第3話 はじめての逆ナン

「は~久しぶりだなぁ……」


山を降りてきた俺は、久しぶりの街に少々感動してしまう。

前髪が延びすぎていてあまり目の前が見えないが、俺は歩道を歩き、近場の美容院に寄った。


「いらっしゃいませ~」


若い女性の店員さんが話しかけてきた。

俺は修行中に身に付けたコミュニケーション能力によって、問題なく人と会話が出来るようになっていた。


「こんにちは~、受験勉強中ずっと髪をきってなくて……髪型はおまかせします」


「はーい、わかりました、こちらへどうぞ」


あれ?髪が伸びすぎてて、嫌な顔されると思ったんだけどな~

まぁプロって事なんだろう。


俺は案内された椅子に座ってカットしてもらう。


なんだろう?

まったく緊張しない。


昔なら、若い女性にカットをしてもらうなんて、とてもじゃないが無理だった。

しかし今は全く緊張しない。

目の前に映る美容師さんの話にも無理なく答えられてるし、たまに目が合っても微笑みを返せる位に余裕がある。

自信がついたって事なんだろうか?


そんなことを考えているうちにカットは終わっていた。

髪はばっちりセットされていて、これを明日からもセットしないといけないとなると少々めんどくさいな……


俺はお金を払って帰ろうとする。

すると店員さんが慌てて近付いてきた。


何だろう?



「あっあの、これ!」



そう言って俺に一枚の紙切れを渡してきた。

既に店員さんは目の前にいない。


俺は紙切れを開いて文字を読んでいく。


「また、来てね!090……」


なにっ!!

電話番号だと?

これが、逆ナンか?

いや、お客様全員に渡している可能性がある。

落ち着け、俺には伊藤さんがいる。

うん、大丈夫。


俺が心を落ち着かせながら、自分の家に向かっている途中、男の人に声を掛けられた。


「ねぇ~君、カッコいいね、モデルやってみない?」


「ええっと~」


「大丈夫、大丈夫一枚写真とるだけだからさ~」


本当に大丈夫だろうか?

詐欺?いや写真一枚取るだけって言ってたからな


「じゃあ、はい大丈夫です」


「おっいいね~、まじサンキュだわ~」


チャラそうな男の人は俺を撮ると満足そうに帰っていった。


なんかの雑誌に載るって言ってたけど……何だっけ?


まぁいいか、かえろ。


帰宅中に沢山の視線を感じたが……髪、似合って無いのかな?


家に着いた。


無駄にでかい家だなぁー


俺は久しぶりに帰る我家にそんな感想を持った。


……確か、入学式前は母さんと父さん帰ってるって言ってたよな~


俺の母親と父親は二人ともエリートとして商社務めである。

したがって、いつもは海外を転々としているらしい。

俺も最後に会ったのは、中2の終業式何だがな……



「別にどうでもいいか……」



俺は久しぶりに握ったカギを握り、ドアを開けた。



「ただいま~」



あっ母さんだ。


俺と母さんは玄関先で鉢合わせして目を合わせる。


あれ?

どうしたのかな?

なにも言ってこない……



「あの……どうしたの?」



俺がそう呼び掛けると、母さんは呟いた。




「……えと、すみませんがどちら様ですか?」





え?


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デブスだった俺。三ヶ月間の修行で最強の高校生デビューを果たす~憧れの伊藤さんと付き合いたい!!~ @ayaseeri

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