けものフレンズ JPP~ジャパリパークパトロール~

@ikapan

プロローグ

”JPP(ジャパリパークパトロール)"

この部署は、女王事件後のジャパリパークの一般解放を期に新たに創設された部署だ。

その名の通り犯罪の取り締まり、セルリアン駆除等パークの治安維持を行っている。

隊長を勤めるのは、米軍から"助っ人"として派遣されてきた雇われ隊長ジャック・カレントだ。

危険が伴う仕事の為、誰も入りたがらなかったこの部署にトワはたった一人志願した。


──────────────────────────


「・・・・・まだ直らないんです?」


晴れ渡った青空が広がる草原に寝転がり、眠たそうな目でトワがぼやく。


ここはジャパリパークの草原エリア。

その広大さゆえ、開発が進んでおらず一般解放はされていない。

このエリアにパークに潜伏中の強盗犯が逃げ込んだとの情報を管理センターから受けたトワ達は強盗犯の捕縛に来たのだが、整備が進んでいない悪路のせいか車が故障してしまったのだ。


「うるさいぞ...おとなしく寝てるんだな。」


タバコを吸いながら愛車プントのエンジンをいじると言う恐ろしく危なっかしい事をするこの男は、JPP隊長ジャック・カレント。日米ハーフ。年齢は三十代後半。身長180cm以上の長身で、JPPの腕章付きの黒いライダースジャケットを着ている。顔立ちは黒髪にくせ毛という所を除けばカート・コバーンにそっくりだ。


トワは言われた通り寝転がったまま空の雲を見つめる。

サンドスターの影響だろうか。パークの空は本国より澄んでいる。

横を見ると花が咲き誇り、蝶が優雅に舞っていた。

強盗犯が逃げ込んでいると言うのに、なんだかここでお昼を食べたくなってきた。


「カレントさん、お昼にしませんか?」

「ちょうど修理完了だ!よし、一旦休憩とするか....手を洗ってくる。」


トワは起き上がり、車のトランクを開ける。

トランクから弁当の入ったバスケットを取りだし、車の屋根に置いて食事の準備を始めたときに、ちょうど近くの小川で手を洗っていたカレントが帰ってきた。


「トワ、今日のメニューは?」

「・・・・・・じゃぱりまんです。」

「それと?」

「・・・・・じゃぱりまんです。」


カレントが深々とため息を吐く。


「どーゆーことだ?」


するとトワはバスケットから飲み物を取りだしつつ答える。


「・・・・しかたないでしょう。月末なんだから...」


カレントは苦々しくタバコを吹かした。


「世知辛い世の中ですコト.....」


その時だった。

静かな草原に突如エンジン音が鳴り響いた。

ジャパリパークで観光用に使われている車両、ジャパリバスの前部だけがカレント達の横を猛スピードで走り抜けていく。


「危ないな....全く!」

「随分荒っぽい運転ですね。」


何事も無かったかのように呑気に食事の用意を続けるが、すぐに気付いた。

ここは立ち入り禁止区域だ。バスが通るはずが無い。


「おいッ!あれターゲットじゃねえか!」


カレントが屋根の上の食べ物を全て払い除け、車に乗り込む。


「あぁぁぁっ!!??もったいない!!」

「ばか!早く乗り込めッ!」


カレントはアクセルを思いっきり踏み込んだ。

タイヤが空回りし、火花を散らしながら一気に加速する。

悪路のせいで凄まじく車体が揺れ、トワは何度も頭を打つ。


「痛いッ!ちょ!まだシートベルトを!」


痛がるトワを見て、カレントがニヤリと笑う。


「舌を噛みたくなかったら黙ってるんだな!」


カレントとメカニックのギンギツネが開発したエンジンは燃費は悪いが最高速度は時速250kmを越える。観光目的で作られたバスに追い付くなど容易く、すぐに横に並んだ。


「トワッ!こいつがそうか!?」


トワは並走するバスの運転席を覗き込み、右目につけたモノクルのスイッチを押す。

運転していたのはサングラスをかけた小太りの男だった。その男に反応し、モノクルのレンズに情報が表示された。


「間違いないです!こいつが例の強盗犯だ!」

「よし!わかったッ!」


こちらに気付いた強盗犯が、車で体当たりを仕掛けてきた。


「うおッ!危ねぇッ!!」


間一髪、体当たりをかわす。


「トワ!ハンドルは任せた!」


カレントが腰のホルスターからリボルバーを抜き、窓を開ける。

風を切る音がカレントの鼓膜を震わせた。

窓から身を乗り出しバスのタイヤに狙いを定める。

それを見て助手席から手をのばし、ハンドルを操作していたトワが叫んだ。


「カレントさん!何をッ!?」

「今に分かるさ....!」


次の瞬間、カレントはバスのタイヤ目掛けて発砲した。

リボルバーから放たれた弾丸は正確にタイヤを撃ち抜き、猛スピードを出していたバスはコントロールを失い甲高い音を立てながらスピンし、横転する。


「よしッ!」


ガッツポーズをするカレントを見て、トワは叫ぶ。


「むちゃくちゃだぁ!!」



すぐに車を止め車内を確認しに行くと、中で強盗犯が気絶していた。


「多少流血はしているがまあ大丈夫だろう。」

「まったく、なにを根拠に....」


トワが犯人を車から引っ張り出し手錠をかけるが、カレントはまだ横転した車体に上半身を突っ込み、バスを漁っている。


「カレントさん。なにしてるんです?」


そう声を掛けると、カレントが顔を出した。


「こいつを探してたんだ!」


そう言って得意げにかかげられたカレントの手には一つのアルミケースが握られていた。


「なんです?それ?」

「その強盗が盗んだブツさ。これと一緒にソイツを引き渡せば、奨励金がなんと三倍だそうだ。中身は見るなと言われているがな。」


その言葉にトワが歓声を上げる。


「マジですかッ!」

「あぁ!これで金欠生活ともおさらばだ!」


意気揚々と車に犯人とブツを詰め込み、カレント達は都市部を目指して走りだした。


──────────これは、ジャパリパークの裏の物語




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