緋色の瞳
偽作者(雷帝と聖王女に祝福を)
緋色の瞳
昔々……あるところに少女と少年が居ました。
2人はそれはそれは世界で有名な騎士として名を馳せる若くして婚約した夫婦で、その名を聞けば誰もが少年と少女の名を出す程の有名人でした。
そして2人には誰にも手に出来ないあるとくべつな力がありました。
少年には誰にも負けない程に頭が良くなり、普段よりも力持ちになるというてんさいの力。
少女には誰にも手に出来ない神の剣を手に出来る選ばれし者の力。
幼い頃から2人はうまれつきの天才的なさいのうで多くの人々を驚かせましたが、それは時に2人を良しとしない意地悪な人々にとっての絶好の人質にもなりました。
それぞれ小さい頃から身近に居た意地悪な人々に笑われる2人でしたが、2人は小さい頃からずっと自分の出来る事をせっせと頑張り、有名な騎士となった2人を笑う意地悪な人々はいなくなりました。
仲も良く誰から見ても幸せで理想的な夫婦でしたが、一つだけ2人にはない、2人では手に出来ない物がありました。
それは自分の子供と遊ぶ事でした。
2人はそれは有名な騎士でしたが、子供と遊ぶ他の家族のようになる事は出来ませんでした。
少年は普通の夫婦と変わりない身体でしたが、少女はとくべつな力のせいで子供を産める身体ではなかったのです。
2人は他の子供のいる家族をいつも羨ましく見ていました。
そんなある時、王様から命令を受けた二人は、とある小さな山へと行きました。
その小さな山にはかつて一緒に戦った2人の友達である魔法使いが住んでおり、その友達も2人と同じ、未来を見る事の出来るとくべつな力を持っていました。
王様の命令した仕事を終えた2人は魔法使いに会うため、魔法使いの住む村へと行く事にしました。
村へ向かう二人でしたが、向かう途中で子供達に苛められている白兎を見つけました。
心優しい2人は子供達に来る途中で摘んだ木の実を渡す事を条件に、白兎を虐めないように頼み、兎を助けました。
助けた白兎は二人にお礼を言うかのような素振りを見せ、立ち去ろうとしましたがその時、不思議な事が起きたのです。
「あなたがた2人には遠い未来、貴方達の望む幸福が訪れるでしょう。そしてその子供達は遥か未来……」
そう言い残し、白兎は2人の目の前から去っていきました。
不思議な体験にびっくりしながらも2人は村へと向かいました。
村に到着した二人は魔法使いと再会しました。
魔法使いは王様の命令で仕事が多く、忙しくて2人の結婚式に行けなかったため、魔法使いは2人の結婚をお祝いしました。
2人は魔法使いに子供が出来ないという悩みと途中で出会った喋る白兎の事を話しました。
それをきいた魔法使いはいいました。
「その喋る白兎は、恐らく幸せを運ぶ「時を駆ける白兎」だろう……見た君達は実に運が良い、いつか白兎の言った通りに君達には幸福が訪れるであろう」
それから魔法使いの言った通りに2人の間に3人の赤子が生まれました。
3人の子供に恵まれ、大喜びだった2人でしたが、その翌日に双子の赤子が消えてしまい、一人の子供だけが残ってしまいました。
2人は双子の赤子を何年も探しましたが、双子が見つかる事はありませんでした。
一人だけ残った子供が消えてしまうのではないか?と怖くなってしまった2人は何処かでその怖さに怯えながらも青と赤の瞳を持つ赤子を育てました。
それから赤子はすくすくと育ち、それは美しくも綺麗で優しい娘となりました。
5歳の誕生日を迎えた少女は2人に誕生日をお祝いされましたが、娘にとってその日は忌まわしき日となってしまいます。
なぜなら、時を駆ける白兎の予言は対価があったのです。
対価により、2人は白兎に殺されてしまいます。
ですが、白兎はその場に居た2人の娘を殺す事は出来ませんでした。
なぜなら、白兎にも幼い娘がおり、その娘と面影が重なってしまい、娘を殺す事が出来なかったのです。
白兎は2人の娘を子供の兵隊として売り飛ばしました。
その日を境に娘は鬼となり子供の兵隊として様々な戦場を駆けました。
ある時には沢山の人形を壊し、ある時には同じ子供を殺したりもしました。
全ては白兎を殺すために様々な戦場を駆けた娘でしたが、ある戦場で一人の女剣士と出会います。
鬼となってしまった娘でしたが、女剣士の魔法によって鬼から元の姿へと戻ります。
その後、娘は女探偵に拾われ、女剣士の元で様々な事を学びました。
それは誰から見ても必要のない物ばかりでしたが、娘は何の文句も言わずに必死に学び、女剣士と共に居る事に温もりを感じていました。
女剣士も娘を自分の娘のように可愛がり、育てました。
ですが、それは長く続く事はありませんでした。
女剣士は戦争に出て死んでしまいます。
最初は悲しみ明け暮れてしまう娘でしたが、女剣士から学んだ事を思い出し、賢者として旅に出る事を決意し、娘は旅立っていきました。
やがて娘は母親のようにそれは美しい女性となりました。
騎士となった娘はそれは母のような有名な騎士となり、様々な仕事に忙しい毎日を送っていました。
そんなある日、娘はある少年と出会いました。
少年は娘と同じ騎士でしたが、まだ見習い騎士でした。
最初は只の見習い騎士としてしか見ていなかった娘でしたが、見習い騎士の少年と共に戦う中、少年に恋心を抱き始めます。
見習い騎士の少年に恋を抱く少女達は多くいましたが、少年が少女達の恋に気付く事はありませんでした。
ですが、それはある日を境に終わる事になってしまいます。
実は見習い騎士の少年はあの時を駆ける兎の仲間である黒い犬だったのです。
少年の正体を知った娘は鬼へと姿を変えて少年を殺そうとしましたが、少年はこう言いました。
「お前は鬼でも騎士だが、その前に一人の女性で、人だ」
と少年は娘の剣を受け入れたまま、娘を抱きしめます。
娘にとってこれはめったにないチャンスでしたが、もう鬼ではなくなってしまった事で殺す事が出来ませんでした。
そして、再び少女へと生まれ変わった娘は少年と沢山の友達と共に様々な冒険をしました。
ある時には生き別れの双子と再会し
ある時には共に戦場を駆け
とある時には恋という名の戦争をしたり
娘にとってその冒険は幸せに満ちていました。
そして少年を想う娘の気持ちは段々と強くなっていきました。
ですが、ある戦いで王様に刃向かった事で見習い騎士の少年は王様と戦う事になります。
娘も少年の方へ着き、共に戦いました。
その王様は災いの戦争で生まれた悪魔を述べる魔王であり、見習い騎士の少年とその仲間達は魔王を倒すために城へと向かいます。
見習い騎士の少年に魔王を倒させるため、悪魔達を倒す娘達でしたが、そんな中、時を駆ける白兎が目の前に姿を現します。
そう、白兎は悪魔だったのです。
白兎は昔、賢者でしたが、災いの箱を開けた事で白兎へと姿が変貌してしまったのです。
白兎は自らが娘の母と父を殺した事を言いますが、既に鬼ではなくなった娘は白兎を殺す事は出来ず、白兎に仲間と共に殺されてしまいます。
ですが、少年を想う強い気持ちが娘に奇跡の力を与えたのです。
緋色と蒼色の瞳を持つ娘の瞳は母親のように緋色の瞳へと変わり、神の聖剣と父のような誰にも負けない天才的な力を手にした娘は再び立ち上がり、時を駆ける白兎を長い戦いを得てかろうじて倒します。
直ぐに少年の元へ応戦しに行こうとした娘でしたが、見習い騎士の少年の手によってそれは止められました。
そう、最初から少年は一人で魔王を殺すつもりだったのです。
魔王を殺せば、空に浮かぶ城は崩壊してしまい、娘や仲間達も城から落ちてしまい、死んでしまいます。
だから少年は、最初から魔王を一人で倒そうとしていました。
城から離れる時、娘は少年に言います
「絶対に戻って来て」
と、少年は笑顔で娘とその仲間と約束し、魔王城に戻っていきました。
魔王に戦いを挑んだ見習い騎士の少年はかろうじて魔王に勝ちますが、城が崩れてしまいます。
城と共に空から落ちる少年は最後に一つ思いました。
約束、守れそうにないな
と、城は地へと完全に崩れた状態で落ちて行きました。それはやがて、流れ星となり、人々はあまりにもの、綺麗さに心を奪われます。
ですが、少年が娘達の前に姿を現す事はありませんでした。
ですが、娘は他の皆より、最も悲しんでいました。
娘は少年がどうなったのかに気付いていたのです。
誰も居ない少年との思い出の場所でたった独りで悲しみました。
魔王の城の残骸だと想われる美しい流れ星の夜空の下で娘は流れ星が消えるまで泣き続けました。
泣き続けながらも涙を拭いた娘は祈りました。
そう、緋色の瞳で夜空を見上げながら……
それから娘はその日から、少年の帰りを待ち続けました。
どんなに時が経っても、
少年が帰って来る姿を見るために
そして、
伝えられなかった少年への想いを伝えるため
「そして、娘は今でも少年の帰りを待っています、綺麗な緋色の瞳で夜空を見上げながらも……おしまい」
流星の流れる夜空の下、暗い部屋の中で終わりの言葉を切り出しながらも女性は手に持っていた本を閉じる。
女性の前には少女と少年が座っており、二人は女性に綺麗な青い瞳を輝かせながらも真面目な表情をして女性の語る"一つの物語"を聴いていた。
「でもおかあさんーー何でその人は目が緋色の瞳になっちゃったの?その人は見習いの人の事が大好きでその好きな想いが奇跡を起こしたんだよね?でも、何で緋色なの?」
「緋色の瞳なのは、その娘さんのお母さんのとくべつな力のせいなのーーその人のお母さんもねそのとくべつな力と伝説の神の剣のせいで目の色が赤くなっちゃってたんだよ……でも、それよりも恋しちゃったせいがおおきいかな?」
「ねぇ、お母さんーーその人は何で見習い騎士の事が好きになっちゃったの?時を駆ける兎さんの仲間だったんだよね?」
「フフッ、面白い事言うんだね~それはねーーその人にとって大切な人になってしまったからだよ、貴方が大人になって大切な人が出来たら分かると思うよ。」
目を輝かせながらも沢山の謎に思った事を訊いてくる幼い少女と少年の質問を表情一つ変えずに笑顔で女性は返答する。
そんな中、少女がある質問をする。
「ねぇ、お母さん……その人は今もその人を待っているの?」
少女の質問に対し、目を丸くしてしまい、笑みを含んだ表情を崩す女性であったが直ぐに表情を戻し、返答をせずに二人にある事を訊いた。
「そうだねーー貴方達はどう思う?今でも待ってると思う?」
女性は少女と少年に聞く。少女と少年は目を丸くさせ、頭を悩ませながらも考え始める。
その可愛いらしい姿に女性はクスッと笑みを浮かべながらも
「くふっ、私はねーー」
二人にだけ聞こえる程、小さな声である言葉を口にした。
緋色の瞳 偽作者(雷帝と聖王女に祝福を) @osilisu3124
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