第8話 ん~~いい朝ね
昨日のスケルトン襲撃から半日以上が経過したが何もなく迎える。安堵と奇妙さを抱く朝だった。
「くかッ――――――――」
「朝よ、将太。ほら、起きて」
先ほどから彼の肩を揺さぶっているのだが中々起きようとしない……しぶとい。
「…………チッ」
「!?」
舌打ち?! コイツ!!
気を取り直して、窓の戸を開ける。すると、新鮮な空気と陽が部屋いっぱいに広がった。
「ん~~いい朝ね。窓から穏やかな日差しが降り注いで、そこから聴こえる小鳥の囀り。そして、旅立ちにはピッタリの陽気。うふふ、素敵な一日になりそう。そう思わない? 将太」
「くかッ―――――――――――」
「……」
コイツ。
「将太。ほら、起きて。起きなさいよ! 起きてるのわかっているんだからね!!」
「………チッ。ぁんだよ、BBA」
「さぁ準備して、皆が待ってくれているわ。あと、さらっとBBA言うな」
『失礼する』
ドアのノックの後。聞きなれた声と共に鎧の軋む音が部屋に響く。
「将太、早く済ませろ。民を待t、シャルデュンシー様!」
「あら、レミファード」
「ここに、居られたとは」
「レミファード、ちょっと聞いてくれない? 彼、全く起きn」
「金髪、テメェ。何しに来やがった。喧嘩か?」
「違う、催促だ。陽が昇ったというのに、全く目覚めん貴様をな」
しかし、朝一番にシャルデュンシー様の美しいご尊顔を見れ、なお且つ起こして頂けるだと!! ……くっ、何て羨ましい。
「レミファード。皆、教会内に居るんだったわよね」
「はい。ご出立なされる前に、有難いお言葉を頂きたく存じます」
「うふふ、勿論。さぁ、将太行くわよ。皆が待っているわ」
「あ? んな事知らねーよ。ツーか、アタマ痛てぇ」
「……まったくもゥ、しょうがないわね。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「シャルデュンシー様、勇者様」「お出でくださった」「ありがたや、ありがたや」
その日、サダス教会内の礼拝椅子は全席が埋まった。神妙な顔つきの民は身廊を歩く女神を見つめる。壇上へ上がると一段下にいるペトスが女神に向けて会釈をする。
「皆様。ご傾聴下さい」
司教の言葉と共に、人々は固唾を呑む。私は全員の視線が向いたのを確認すると口を開けた。
「朝早くから集まっていただき有難う御座います。少しの時間ですが、有意義になればと思います。では、初めに。私がこの地に残した教えを
組んでいた手を解き、視線を扉の前に居る彼に移す。
「騎士レミファード、前へ」
「はッ!」
彼は、携えたレイピアを私に手渡し、跪く。私は、その受け取ったレイピアを彼の肩に軽く乗せる。
「騎士レミファード。汝を我が旅に同行することをここに認めます。人々を護る盾となり、騎士として正しく生きることを誓いなさい」
「はい、此処に誓います。エレス・グラン王国、騎士レミファード。我が身シャルデュンシー様が為に」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「それでは行って参ります」「うふふ。また帰ってきます」
「どうかご無事で!」「お気をつけて!」「お酒造って待ってます!」
「お気をつけて!」
レミファード様。勇者様。女神様。僕、御三方と肩を並べるような戦士になってみせます。強く、護れる戦士に!
新しい仲間、聖騎士・レミファードを得て、民に見送られながらアイーネから旅立った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「シャルデュンシー様。
「えぇ、でもその前にサイグ村に寄りたいの」
「サイグ村……あぁ、将太の装備を整えるためですね」
「あ?」
「えぇ、それもあるけど……少し気になったことがあるの。私たちに迫ってきたあの五体のスケルトン。どれもに炭が付着していたのよ」
「炭、炭鉱……まさか!!」
「えぇ」
「ツーかよ。BBAのその恰好なんだよ」
「貴様、今n」
「ローブよ。女神には色々あるのよ。あとBBA言うな」
サイグ村。西の森を抜けた先にある、炭鉱が主な収益な村。村人の多くが炭鉱か、その関係の職に就いている。また、ツルハシやピッケルなど採掘に必要な道具を作る職人がいる村としても知られている。腕利きなのは言うまでもない。
「――――――防具が欲しい? お安い御用だよ。ところでアンタ達、冒険者だよな? 条件さえ呑んでくれれば、タダで仕事してあげるよ。おぉ、請け負ってくれるかい。なら、よろしく頼むよ。ん、アタシの名前? そういや名乗ってなかったね。アタシの名前はジルマ。この名を覚えておいて損はないよ」
女鍛冶職人曰く、炭鉱に魔物がいつの間にか住み着き、作業ができないらしい。スコップやピッケルが売れなくなってしまえば、赤字になる。村で冒険者を雇うにもお金がかかる……とのこと。そして、スケルトンらしき魔物の異常発生。
「炭坑内に魔物が出るなんて初めてのことだからね。まぁ、ウチのモンも少なからず抗ってみたんだけどね、こういうのはアンタ達に任せるよ。十分に気を付けて――――――」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「――――――ったく、また骨かよ、オラァ!」
炭鉱内に入った我々を出迎えたのは、アイーネ国を襲撃の際によく似た武装したスケルトンだった。
「シャルデュンシー様」
「えぇ、間違いないわ。この先に強い魔力の持ち主を感じるわ」
「それに、このスケルトン。この先へ、我々を誘っているみたいです」
「……間違いないわね。十分に気を付けて二人とも」
「これで最後だな。オラァ!! ……あ? 誰だそこに居んのは!!」
『ふふふ。お待ちしておりましたわ。女神御一行』
「「「!!」」」
そこには大きな宝箱に腰かけている、女性の姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます