24日目 馬「俺の背後に立つな。命が惜しければな」
再び教習に来たアナタ。女神は椅子に座りながらくつろいでいる
「よく来ました。ところで勇者候補よ。これまでお教えした鍛練法意外にも自主的にお散歩してますか?」
「・・・・」
アナタは女神の前の席に座り雑談をした
「フフ、そうですか。お散歩も立派な鍛錬になりますからね。職場や学校など行き慣れた場所を、休日に地図を見ながら普段と別のルートで行くのも旅のいい練習になります」
「・・・・」
「そうめんどくさがらずに、新しい発見もあり楽しめるかもしれませんよ。自分の生活圏の土地をしっかり把握すれば、災害時の避難経路を直ぐに思いつくでしょうし、終電を逃し何処かで夜を超す際も役に立ちます。地図を見るだけでなく実際に行って歩く事で人の流れや、そこで出来そうな事をしっかり把握すれば混乱せずに済みますからね。もちろん危ない場所に行ってはダメですよ。次回の教習はお散歩なので覚悟する様に」
「・・・・・・・」
「お散歩は良いのだけど宿屋の部屋を見たかった? フフ、それは異世界に行ってからのお楽しみ。と言うかあのような個室で泊まる事はそう多くはないと思いますよ? お金を稼げたら別ですけど」
「・・・?」
「じゃあ馬小屋か? なにを言ってるんです、そんな場所に泊まれるわけないでしょう! 馬がどれだけ価値が有ると思ってるんです? お金がない時は寝床だけが大量にある他の人と共有の部屋がある宿で寝泊まりするんですよ!」
「・・・・!?」
穏やかだった女神は怒り出した
「他の人と共有は嫌? 馬小屋の様に仕切りがあった方がまだましですか? 甘いですね。こんな話があります、西部開拓時代の町は馬泥棒は縛り首でした、死刑です、何故だかわかりますか?」
「・・・・」
「ちゃんと乗馬できる様に調教された馬は高価なこともあります。それに町外れから馬に乗り、長時間のをかけて買い出しに来る人も居のです。そんな人の馬を盗んだら、その人の家に残した家族は飢え死に、その人も路頭に迷って家族の為に凶行に走るかもしれません。馬泥棒なんて外道は許されませんし、疑わしい行動をとればそれ相応の報いを受ける事でしょう! 馬小屋なんて宿として貸してくれませんし、馬小屋には馬番が寝泊まりしてるかもしれません。忍び込むのもオススメしませんよ! 危険です! わかりましたか?」
「・・・・」
女神は怒りを鎮めてくれた
「わかればいいのですよ。そして今日の教習は乗馬です。異世界に行ったらまず乗馬で迷う勇者は多いですからね。調教の方法で乗り方は違いますから現地の習慣に合わせる必要が有りますが、一例として簡単にお教えします」
「・・・・・」
女神が手を叩くと、アナタはいつの間にか馬小屋にいた。女神は馬を撫でている
「よしよし、良い子ですねユート。フフ、勇者候補よ、馬にエサをあげてみますか? そこに果物を刻んで置いてあるので手の平に乗せてあげてください。指でつまんじゃダメですよ、指ごと齧られちゃいますから」
アナタは女神の指示通り、馬にエサをあげてみた
「・・・・・」
「フフ、その調子です。干し草だけでは馬は調子が出ませんからね。ちゃんと栄養の有るエサもあげるよう心掛けてください。何かを欲している時は前足で地面を引っ掻いたりしますからお腹が空いているのかもしれないです。ですが体調不良を訴えてる場合もありますから無理にエサをあげないでくださいね。馬の機嫌が悪い時は耳を伏せていますので参考に」
「・・・・・」
「よし、勇者候補よ。私はこの子に馬具を取り付けますから外で待っていてください」
「・・・・・・」
馬にエサをやり終わり、アナタは言われるまま馬小屋の外に出た。しばらくすると女神が馬を連れて来た
「準備が出来ましたよ。馬の真後ろに立たないでくださいね。敵が居ると思い本能的に後ろ蹴りをかましてきますから鎧を着てても危険ですよ。では馬に乗ってみてください。鞍の両側にぶら下がっている三角形の金具に片足を引っかけて登るのです。この金具は
「・・・・」
「そうです両足を鐙に通して、あまり足を深く鐙に入れずに、少し踵が下がるくらいの位置が理想です。姿勢を真直ぐ正して手綱を両手で握ってください。手綱が緩み過ぎず突っ張り過ぎない長さになり、左右均等になる様に調整して。グーで握らずに人差し指から薬指の三本の指で持ち、手は縦に、手綱が薬指から下から通り上に抜け、両手の間に余った手綱がまとまる様にしましょう。手綱は馬に指示を出すう上で重要ですよ」
「・・・・」
「出来ましたか? では馬を歩かせましょう。馬の腹を両側から足で圧迫し指示を出すのです。この指示を伝わりやすくする為の道具を踵につける場合が有ります、
「・・・・」
アナタが指示を出すと馬話歩き出す
「よく出来ました。次は曲がってみてください、曲がりたい方向の手綱を引いて」
アナタは馬を左右に曲がらせて言う
「・・・・・」
「馬が思ったよりも小さい? それは軍馬だからです。戦場で怪我をし難い様に足が太く短い馬が好まれたのです。馬が怪我すると落馬の危険が有りますし、その馬はもう使えませんから」
「・・・・・」
「曲がれましたね。では次は止まる指示です、両方の手綱を均等に引いてください。緊張して足に力を入れない様に、馬のお腹が圧迫されて進む指示と勘違いし、馬が混乱しますから注意ですよ」
「・・・・・」
忠告を参考に手綱を引き、アナタは上手く馬を停止させた
「よし、止まれましたね。ではその場で降りてください。そしたら手綱を馬の首から下ろして、手綱が地面に落ちない様に持ちながら馬の口から10cmぐらい離れた場所の手綱をもう片方の手で持ってください。そのまま優しく引っ張って私の所まで馬を連れて歩いてみましょう」
言われるまま女神の所まで馬を引っ張って行く
「・・・・・」
「よしよし、上手くできましたね。では勇者候補よ、今のアナタの認識力で伝わるか不安ですが最後に手綱をこの柱についてるリングに縛ってみましょう。手綱を丁度いい場所で二つ折りにし、折った場所をリングに少し入れ二回捻ります。捻った先に出来る輪っかに馬とは逆側の手綱を少し入れて、馬側の手綱を引っ張ってしっかり締めます。馬が動ける様に少しゆとりのある長さで縛ってあげてくださいね」
「・・・・ッ」
「上手くできましたね、よかった。この結び目から馬と逆側の手綱を引っ張ると、この様に簡単に外れます」
そう言って女神は縄を解いて見せた
「・・・・・」
「これで簡単な馬の操作は理解できたかと思います。馬車の操作も基本的に同じで、違うのは発進の合図が手綱をしならせる事ぐらいです。映画とかで見た事あるでしょ?」
「・・・・・」
「では今回の教習はここまで! では次回のお散歩でお会いしましょう」
そう言って女神は馬を連れて去って行き。アナタは日常に戻っていった
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