月下美しの君
かおり
第一章
猛然と道を駆けて行く。既に日は落ちて辺りは暗い。雲が少し在るものの、しかし今は晴れて居る。月光が辺りを照らしているため視界は広い。余程のことさえ無ければ、迷う可能性は薄いだろう。とはいえ、出来る限り早々に帰る方がより良いはずである。
ざざあ、と遠く波の音が聞こえた。前方の坂に進めば砂浜が在るのだろう。主人の屋敷の方へ向かいながらも、思わず波音に耳を澄ませた。
ぱしゃ、ぱしゃ。
波音に混じって、それは
ぱしゃ、ぱしゃ。
誰かが、居る。
前方に広がる、
明日は満月だと、主人が言っていた。今日の月は、満月だと思えてしまう程に丸い。いつの間にか雲が移り、その背後に隠れて居た月が姿を現して居た。
月光が明るく、人影が実際にどのような姿をしているのか、はっきりとした判別は出来ない。
ぼうっと見て居ると、彼女がふと此方に目を向けた。数秒だったろうか、数分だったろうか。互いの視線が交差する。少女は見られて居たことに対し特に驚くことも無く、此方を
柔らかく涼しい風が吹く。少女の瞳が一瞬、きらと輝いたような気がした。唐突に瞼が重くなる。立っていることもままならぬ程の、ずっしりとした眠気。
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