詩集～春を待ちわびるうた

雪が溶けると

　あんなにあった　雪が溶け始めると

　見えなかったものが　見えてくる

　見えなくてもよかったものが　目に映る

　見えない方がよかったものも　目に入る

　見たくなかったものも　見えてしまう

　雪の下が　こんなに汚れていたなんて

　雪のおかげで　気づかずにすんでいたなんて

　雪があるから　美しかった

　雪がおおって　すべてを隠していた

　雪が溶けると　地上はもう一度

　ガラクタの　大掃除をしなければ

　雪が消えると　人はもう一度

　人生を　やり直さなければ

　雪が無くなると　うれしいかと思いきや

　何だかちょっぴり　心は重い

　春は命　息吹　再生

　新しい始まり

　そして大きな責任

　繰り返す　人の役割

　また最初から　やり直し

　大変ありがたい筈なのに　

　貴重な恵みの筈なのに

　何だかちょっぴり　のしかかる

　何だかちょっぴり　息苦しい　

　それでも前へ　進むだけ

　それでも春へ　向かうだけ

　新しい道を　歩むだけ

　新しい春を　歌うだけ