彼と彼女の神様
夏秋冬
彼と彼女の神様
幸子は趣味のサークルで知り合った男性と親しくなりデートを重ねていた。お互いに魅かれ合っていると思えたし、より親密になる予兆も予感もあった。
良い人に巡り会えたことを柄にもなく神様に感謝したりもした。祖母の七回忌にお坊さんが来てお経をあげていたので幸子は仏教徒なのだろうが、彼女の中の神様のイメージは宗教画で描かれるキリストだった。そのくらいの曖昧な神様だった。
彼からは「付き合ってほしい」という宣言はなかったが、そのような言葉もないまま自然とカップルが成立していたという話はよくあることなので今回はそのパターンなのか、などとも考えていた。LINEで連絡を取り合い、数度食事に行き、ふわふわとした日々を過ごしていた。
そんな折に彼から自分の信仰する宗教への入信を勧められた。幸子は「実家が教会なので」と嘘をついてその場を辞去した。以来彼からの連絡は途絶えた。
幸子は神様に感謝したことを後悔すると共に、彼の信じている神様はこんなやり方をお許しになるのだろうかと思うのだった。
彼と彼女の神様 夏秋冬 @natsuakifuyu
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