間にか話し合っていたんだろ…。


エミリまで…。

故郷の村から一緒にここまで来たのに…さ…。


クランプよりも数段弱い勇者なんていらないよね。

他に強い人なんてなんぼだっているもの…。


「はぁ…。」


たき火に大きくため息をつくと、ゆらゆらとゆれた。


「バカみてぇーーー…。」


ゴロリと横になって少しだけ泣いた。


「故郷に帰ってもバカにされるだけだし…。どうしよう?」


といいながら夜空を見上げた。

満天の星空がキラリキラリと光っていた。


「キレイだ…。ん!流れ星!世界が平和になりますように!世界が平和になりますように!世界が平……!」


え?ちょっと待てよ??


流れ星がだんだんこっちにくる!


「ウソだろ!うわぎゃ!」


転がって、それを避けようとめちゃくちゃもがいた。


だって、流星でしょ?


落ちたら衝撃は半端ない!

さらに破片とかで二次ダメージ!

さらにさらに、衝撃風もでてそれで土とかほこりとか舞い上げて窒息しちゃうかもだし、

知ってるよ!


だって、勇者の光の魔法でそれあるもん!

使ったことあるもん!


ズゴォーーン!!


と音を立てて、横に流星が落ちた。


衝撃で土や石が舞い上がって、バラバラと体の上に降り積もった。


「…えひゃーー…。た、助かったぁ…。」


土を払って、流星を見てみようと落ちた跡を覗いて見てみると…


「…え?流れ星じゃない…?」


見ると、そこにあったのは黒い体に銀色の髪…。

耳も尖ってピーンと長い、黒いローブにゴテゴテと銀の装飾をめっちゃつけてる…。

オレよりちょっと年下かなぁ?


女の子だ!


死んで…いや、気絶…してんのかな?


そりゃ、無事のわけないよな…。

空から降ってきたんだもん…。

でも、血も出てないし、ケガもしてない…。

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