1+1+(1+2)=持つべきものは・・・

カゲトモ

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 看板のライトを消してクローズの札に返してから店に戻ると、薄暗くしていた店内に一つの人影を見つけてその場でちょっと飛び上がる。それが知り合いだと知って沸き起こるのは怒りではなく呆れだ。

「何してんだよ」

「・・・」

「おい」

「・・・」

 なんで無視するんだよ。もうばれてんだよ、そこにいるのは・・・え、もしかして死んでる?

「リン」 

 名前を呼ぶと頭を垂れたままグリン、とスツールが回った。ゆっくりと首を動かして、さらりと揺れた神の隙間からギロリとこちらを見つめてくる。

「・・・なぁんだ。もっと驚くかと思ったのにつまんない」

 先程までこの世のものではないようだった存在が、ツンと唇を尖らせて言った。

「怖がりは治ったのね。まぁもういい歳だし、普通か」

「はっ」

 いやいやいやいや、めっちゃ心臓ドキドキ言ってるからね? やめて本当に、そういうことするの。もうちょっとで年甲斐もなく叫ぶとこだったから。

 リンにはばれないように深く息を吐く。まったく、コイツは昔からそうだ。トリッキー過ぎて困る。

「どこから入ったんだよ。さっきまで居なかっただろ」

 だからこそ驚いたんだっての。バイトの斉藤君にはもう上がってもらっていたし、確かに外に出る前には店内に誰も居なかったはずだから。

「やーね、あたしは魔法使いなのよ?」

「バカ言ってんな。どうせミケだろ」

「だぁいせぇかぁい」

 赤くて長い爪の指を一本立ててリンがにっこりと微笑む。どうせそうだと思ったよ。ミケとリンは特に仲が良いから。今は、だけど。

「なに、どうしたの」

「どうしたのって。ほらほら、お仕事終わったんでしょ? ミケの店行きましょ」

「え、俺も?」

「はなちゃんを誘いに来たんだってば」

 リンはそう言うと、グイグイ背中を押して俺を勝手口の方へ押しやる。ミケの店は勝手口の向こうだ。

リンはそれから手際よくコートとバックなんかも俺に持たせて、最後にちゃんと電気まで消してから扉を閉めた。慣れているのはこの誘い方が初めてじゃないからだ。

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