センセイとパパ活 WEB小説版
さくらとももみ
第1話
「ササオカ、マジありえなくない?」
クラスメイトの女子たちがコソコソと話しているのが聞こえた。このふたりはクラスこそ同じだけど、別の国というか、別の島というか、接点がない近所の人という感じ。
話し声は聞こえてくるけど聞こえないフリをして、私は走りつづけることにした。
私の高校では、毎年冬に全学年を対象にした、マラソン大会を行なう決まりだった。ふたりは体育の時間に割り当てられた、マラソンの練習に対して文句を言っていたのだ。
長時間走るという行為は非日常だと思う。
普通の女子高生は、こうした授業でもないとマラソンなんてしない。急に非日常を強いられて、不満をぶちまけたい気持ちはよくわかる。
でも私は、そうやって陰口を言うのが好きではなかった。
良い子ぶるとかじゃなくって、なんか情けない感じ。
「森! 遅れてるぞー」
体育教師である笹岡センセイの声が、グラウンドに響く。
大柄なセンセイの声は、グラウンドの端から端まで響くほど大きい。トラックを回っていた私は、必然的に気が引き締まる。
ちなみに、いま怒鳴られたのは私ではない。
森加奈は中学が同じで、一年と三年の二年間同じクラスだった。とはいっても、彼女は一年の後半からほとんど登校していなかったので、ほとんど一年間の付き合いだ。
性格も真逆なので仲が良いワケではない。しかし同じ中学出身は彼女と私だけなので、さっきのふたりよりかは幾分距離は近いと思う。
中学一年のとき、彼女はあまり喋ったりしない、暗いクラスメイトだった。ただ、それがよくなかったのだろう。
他の人は普通に会話をする。そして急速に輪を形成していった。そんな中で自分から行動しない彼女は、いずれの輪にも入ることができなかった。それが悪化した結果、彼女はからかわれる対象になり、やがていじめられる対象となった。
私はいじめに加わらなかったけど、彼女を助けることもできなかった。彼女がいじめられている様をみて笑うことはなかったけど、怒るわけでもなかった。
ただの傍観者だ。
そして森加奈は不登校となった。
これは後々につづく彼女の人生で、大きな汚点になるのではと思ったのは、私の進路が決まったときのことだ。
「森がおまえと同じ高校に行くことになったんだが」
という担任の言葉が、それまであまり意識してなかった森加奈のことを、深く考えさせるキッカケとなった。
ていうか、不登校の生徒と同じ高校って、どんだけ頭悪いんだ私。
私の三年間の成果と、彼女の一年ちょっと(?)ぐらいの成果がイコールらしい。劣等感というか悔しいというか情けないというか。私なりに頑張ってきたつもりなので余計だった。
「同じ中学のよしみってことで、仲良くしてやってくれないか?」
「んー、まあ別にいいんだけどね。あの子あんま喋らないから、私と仲良くしても、他の子と仲良くなれるかわかんないよ?」
そんなこんなで、森加奈と私は、同じ高校に通うことになった。
奇跡的に同じクラスになって、入学式から何度かアクションをかけてきたが、あんまり成果はない。
なんかゴメン。センセイ。
私たちはもうすぐ二年になる。クラス替えもするみたいなので、今度は別のクラスかもしれない。そうすっと仲良くなる機会がますますなくなるなあ、なんて言い訳を考えていたときだった。
「日村ー! ボサっとすんな」
笹岡センセイの照準が私に合った。背筋を伸ばす。ボブカットの髪をセンセイから見える方だけ掻き上げる。笑顔でセンセイに手を振ってみる。センセイは顎をしゃくって前を向くように促した。
笹岡センセイは大柄で強そうな見た目に反して、実は結構優しい。男女共にいやらしくない優しさと抱擁力を示す。そんな理由で普通の生徒には人気がある方だ。
しかしながらセンセイはバツイチの子持ちだ。そのことが一部の「自意識過剰女子軍団」から不人気の理由となっていた。つまり、さっきのふたりのような人たちだ。
なんか男として欠点があるからバツイチなんだろうとか、うがった物の見方なのだ。じゃあ、あんたたちはどんだけ立派なの? って私は思うので、彼女たちとは仲良くない。
離婚なんて男女間の問題なんだから、他の人がとやかくいうべきではない。文句を言って良いのはセンセイの一人娘のアヤちゃんぐらいであろう。
このアヤちゃんが、これまたよくできた娘さんなのだ。
近くの小学校に通う三年生のようだが、弁当を忘れたセンセイのために届けにきたことがあった。学校が終わってすぐ来たのだろう。道中を想像するだけで微笑ましい光景だ。
アヤちゃんの育ち方を見ていれば、センセイに大した問題はないように思えた。
そういった、センセイの人柄を目の当たりにしていた私は、離婚の原因は母親の方にあるんじゃないの? と思っていた。その考えがまた「自意識過剰女子軍団」との溝を深くさせる。
とはいってもトラブルが嫌いな私は、何事も穏便に済まそうとする傾向がある。表だって牙を剥いたりすることはあまりない。
表面上は大人しくしていたり、波風が立たないようにしたり、目立たないようにしたり、従っているフリをしたり、という生き方に長けていた。
森加奈のいじめ問題のときもそんな感じだったので、自分を景色と同化させるのは得意だと自負している。
本当に情けない話だ。
でもそれが私、日村優花なのである。
歩く度に金属音を奏でるアパートの階段を上がっていく。
何度か塗り直しを行なっているらしいそれは、あきらかに明るい色を放っていて、安っぽかった。
この安っぽい階段が嫌いだ。どれだけ気を遣って昇り降りしても、カンカンという音が鳴り響く。無神経な人が昇降する際は、近所迷惑な騒音をまき散らす構造物になり果てる。
その物音は、「ご主人さまが帰ってきたぞ!」という威圧以外の何物でもなく、たとえ夜中に寝ていても、ビクッと目を覚ますほどだった。
鞄から取り出した鍵を入れてドアノブを回す。殴れば割れそうなほど薄い扉を開く。玄関は三分の一を小さな靴入れが占めていた。この計画性のなさに、毎日イラッとしてしまう。
思いつきで買った家具を、無理やり押し込んだのだろう。これで「キチンと収まっている」と満足している思考回路にも腹が立つ。
そんな狭いスペースの中、壁に手をついて靴を脱ごうとする。
すると家の中から、
「優花、あんた昨日掃除してないでしょ?」
母の声が聞こえた。玄関から丸見えの居間。そこに置かれたコタツの前で化粧をしながら、こちらを見ずに言った。これがこの日、私と母が最初にかわした言葉だ。
負けじと私も靴に視線を向けたまま答える。お互い目を見てないけど、一日の顔合わせもこれが初めて。
「えー、やったし」
「台所のゴミ袋、変えてないじゃん」
「台所は明日でしょー?」
ゴミ収集の日時と、ゴミ袋がもったいないという理由、変えたあとのゴミ袋の置き場所がないといった理由で、うちのゴミ袋の取り替え日は決まっていた。
「口答えすんな」
「あー、もう。ごめんごめん」
逃げるように、居間より手前にある自室の襖を開いた。
「あと、洗濯物溜まってるからやっといて」
「ちょっとー、今日お母さんがやる番でしょ?」
「誰のおかげでメシ食えてると思ってんの?」
ご飯は自分でまかなってますけど?
という反論をグッと堪えて、「わかった」と伝えて襖を閉めた。
「じゃあ、あたし行ってくるから」
しばらく経ってから、母がそう言い残して家を出て行った。
手早く洗濯を済ませながら、バイトの準備をする。スマホには今日の相手からのメッセージが、ジャンジャン届いていた。
ちょっと遅くなる代わりにサービスするから、と言ってなだめる。ついでに今日泊まりはどうかという提案をした。相手は大きく首を縦に振っているスタンプを返してくる。
さっさと洗濯物を干して家を出る準備をした。
上から私服のコートを羽織る。マフラーで胸元を覆うが足下は隠しきれなかった。化粧道具を持って学校には行けないので、メイクは控えめにしておく。
今日の相手は常連さんだし、多少は顔が違ってもわかるだろうと思ったのだ。
風は冷たく、露出した手足が冷えて痛くなった。しかし、あまり色気のない格好は好ましくない。なるべく可愛らしい格好をしている方が喜ばれる。
それがリピーターへ繋がるため、スカートは絶対外せない。すこしぐらいの寒さは我慢する必要があった。
待ち合わせの場所に着くと、相手はもう来ていた。
出会ってすぐ、なだめるために手を握ってみる。だが、驚いて手を引っ込めるぐらいに冷たくなっていた。
「ごめんなさい、こんなに待たせちゃって」
よそ行きの言葉で話をする。
「ほかのお客さんがいたのかい?」
「違いますよう。洗濯物が溜まってたので、それだけ片付けたくって。ほんとにごめんなさい」
「イマドキの子って家事とかしないって思ってたけど、さやかちゃんは家庭的なんだね」
さやかっていうのは私の源氏名っていうのかな。仕事上の名前だった。
「そんなことないですから、普通ですって」
まあ、同年代の子は遊び惚けて家にも帰っていない子が多い。家事やってる子は少数派かもしれないなあ。もっと上流階級の娘さんなら、また違ってくるかもしれないけど。
「それじゃ、冷えてもあれだし、さっそく行こう。ご飯は食べた?」
私が首を横に振ると、手を引いてファミリーレストランへ連れていってくれた。
私がやっているバイトは、「パパ活」と呼ばれるものだった。
手を繋ぐ以外の接触は基本的に厳禁。身体の関係もなし。たまにギュッとされるけど、それは現場判断の別料金。
基本的には一緒にご飯を食べたり、遊んだり、話をしたりするだけで、お小遣いがもらえる仕事だった。
まっとうな仕事じゃないのはわかっている。でも、学校はバイト禁止。お嬢様高校じゃないけど、やたらにお金を持ったり外部と接触を持ったりすると、非行を助長させる要因にもなりかねないらしい。
そんな理由でストップが掛かっているようだ。学校名を聞くだけで、この近辺のバイトは不採用となってしまう。母親からまともな援助がない私が生きていく術は、パパ活しか思い当たらなかった。
パパ活は、ネット上のサイトに登録して相手を見つける。条件が合えば何回も会うこともあるし、一回だけの人もいた。泊まりはかなりの信頼がなければOKしない。手を繋いで添い寝するだけで、相手は喜んでお小遣いを弾んでくれる。
こういった需要がある限り、女子学生というブランドはいつまでもなくならないのだろうと、当事者なりに思う。
私がパパ活を始めたのは夏頃だった。
それまでは、父から直接毎月いくらかのお小遣いをもらっていた。なので、それでまかなっていた。高校に入ってから、いろいろと必要だろうと便宜を図ってくれた父は増額してくれた。
しかし、母はその自分を介さないやりとりが、気に喰わなかったらしい。
その上、父からもらったお金は、「自分が管理する」という名目で母に没収されてしまったわけだ。
母はそれまでも趣味としていたパチンコに、さらに没頭し始めた。なんとなく父からもらったお金が使われているんだろう、ということはわかっていた。だからと言って、言い出せるような性格だったら初めから苦労はしない。
事情を話せば父は協力してくれたかもしれない。だけど入ったばかりの学校を変わりたくなかったし、再び前の苗字に戻ったことを知人に伝えるのもやりにくかった。あと数年の辛抱だと思った私は、なんとか我慢する道を選んだ。
ちょうど、お金を没収されたぐらいの頃。
父が病気で亡くなった。
私が知っているのだから、お母さんもお父さんが亡くなったことは知っているはず。だけどお葬式に行くどころか、その話題を振ってくることは一度もなかった。
同時期から、母がご飯を用意することはなくなった。それでも冷蔵庫に食べ物が入っているときは、それでまかなえた。だけど冷蔵庫も空っぽのことが多くて、生命の危機を感じた私はネットに助けを求めた。
そこで知ったのがパパ活だ。
意外と簡単に相手は見つかり、ご飯を食べさせてもらえるだけじゃなくて、お小遣いまでもらえた。相手も事件事はイヤなのか、今のところ目立ったトラブルもない。それから私は、パパ活でもらったお金で生活するようになった。
母からまともに援助を受けていないけど、この人は一体どう思っているのだろう。私が何も食べずに生きている、とでも思っているのだろうか。
なんだか腹が立った。
何故、この人に親権が委ねられたのか。
高校を出たら普通に仕事を見つけて、この人とは縁を切るつもりだった。母がこういった人間性なのは、もう仕方がないだろう。たぶん、母が育ってきた環境がそうさせたのだ。
だけど、この国の法律が、とても曖昧で上っ面しか見ていないこと。そのクセに生半可な力では逆らえない強制力があることを、私は肌身で感じでいた。
結局、法を整備した人は、そんな悩みとは無縁な人が整備したのだ。表向きは困っている人に手を差し伸べているつもりなんだろう。だけど、本当に困った人の身にはなれていないんだと思った。
その結果が、パパ活に身を委ねる私のような人間なのかもしれない。
腹は立つけど、私がそれを表に出すことはない。
牙を剥かないこと自体が、私が生きていくために得た処世術だったから。
宿泊施設に向かって、お客さんと腕を組んで夜の繁華街を歩いているときだった。
「日村!」
繁華街の隅から隅まで届くような、男の怒声だった。
私は心臓が口から飛び出そうなほど驚いて、思わず跳ね上がってしまった。
おそるおそる声の方へ顔を向けてみると、
「笹岡センセイ……」
ヤバイと思った私はお客さんを見てみた。同じように顔が強ばっている。
「あのセンセイ手強いんで、変なウソはつかないようにした方がよさそうです」
こっそりお客さんにそう伝えると、小さく頷く。
「こんな時間に何してるんだ? この人は?」
お客さんの顔と私の顔を交互に見るセンセイ。時計の針は0時を回っている。腕を組んだりしている時点で幾つかの答えは選べない。
「あー、えっと……彼氏、です」
語尾が消え入りそうなほど、小さい返事だった。
「彼氏い?」
訝しそうにお客さんを見つめる。そして私を見てこう尋ねてきた。
「名前は?」
「えっ?」
私はお客さんの名前を知らない。聞かなくても問題がない関係だからだ。パパ活の名前の通り、「パパ」と呼ぶのが普通だった。
「あ、えーっと……武……です」
「すみませんが、私はこの子の通う学校の教師でね。失礼ですが、身分を証明できる何かを見せてもらってもいいですか?」
やはり笹岡センセイは手強かった。
「あ、えーっと」
とりあえずお客さんは「武」ではないらしい。この動揺を見ていればわかる。お客さんはこちらを見てこう言った。
「あの、さやかちゃん?」
あー、やっちゃったあ。
瞬間、その場の空気が張り詰めたような気がした。
「この子は日村優花ですが? 一体どういう関係ですかね? 場合によっちゃ」
「あー、センセイごめん。あのね、これはパパ活って言って――」
お客さんに迷惑は掛けられなかった。私は生活費が窮していることも含めて、お客さんに非がないことを説明することにした。
自分が困っているところを助けてくれただけで、私から事情をちゃんと説明すると伝えた。誠意が伝わったのか、センセイはお客さんを解放してくれた。
その後、私は話を聞くという名目で、センセイの自宅に呼ばれることになった。
アヤちゃんは既に寝ているらしく、静かに入るように言われる。玄関からは、なんとなくセンセイのニオイがして、心が落ち着いた。
「まあ、俺もカマを掛けるような言い方をして悪かったな」
「へっ?」
そう言いながらセンセイは、リビングにあった椅子を引いてくれた。センセイが引いてくれた椅子へ静かに座ると、
「どういうこと?」
「ん、まあ生徒からあるサイトの申告があってな」
そういって、センセイが自分のスマホの画面を見せる。
「あ、あー……そういうコト」
センセイのスマホには私が利用しているサイトの、私の書き込みが表示されていた。本名や学校はもちろん伏せているが、この近辺だという情報は載っている。学校サイドも警戒していたというところだろう。
「メーワクかけてごめんね。でも、ほんとウチの家って困っててさ。私が稼がないと、ご飯も食べられないわけよ」
「お母さんは、このことなんて言ってるんだ?」
「んー、知らないと思う」
「知らないっておまえ……常習だろう?」
といってセンセイは、「さやか」名義の書き込みを一覧表示させる。最新ガジェットにも詳しいセンセイは本当に手強い。
「お母さんと、うまくいってないのか?」
色々なことが頭の中を巡っていて、何も答えられなかった。
「まあ、片親で親子関係がうまくいっていないってのは珍しいことじゃない。今回みたいに子供が困っている場合だけじゃなくって、親が相談してくるケースもあるしな」
「センセイ……なんか知ってんの?」
「なんかって?」
ハメられた。またカマをかけてきたに違いない。
「普通に考えただけだよ」
「普通に?」
「常識的に考えて、娘がこんな時間まで、頻繁に出回っていることに気づかない親なわけだろ。うまくいってるとは思えないじゃないか」
あー、そういうコトですか。
「ましてや、おまえはコレで金もらっていたんだろ? 子供の金回りを把握してない親ってのも、ちょっとな。女子なら身形で気づくだろうしなあ」
いちいち正論をついてくるので、なんの反論もできずに黙り込むしかなかった。仕方がないので無策で正面から頼んでみる。
「そういうことだから、見逃してよ。ね?」
「うーん……でもなあ。教師としては、こんなバイト認められんぞ」
「だって、学校が悪いんじゃんかさ。特別でもなんでもバイト認めてくれればいいのに」
「申請を出せば特例を認めることもできるが」
「え、マジ?」
「特例を認めると、そのことが公になる」
「あー……ダメだ、それは」
「おまえも友達にヘンな目で見られたくないだろ」
「でも、普通に考えて、明日からどうやって食べていくのさ」
「これは児童虐待って言うんだよ。既に普通じゃないんだ」
「私だって考えてんだよ? 学校とか変わりたくないし」
「おまえ自体は別に問題児だとは思っとらんさ」
なんか嬉しかった。そもそも担任でもない教師に、ここまで話をできる、聞いてもらえる、自分のことを考えてくれているというのがたまらない。
パパ活もそうだったけど、どうも私はファザコンの気があるのかもしれない。
「このケースで母親を追い詰めると、さらに問題が悪化することもあってな。子供の人権も考えると、今は現場の判断がすごく難しいんだよな」
別にパパ活認めてくれるだけでいいんだけど。
「よーし、わかった」
ドキンとした。何をわかられたのかわからないので、不安で仕方がない。
「おまえ、うちで子守しろ」
「は?」
「アヤの面倒みてやってくれ」
「アヤちゃん、面倒みるほど子供じゃないでしょ」
「小学生の娘を、夜ひとりにしとくのは不安なもんだぞ。今日みたいに帰るのが遅くなることも多いしな。やることないんだったら、家の掃除とかなんでもいいよ」
「でも、それこそセンセイやばくない?」
「学校側には説明するし、虐待相談所とか地域側には伝えるよ」
「それで、有名になったりしない?」
「しないようにするために説明するんだ。俺と一緒に顔出したり、査察っていうか、定期的に職員が来て、経過を聞かれたりすることはあるかもしれんが」
「んー、なるほど」
「メシは食わせてやるし、多くは出せないがバイト代も払う」
「へー、教師って儲かるんだ?」
「んなワケあるか。アヤの今後の学費とか俺の老後とか考えたら、余裕なんてない」
「ふーん。じゃあ、ありがたくお世話になります。それじゃ、不束な者ですが」
三つ指をついてお辞儀をする。
「その代わり、生活態度は他のヤツより気をつけるようにしろよ。こういった特待は、ちょっとしたことですぐに無効になることもある」
こうして私は、センセイとパパ活することになった。収入は下がるだろうけど、食べる分とか最悪センセイに頼ることができるっていうのは安心だ。
何より、ひとりじゃないっていうのが大きくて、ホッとした。
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