インターネット考古学

夏秋冬

インターネット考古学

西暦40xx年、41世紀の現代においてインターネット考古学に大きな発見があった。


インターネット考古学とはネットワーク上に残されたデータを発掘し、当時の世相や風俗を浮き彫りにする歴史研究の一分野である。そこには公文書では見られない一般大衆の姿があった。

電子データの最古のものは20世紀から始まるが、22世紀初頭にネットワークの通信技術は電気通信から量子通信に置き換わり、その技術革新の大きな変化の中でそれ以前のデータは雲散霧消した。これにより22世紀以前のデータは発掘が非常に困難なものとされている。凡そ二千年前の大衆の姿は歴史の中に埋もれようとしていた。


しかし、近年この分野における大きな発見があった。21世紀初頭のSNSと呼ばれるWebサービスのデータが大量に発見されたのだ。

歴史的な電気、電子機器を収蔵するロシア電子博物館の所蔵品のひとつ「SERVER」と呼ばれる電子機器を研究者が解析する内、ディレクトリの奥深くに残されたデータが発見された。そこには電子網上で繰り広げられた当時の人々の生活が克明に残されていた。


そのデータには、

料理、菓子、飲料、酒、ビール、パン、恋愛、惚気、家族、育児、子供、恋人、友達、親、健康、闘病、音楽、読書、絵画、イラスト、美術展、映画、演劇、ファッション、ネイル、水引、猫、犬、もふもふ、インコ、鮫、花、世相、仕事、転職、警備、夜勤、会社、アルバイト、今日のできごと、わきジャケ、プジョー、アニメ、俳句、短歌、川柳、鉄道、写真、街角スナップ、ジョギング、野球観戦、自転車、ボルダリング、旅行、TDL、ひらパー、愚痴、黒歴史、etc

といった当時の人々の生活記録が生き生きと記録されており、そこには現代と変わらぬ二千年前の人々の生活があった。


この大きな発見は、21世紀初頭という時代に生きる人々の姿を鮮やかに描き出す超一級品の歴史資料となった。

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インターネット考古学 夏秋冬 @natsuakifuyu

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