第5話 森の罠

 聖騎士が新しい騎士団長として森に着任してから、暫くが過ぎた。

 それは、身構えまくっていた私にとっては拍子抜けしてしまうほどに穏やかな日々だった。

 

 なるべく近づかないように。

 「魔女」として求められるのであれば必要な時に必要なだけ。

 プライベートには踏み込まないし、踏み込ませない。

 

 そんな私の決意は彼の方にも伝わっていたのか、彼もまた節度を守り、必要以上の接触を持とうという様子はなかった。

 顔を合わせるのは夕刻に一度行われる報告の時のみだ。

 そんな時でも彼は無駄なことは口にせず、必要なことだけを語った。

 おかげで私の日々はひたすらに穏やかだった。

 これまで通り薬草を育て、薬を煎じ、森を見回り、過ごす。

 

 そんなある日のことだ。

 まだ日の高い時間帯だというのに、コンコン、と扉を叩く音がした。

 来客の予定はない。

 ということは、近隣の村人が誰か怪我か病気でもしたのかと慌てて玄関へと向かえば、そこに立っていたのはこれまで報告のためにしかここには訪れたことのない聖騎士、エリオット・スターレットだった。


「っ、」


 思いがけない来客に思わず息を呑む。

 

「―――」


 見上げた先で、何故か彼もまた静かに驚いたように瞠目している。


「……?」


 どうしたんだこの人。

 魔女の小屋を訪ねれば魔女が出てくるのは当然だろうに。

 内心首を傾げつつ、私は彼より先になんでもない素振りを取り繕って口を開く。


「何かありましたか」

「――ああ、いえ。少し気がかりなことがありまして、魔女殿にも確認して頂きたく思ったのです」

「気がかりな、こと?」

「ええ」


 病人でも怪我人でもなかったのは良いことだが、今更彼がなんでもない用事をでっちあげて私を引っ張り出そうとしている、という風にも思えない。

 何か、本当に私の確認を必要としているようなことがあるのだろう。


「すぐに馬を回します。案内していただけますか?」

「もちろんです」


 私は戸締りを済ませるとすぐに外に出て、馬の支度を整えた。

 
























 彼に案内されてたどり着いたのは、比較的森が深くなる辺りだった。

 層で言うのならば、中層というところだろうか。

 ここまで来ると、普段であれば人の姿はほとんどない。

 逆に、魔物と呼ばれる部類の獣が出没し始めるのがこの辺りからだ。

 その辺りを、騎士たちが何かを探すように探索を行っている。

 馬でやってきた私たちに気付いたように、近くにいた騎士の一人が顔を上げた。


「あー、若魔女さん。わざわざ来てもらって悪いねえ」

「いえ、何があったんですか?」


 ひらりと馬から降りて、近くの気に手綱を繋ぐ。

 私の問いに、騎士は渋い顔をして見せた。


「それがねえ、団長さんが見つけたんだけど……罠が仕掛けられてたんだよ」

「―――」


 す、と表情が強張るのが自分でもわかった。

 

「何を獲ろうとしたものかわかりますか?」

「どう、だろうなコレは」


 騎士が眉を寄せながら首をひねる。


「若魔女さんも見て貰ってもいいかい?」

「もちろんです」


 招く所作に歩みより、私も彼らが苦い顔で取り囲む繁みを覗きこんだ。


「―――なるほど」


 罠は、至って普通のシンプルなものだった。

 元は巧妙に隠されていたのだろうが、今はその表面を覆っていた土塊や枯れ葉が払われ、ぎらりとした鈍い光を鋼が弾いている。

 獣を獲るのによく使われる罠だ。

 鋭い歯を持った口が開いた形で地面に巧妙に隠されており、その口の中にある感知板を獲物が踏み抜くと、勢いよく口が閉じて獲物の足を捕らえるようになっている。

 歯によるダメージもさることながら、大型の罠になるとその閉じる力だけで獲物の足の骨を砕くことすらある。

 主に中型から大型にかけての獣を獲るのに使われるものなのだが……だからこそ、判断が難しい。


「この辺りに似たような罠はありましたか?」

「同じものが森の狩猟区のあたりまで一定の距離で仕掛けられてたよ。どうする? 外しておくかい?」

「――……」


 考える。

 この罠はどういった意図で仕掛けられたものだろう。

 獣を狙った猟師が狩猟区から外れたことに気付かず罠を仕掛けてしまったのか。

 それとも、他に何か意図があるのか。

 

「とりあえず、この罠は外してもらえますか? それと、近隣の村で狩りをする人たちに注意を促してください。狩猟区から外れての狩りは危険だと」

「わかりました。団長もそれで良いですか?」


 ……あ。

 しまった。

 

 騎士の声に、ハっとする。

 つい、出しゃばってしまった。

 本来なら、森の騎士たちへと指示を出すのは騎士団長である彼の仕事だ。

 彼が指示を出すのを待ち、それに抜けがあるのならその段階で補うようにするべきだった。

 彼は、気を悪くしただろうか。

 そろりと視線をやると、彼は特に気にした様子もなく頷くところだった。

 

「魔女殿の指示通りに」

「わかりました。それじゃあ、罠の解除はフランツに任せて、残りはその辺の村に知らせてくることにします」

「お願いします」


 それぞれの仕事に向かう彼らを見送って、私は小さく息を吐く。

 それから、彼へと向き直った。

 私は、彼が苦手だ。

 だけれども、それは彼に対して失礼なことをしても良いということではない。


 ――…すでにだいぶツンケンとした態度を取ってしまっている私の言えた言葉ではないような気もするのだが。


「出過ぎたことをしました」

「? 何がです?」

「貴方を飛び越えて、騎士たちを動かしてしまいました」

「ああ、そのことですか」


 彼は気にしないでください、と緩く首を振った。

 その仕草も、言葉も、本心であるように見える。


「私はまだ森に来たばかりですから。新参者です。このような時の対処は、未だあなた方から学ぶことの方が多い」

「そう言っていただけてほっとしました」


 そうして馬の手綱を木の枝から外そうとして、ふと気づいた。


「もしかして――…それで、貴方が私を迎えに?」

「…………はい」


 少しの間を挟んだ彼の肯定に、口元に小さく笑いが乗る。

 振り返った先の彼は、気恥ずかしそうに目を伏せている。

 照れを含んだ青い空の色をした双眸を稲穂のような金の睫毛が伏せがちに覆う様子があまりにも絵になっていて、一瞬呆けたように見惚れてしまった。


「私がこの場に残っても、彼らのようには動けませんから」

「―――……」

「魔女殿?」

「…………いえ、なんでも」


 くそう。

 この男、本当顔が良い。

 その上優秀で―――…よいひと、だ。


 本来なら、彼は騎士団団長だ。

 彼がこの場に残り、誰か部下である騎士に私を呼びに行かせれば良い。

 けれど彼はそうはしなかった。

 まだ森に詳しくない新参者の自分が残るよりも、こういった事態に慣れた部下を残した方が良いと判断し、自ら使いっ走りのような伝令役を買った。

 彼が今恥じ入るように目を伏せているのも、下っ端めいた伝令役をしたからではない。この状況でそれぐらいしか出来ることがないという己の至らなさ故だ。


 もしこれが見せかけのことで、彼がすべて演技でやって見せているのだとしても、それはそれで彼は大した役者で、そんな彼になら私が騙されたって仕方ないな、というような謎の開き直りが胸中に沸いてきてしまう。

 

 それに、彼の判断に助けられたのは事実だ。

 

「……良い、判断だったと思います」

「そう、ですか」

「あの罠に獲物がかかってしまっていたなら、森の王を怒らせてしまっていたかもしれませんから」

「森の王?」

「ああ、あの伝承にある黒い魔獣のことを、この辺りではそう呼ぶんですよ。魔獣の王、森の王、と」


 かつて多くの獣を率いてレデシリアに攻め込んだとされる黒い魔獣。

 彼のことをこの辺りの人間は畏怖をこめて『森の王』と呼ぶのだ。

 とは言うものの、実際彼が今でもこの森にいるのかどうかはわからない。

 魔獣の寿命が人よりもはるかに長いことは知られているが、それでもレデシリアの崩壊は随分と昔、何百年も前の話だ。

 だから『森の王』というのはもはや私たちにとっての『森』の象徴、という方が正確なのかもしれない。


「少し、質問をしても良いでしょうか」

「ええ、どうぞ」

「『森』は、不可侵というわけではないのですね?」


 彼の問いに、私はああ、と小さく声を上げて頷いた。

 建前上、『森』は不可侵だ。

 “ひと”は『森』に立ち入ってはいけないとされている。

 だが、『森』の近くに“ひと”が暮らす以上それは無理だ。

 “ひと”が生きるためには資源がいる。

 食料として肉を求めることもあれば、厳しい冬を越えるためには薪も必要だ。


「実際のところ、『森』は“ひと”にも開かれているんです」

「開かれて、いる」

「はい」


 彼は驚いたように静かに目を瞠っている。

 王都で暮らす彼らにはピンと来ない話だろう。

 不可侵の条約によってどこの領土にも属さず、守られてきたはずの『森』が“ひと”にも開かれている、なんて。


「『森』に暮らす生き物が自然の恵みを受けるように、“ひと”が『森』に敬意を持ち、奪いすぎない範囲であれば、“ひと”にもまた『森』の恵みを受けることが許されているんです」


 春には森の新芽を摘み、夏には獣を狩り、秋には木の実を拾い、冬には薪を刈る。

 そんな日々の営みが、『森』の近隣で暮らすものには許されている。

 ただ、それはこれまで積み重ねられてきた経験則からわかっている許容範囲だ。

 それらの経験則を『森』の近隣で暮らす人々に広く知らしめることも、『魔女』や『騎士』の役割の一つなのだ。

 

 『森』で狩りを行っても良い時期や、場所。

 そういったものを『魔女』や『騎士』は正しく周知していかなければならない。

 違反するものがいれば警告を行うし、必要があれば罰を与えることもある。

 『森の王』に代わって“ひと”と『森』の距離を正しく保つように実際に働きかけるのが私たち、『魔女』と『騎士』だ。


「もしも、正しい距離が損なわれた場合はどうなるのでしょう」

「たくさんの血が流れることになるでしょうね」


 『森の王』は降りかかった火の粉を払うだろう。

 “ひと”から『森』を守るために牙を剥くはずだ。

 かつて、レデシリアを滅ぼしたその時のように。


「魔女殿、あなたは森の王を――……」


 と。

 彼が何かを言いかけたところで、おーい、と別の声が遠くから重なった。

 顔をあげて声の主を探せば、いつもの軽装姿の狩人が少し離れたところからひらひらと手を振っているのが目に入る。

 こちらも軽く手を挙げて応じれば、彼はがさごそと繁みをかき分けつつこちらへとやってきた。


「お嬢珍しいね、こんな深くまでくるなんて」

「うん、ちょっと問題があって」

「問題?」


 彼は訝し気に眉根を寄せるものの、すぐに気を取り直すと私の傍らにいる騎士に向けて視線を流して懐こく笑った。


「お嬢、こちらは?」

「ああ、この方は――…」


 紹介しようと騎士へと視線を持ち上げて、思わず言葉が途中で止まる。


「…………」


 騎士は、珍しく動揺しているようだった。

 青ざめている、というか。

 顔が土気色、というか。

 顔色が酷くよろしくない。

 もしかしたら突然森の中で呼びかけられたりなどしたものだから、驚かせてしまったのかもしれない。

 実際、片手は腰の剣に伸びている。

 

「……、」


 大丈夫ですよ、だとか。

 これは知人なので害はありません、だとか。

 そういった類のことを伝えようと名前を呼びかけて、再び言葉に詰まる。

 これまで、私は彼のことを名前で呼んだことがない。

 『貴方』呼びで誤魔化してきたツケが回ってきたような心地だ。

 

 一応名前は、ちゃんと覚えている。

 エリオット・スターレット。

 王都でも勇名をはせる聖騎士様だ。

 忘れるはずがない。

 穴が空くほど契約書を確かめた。

 問題はどう呼ぶか、だ。

 

 スターレット卿。

 スターレット様。

 

 名前プラス敬称というのも少し頭を過らないでもないが、いきなりそれは距離を詰め過ぎた感がある。

 だからといって騎士様、なんて呼びかけるのも名前を憶えていないかのようで礼を失しているような気がして今更躊躇ってしまう。


 ……が。


 よくよく考えれば彼だって私のことを「魔女殿」と呼んでいるのだ。

 ならば私も「騎士様」で良いだろう。

 うん。


「騎士様?」

「エリオットとお呼びください」


 打てば響くかのような勢いで訂正された。

 うおおおおお。


「……エリオット、様」

「はい」


 渋々の呼びかけに、未だそれほど良いとは言えない顔色で、それでも嬉しそうに応じる。

 出会った当初からだけれども、ますますこの人が何を考えているのかがわからない。

 

「ええとその。すみません、驚かせてしまったでしょうか。こちらは私の知己、この森で狩人をしている者です」

「ああ、いえ、失礼を致しました」


 彼は深い深呼吸を一つ挟むと、狩人へと向き直った。

 剣の柄に伸びていた腕は、今はもう平常通り体の脇に下ろされている。


「驚かせちゃったならごめんね。お嬢がいつもお世話になってます」

「この度、森の騎士を王より拝命しましたエリオット・スターレットと申します」

「ご丁寧にどうも。お嬢からはいつもお話は楽しく聞かせt」

「余計なこと言わないの!」


 ずびし、と鋭いひじ打ちを狩人の横っ腹にいれる。

 痛い、なんて小さな悲鳴が上がるものの、笑い交じりなあたり本当は痛くもなんともないのがわかる。


「で、お嬢、問題って何があったの?」

「この辺りで罠が見つかったの」

「あー……」


 この付近がすでに狩りが許された区域を離れていることに気付いたのか、狩人の表情が曇る。


「わざとなのか?」

「まだはっきりは。とりあえず罠は回収して、持ち主を探すつもりよ」

「そっか。大変だろうけど頑張れよ」

「ありがとう。あなたも何かいつもと違うものを見つけたり、何か気付くようなことがあったら教えてくれると助かるわ」

「了解」


 獣の痕跡を逃さず、追いつめて狩るのが狩人だ。

 腕の良い彼ならば、私たちが見逃した手がかりにも気付くかもしれない。

 そんなことを考えているところでふと彼が口を開いた。


「そういえばお嬢、今晩の夕飯はウサギのシチューでいい?」

「作っていってくれるの?」

「まぁね。頑張ってるお嬢にご褒美」

「やった」


 思わず声がはしゃぐ。

 自分でも料理はするが、彼が作ってくれるシチューは特別だ。

 レシピを習っているのに、なかなかその通りの味わいにならない。

 子どもの頃から食べているからか、彼の作ってくれるシチューは私にとっては大好物のご馳走だ。


「ありがとう。今日は泊まっていくの?」

「や、俺もちょっと森の中の様子をチェックしておきたいから夕食の後はまた森に戻るよ。んじゃ、また後でな」

「うん。また後で」


 軽やかに別れの挨拶を交わして、狩人は身軽に身を翻しかけて――ふと、何かに気付いたかのようにひょいと片手を持ち上げる。

 褐色の指先が、私の顔をの脇に流れていた銀の髪を一房掬った。


「珍しいね」

「何が?」

「お嬢が、フード被ってない」

「!?」


 慌ててぱたぱたと頭に手で触れる。

 本当だ。

 気付いてなかった。

 いつもならローブの布地に触れるはずの手が、さらりと背に流れる髪に直接触れる。

 

「気付いてなかったの?」

「気付いてなかったわよ!!」


 噛みつくように言い返して、それから騎士へと向き直る。

 彼はどんな顔をしたら良いのか、といった風な小さく眉尻を下げた困り顔で、す、とさりげなく視線を私からそらした。


「~~~~ッ」


 あの時、私が玄関に出た時に何かおかしな反応はこのせいだったのか。

 恥ずかしい。

 かあ、と頬が熱を持つのがわかる。

 

 忌み子であるとはいえ、私は普段自分の外見をそこまで恥じているわけではない。

 どんな色を纏っていたとしても、私は私だ。

 

 けれど。

 だけれども。

 あると思っていたものがなかったことが。

 というか、あると思っていたものがないことにも気付いていなかった、ということが。

 どうにもこうにも恥ずかしい。

 騎士だって、私が気付いていないことには気付いていたはずなのだ。

 きっと彼は私がわざとローブを着ていないなら触れるなら無粋だし、私にローブを着ていないことを指摘しても恥ずかしい思いをさせるだけに違いないのだから、と黙ってくれていたに違いない。

 その生ぬるい優しさが余計に追い打ちをかけてくる。

 

「ようやっと団長さんと顔を隠さずにお話出来るようになったのかと思ったのに」

「うるさいわよ、さっさと仕事に戻りなさいよ!」


 ぐいぐいと狩人の腰裏の辺りに両の手をあてて押しやる。

 それに対する返事はあっはっはーと楽し気な笑い声だ。

 男はのんきにひらひらと手を振り、「団長さん、お嬢をよろしくね」なんて挨拶まで残す余裕っぷりで去って行った。

 後に残されたのは、いたたまれない顔をした私と騎士である。


「…………」

「…………」


 とりあえず、深呼吸だ。

 これまで何とか取り繕ってきた『魔女』のイメージが一息に音をたてて崩れていったような気がしないでもないが。


「ええとその」


 みっともないところを見せてしまい、と謝ろうとした私の声に被せるようにして彼が口を開いた。


「彼とは、随分と親しいのですね」

「はい?」


 またこの人は何を言い出したのか。


「そう、……ですね。養母の代から親しくしているので」

「では、彼が――あの噂に聞く」


 ……。

 …………。

 あの、とは何のことだ。どれだ。

 噂に聞く、とは。

 浅く眉間に皺を寄せつつ、彼の意図を問おうとして、―――思い出した。

 そうだ。

 彼は、王都から来た。

 王都における私の噂なんて、一つしかない。

 

「ッ……」


 ぶわっと変な汗が出そうになった。

 唇がへの字に歪みそうになる。

 それを、堪える。

 ぎゅ、と奥歯を噛みしめる。

 

「私には、顔を見ることすらなかなか許して下さらなかったのに」

 

 騎士が、言う。

 やっぱり。

 ああ、やっぱり。

 この男も、騎士なのだ。

 あの日王都で出会ったらと同じような。

 

「…………」

 

 なんでもないような、顔をしろ。

 男慣れした悪女のように笑え。

 私はなるべく傲慢に見えるような角度で顎を持ち上げ、低い位置から長躯の騎士を睥睨し、嘲笑うように口角を釣り上げた。

 

 ローブを着てなくて、良かったと思う。

 私の稀有な外見は、私の見得をそれらしく取り繕ってくれる。

 白の髪に赤い眼を持つ妖女として私を演出してくれる。


「ええ、そう。私、役に立つ男が好きなの」


 そう、言い切った。

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