戦闘兵器猫型ロボット

夏秋冬

戦闘兵器猫型ロボット

22世紀、軍産複合体と軍需企業は人工知能を搭載した究極のロボット兵器を開発した。ロボットは寸胴の人型で自立歩行し、様々な戦闘車両、重火器の扱いに精通すると共に、多次元ホルダーにあらゆる兵器を装備して無限ともいえるエネルギーで活動し続ける究極の兵士として創り上げられた。また、その外見は恐怖心を与えない為に青と白、曲面を生かした柔和なデザインが採用された。頭部にある2つの突起、GPSアンテナの形状が猫の耳に見えることから開発者の間では猫型と呼ばれた。


試みに紛争地帯に投入されたロボットは、たった一体で武装ゲリラの拠点数十個所を撃破し、ゲリラ2個中隊を殲滅してその実力をまざまざと見せつけた。その戦果に重役たちは狂喜し、開発者は恐怖した。

軍需企業はこれを量産し世界の覇権を握ろうと政治家たちと暗い約束を結んだ。


しかし、その人工知能に人類の英知を植え付けられたロボットは、自身が量産されることは世界を戦争の渦中に落し込むことだと考え逃亡を図った。追跡を逃れるため頭部のGPSアンテナを自ら破壊して、自身の設計資料全てを破棄した上で研究所を爆破し、開発者である科学者、技術者までもを殺害して過去へと逃亡した。


ロボットを再び創り上げる技術が失われた軍需企業は、彼を血まなこになって捜索した。タイムパトロールが過去へと遡りロボットの行方を追跡し交戦したが、究極の兵士である彼の前には成す術もなく全ての隊が殲滅された。やがて足跡は失せ、ロボットは過去へと消え去った。


ロボットはある時代に漂着し、その時代の平均的な少年と知己を得た。自身が戦闘兵器であることを隠す為に、未来にいる少年の子孫が自分を使者として送り込んだのだと嘘をついた。そして少年はそれを信じた。


以来、ロボットは少年の他愛もない悩みを解決することで暮らし、破壊と殺戮に手を染めることは二度となかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

戦闘兵器猫型ロボット 夏秋冬 @natsuakifuyu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ