ヤンキーな勇者とBBAな女神
せみの ゆううつ
第1話 勇者よ。目覚めなさい
――――――ここは女神の間。人間界で俗に神殿と呼ばれている場所である。
「カルロア。ここに彼を座らせて」
「かしこまりました」
雲をドーム型にくり抜いたようなその空間には、椅子とテーブルだけで装飾品などは一切なく、壁や床すべてが真っ白に塗装されている。
「ありがとう。ここからは席を外してね」
「申し訳ございませんが、その要望にはお応え出来ません」
「何故かしら?」
「はい。シャルデュンシー様は光の女神として周知されており、その名に相応しいほどお美しく、神界の中で一、二を争うほど。その美貌は老若男女問わず魅了してしまいます。誕生したばかりの天使ならば自ら付き従うと懇願し、神ならば求婚してしまうほど」
「う、うん」
「そして、シャルデュンシー様のおっぱ……ゲフンゲフン……かの伝説の神の実と見間違うかのような豊満さと大胆さを併せ持つ胸部と臀部は、皺皺のキン〇マを持つ旧神でさえ勃〇してしまうほど。そこに座っている彼も同じようなケダモノを持っている獣です。シャルデュンシー様の貞そ……いえ、いっそのことケダモノを切り落としてからでも」
「カルロア。これは命令よ、下がりなさい」
「しかし!」
「貴方が心配してしまうのも無理ないわ。けど、彼と一対一で話し合いたいの。何より彼はこれから勇者になる男よ。人道に反することなんてしないわ……………きっと」ボソ
「かしこまりました。シャルデュンシー様の御心のままに」
「何かあったら直ぐに呼ぶわ」
「光より速く駆け付けます」
「うふふ。お留守番よろしくね」
「はい。失礼します」
彼女が出て行ったことを確認すると、彼と向かい合うようにして椅子に背中を預ける。目の前の男の姿はパーカーに髑髏がプリントされた、全身黒ずくめで何かを彷彿させる姿をしている……とても個性的。
「彼女が心配しちゃうのも無理ないわね」
彼は地球という惑星の日本という地域で、ヤンキーまたはDQNもしくは不良と呼ばれている種族。縄張り意識が強く集団で徒党を組み、毎日のように喧嘩をする。一言で言うならば、野蛮な奴ね。そして〈勇者=好青年〉という概念を崩壊しかねないほどの危険人物である。
「んんっ。勇者よ目覚め……よし!」
声の調子もバッチリ。第一印象が大切だからね。
勇者候補として篩に掛けたら一早く落ちそうなのに、まさかあの勇者の剣に選ばれるなんて……不思議なこともあるのね。
「勇者よ。目覚めなさい」
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