聞いた話
おっさんさん
第1話 シャコシャコ
友人から聞いた話
友人はワンルームマンションに住んでいます。
部屋は、玄関を開けるとそのまま部屋の中が全て見えてしまうような構造です。
ある夜寝ていると今まであまり聞いたことのない音が聞こえてきました。
シャコシャコシャコシャコ…。
ぼんやりとした意識でその音を聞いてたのですが、
明らかに外からの音ではなく、部屋の中、
それもシンクの辺りから聞こえているようです。
元々冷蔵庫の作動音や、その作動時の振動でその上にのせてあるアメニティーグッズがカタカタ鳴って目が覚める、という事は割とあったようで、
今回もそれかと考えたそうですが、それにしては今まで聞いたことが無い異質な音。
そう認識して一気に怖くなりました。
これは何の音だ?
幽霊?
見て大丈夫か?
シャコシャコという音はなおも続いています。
友人が怖くて動けないでいると、その音はシンクから段々と寝ている友人の方へ近づいて来ます。
シャコシャコシャコシャコ…
一瞬音が止まったかと思うと、今まで中空で聞こえていた音が寝ている友人と同じくらいの高さに下がってきたのが分かりました。
シャコシャコシャコ
どんどん近づいている!?
怖くて動けない友人の顔の方にどんどん音が近付いてきます。
シャコシャコシャコシャコ…
顔を布団に隠しておけば良かったと後悔していると、
いよいよ顔の目の前まで音が近づいてきました。
眼を開ければ目の前にいる。
絶対見てはいけないと考えていましたが、好奇心で少し眼を開けてしまいました。
そこには普通の人間の数倍は大きいおっさんの顔がありました。
そして、その口を普通の人間が使うサイズの歯ブラシで必死に磨いていました。
シャコシャコシャ…
思わず友人が眼を見開くと、その大きなおっさんの顔も驚いたような表情になってすっとにじむように消えてしまいました。
友人が飛び起きて明かりをつけても、もう静まり返っています。
この話をしてくれた友人は今もその部屋に住んでいます。
音が聞こえたのはその一回だけだと話していました。
なんであいつも驚いた表情をしたのか、こっちは怖い思いをしたのに、少し腹が立つと話していました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます