花いちもんめ
夏秋冬
花いちもんめ
吉田さんは子供の頃、ドッヂボールが嫌いだったという。
吉田さんが言うには「チーム分けのシステムが残酷すぎるじゃない?」とのこと。
運動神経のいい男子がじゃんけんをして、勝った方が「○○ちゃんが欲しい」と言って有能な子を選んでいくというあのシステムが嫌でたまらなかったらしい。吉田さんはいつも売れ残る側の子で、お荷物だけど仕方ないという感じでチームに加わるのが惨めだったとぼやいた。
私は私で花いちもんめで「○○ちゃんが欲しい」と言われない子だったので大いに納得した。
吉田さんはそれでも「勉強はできたからそれほど屈折せずに済んだけどね」と言って笑っていた。確かに今の仕事ぶりを見るとそうなのだろう。正社員でもあるし。
花いちもんめで欲しいと言われなかった私は、随分傷付いた。クラスの人気者でないのは分かっていたが、自分が透明人間だとは知らなかった。それからは自信というものがついぞ生れなかった。
今日も会社の喫煙所では男性社員が、誰が仕事が出来る誰は出来ない、奴がウチの部署に欲しいあいつは要らないという話をしている。ああ彼等は選ぶ側の子だな。そして私はまた誰にも欲しいと言われないままなのかと思いながら煙草をくゆらすのだった。
花いちもんめ 夏秋冬 @natsuakifuyu
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