第9話 伸びる扉

友人から聞いた話


一人暮らしの友人は、住んでいるマンションの玄関ドアがゴムの様に伸びる夢を見るらしい。



夢の内容は、

ふと目を覚ますと金縛りの様に体が動かない。

無理に動かそうと思うと何とか動く。

そこでググッと力を入れて横を向くと玄関のドアが見える。


玄関のドアがゆっくり、グニーーッと内側に無理やり延ばされるように伸びてくる。

伸びてきた先端をよく見ると人の顔と両手が浮き出ている。

まるで顔と両手で玄関のドアを無理やり押し出しているようだ。


その顔と両手がどんどん内側に伸びて部屋まで入ってくる。

ドアも伸び続ける。


急に、

あ、こいつ中に人がいるかどうか探ってる。

気付かれるとやばい。

と思い、眼をつむって、何とか重い腕で布団を頭まで引っ張り上げですっぽりと覆い隠して息を殺す。


しばらくすると寝てしまい気付いたら朝になっている。


毎回夢はその繰り返しだった。



私は友人に今でもよく見るのか聞いた。

「あ~、ちょっと前にさ、目が覚めた瞬間”気付かれてないと思ってたの?”って耳元で言われて、それ以来見てないな。」

とあっさりと話していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る