時を止めることが出来ても世界は変わらない

青猫

 プロローグ

 人はいくら平穏な生活を送っていたとしても人生を左右する分岐点には絶対に遭遇する。

 そう、それが今。俺の目の前で起きている……。

 今日もいつも通りの時間に起床しいつも通りの時間に学校へ向かった。

 何も変化がない、無変化な日常で1日を終えるはずだった……。

 ああ。でも無変化じゃなかったか。

 いつもは私用で学校を欠席していた女生徒が登校していたか。

 そいつのことを思い出したら少し腹だたしくなってきた。

 自分が結構かわいいからって……訂正、少しばかりかわいいからって。ほぼ初対面の相手に罵倒の波を浴びせやがって。

 あれ?今日何回あいつに罵られたっけ……?

 いかん、そんな事を考えてる場合じゃない。目の前でされそうになっているのだ。

 黒塗りのバンにいたいけな少女と少女の腕を掴む二人の男。

 俺はこの状況を打開する方法を今までにないくらいに脳を高速回転させ考える。



 ①

 無視する。そしてゲームセンターに逃げ込み現実逃避!


 この選択肢は人としてアウトだから、却下。



 ②

 制服の内ポケットからスマホを取り出し警察に連絡。


 この選択は現実的だけど、俺は車に詳しくないから車種名が分からないし何よりここからじゃナンバープレートが見えない。

 発見が遅れれば誘拐される少女の安否は保障されない。犯人もバカじゃないだろうから車はどこかに乗り捨てる。そして、犯人は捕まらず繰り返される事件。


 「くそ……!」


 自分でも気づかないうちに喉から声が漏れ出す。少女はバンに押し込まれそうになっている。もう長くはもたないだろう。

 人間慣れないことをするものじゃない。どうやら俺の脳は鈍ってるみたいだ。

 俺は一直線に走る。

 約500メートル先を脇目も振らずにただひたすら走る。

 400……350……。

 あともう少しで……もう少しで手が……!

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